第3話 戦@フリチン3
歴史時代の朝は早い。払暁と共にである。戦もまた、である。夜は目が効かないからである。俺は見えるんだけどね。
一人で孫堅軍の前に身をさらす。定番のあの珍奇姿である。そうして、右往左往してみせる。それから、
「我は倭国に生を受け、縁あって、ここにおる。皇将軍の旗下で最速を誇るは、誰あろう、我である。捕えたければ、追って来い。よいか。孫文台(孫堅)の軍の諸君。これが軍略である。よくよくご覧じろ」
それから、俺は半分はみ出たプリプリの尻を敵に向けると、自らの手でお尻ペンペンしてみせる。
時を置かず、騎馬の蹄の音がどよもす。まさに大地を奮わすほどであった。
「来た。来た。来ちゃあ―」
俺は叫びつつ、逃走ルートに入る。すぐにトップスピードに。しばし、敵がちゃんと付いて来ておるのか確認しつつ、距離が開きすぎないようにスピードをあえて落とすほどの余裕振りであったのだが。
あるところ、そこは開けた野原であった。それゆえ、却って油断したか、俺は何かに蹴つまずいて、転んでしまう。急ぎ立ち上がろうとする俺だが、不意に矢が飛んで来るのが分かった。目で見たのではない。あっ。俺、この能力もあった。呂布のとき、確かに使った。そのまま、立ち上がると、矢に貫かれることになるので、俺は横に転がり、それを避ける。
やっぱ、俺、この軍略に向いてるんじゃねえの。ねえ。じいさん。これのために、俺をこのゲーム・キャラにしたんだろう。じいさんとは、最初のとき以来、忘れておった老子のこと。
それから先は、気を引き締めたこともあって、転ぶことはなかった。倒木を飛び越え、張り出す木の根の間を軽快に走り抜け、身一つしか通れぬ木の間を疾駆する。スキル『全天』を用いて、しばしば飛来する矢を見るまでもなく避けながら。
そうして、最終目的地、窪地へと敵を誘い込むを得た。この窪地を囲む高所に皇将軍が軍を待ち伏せておる手はずとなっておった。
「軍勢を率いるは孫文台殿とお見受けする。兵の命を大切にするが良き将というもの。降参せよ。さすれば、兵の命までは奪わぬ」
大音声で将軍の声が響き渡る。
やったぜ。俺。ペロにも猩猩様にも見せたかったぜ。
そうして、こちらに駆けて来る者が一人。遠目だが、誰だかは何となく想像がつく。勢いのあまり、転げ落ちそうである。そんなに急ぐなよ、という意味で手を上げて制する。すると、相手はかえって速度を上げる始末。仕方ないと俺は駆け出す。近づいて、はっきり分かる。やはり清流であり、その顔に浮かぶは満面の笑みであった。




