↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/122

第1話 袁紹戦1

(視点はフリチンです)


 紅葉にでも見に行きたくなる秋晴れの早朝、漢軍と袁紹軍は対峙しておった。普段ならピーチクパーチクうるさいはずの鳥たちは、人間の多さとそのかもしだす猛々しさに恐れをなしたようで、声も姿も無い。ただ、風のみが地を舐め、人の頬をなでる。


 敵軍の前に長身巨躯の二人が騎馬にて並び立つ。その名乗りによれば顔良(がんりょう)と文醜(ぶんしゅう)ということだった。更に言うは、一騎打ちを所望とのこと。そして、呼ばれたのは何と「フリチン」であった。


 袁紹軍にまで知られているのかとの驚き、そして俺はこの字(あざな)で知られて行くのかという何とも言えぬわびしさと残念さと共に――恐らく孫堅が伝えたのだろうと想い至る。


 俺は進み出る。しかし、何やら、相手の反応がおかしい。お前は用無しと、しかも言葉に出すのも惜しんで、向こうへ行けと手でやられる始末、いわゆるシッシッという奴である。


 もしかして、この半乳半ケツが原因か。孫堅め。しっかり、この姿を見たはずだが、やはり、珍奇姿の女に一軍をもってして敗れたと告げるのは、そのプライドが許さなかったとみえる。


「お前じゃない。フリチンを呼べ」


 と顔良。こいつはが身にまとうは、鍍金(ときん)した鎧兜。腕や足を覆う布の部分には金糸・銀糸が刺繍してある。随分と派手好きのようだ。そして、手には大太刀(おおだち)。


「俺が正真正銘のフリチンだ」


(くそっ。ペロの野郎。何で俺が自分で言わなきゃならねえんだ)


「我はとりあえず、こいつでいいや。倒せば、本物が出て来るんだろう。それで、顔良の相手は誰がするんだ?」


 と文醜。こいつはこいつで、銀色の鎧兜に、やはり刺繍がきらびやかな戦袍をまとう。そして獲物は長槍。


 なるほどね。共にその長いリーチを更に活かすべくの長大な武器。俺はその間合いに入ろうとする度に、死線を越える必要があると。


「まさか、一人で我ら二人を相手にする気ではあるまいな」と顔良。


 猩猩様しかいない。ただ、俺が呼ぶ前に「我が行こう」との声が聞こえ、彼女が進み出てくれた。


 鎧兜に加え、その開けた胸元にはタスキを巻き、両腰には双剣、更に右手にあの大斧をたずさえておった。ますます格好良くなってるじゃねえかよ。そう想いつつ、彼女のそばに寄り、


「これがタッグマッチだ」と告げる。


「そういうことか」


 なんか、伝わったらしい。それから互いに離れ、猩猩様は顔良と、俺は文醜と正対する。


「そなたらは騎馬で戦わぬのか?」と顔良。


「得手ではないゆえ」と俺。


「なら、我らも降りるとしよう。馬に乗るゆえ勝ったなどと、後にそしられてはかなわぬからな」


 そうして、両者は下馬した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。