第2話 戦@フリチン2
敵の出現を待つ俺。至るとしたら、河北の方――つまり東側であろう。そちらを見晴らす櫓に定期的に立ち寄り、ときに長く留まる。そうして、現れるのが誰か想像をたくましくする。当然、袁紹の配下の武将となろう。文醜か? 顔良か? 武将で有名なのはこの二人だが。あるいは袁紹本人ということもあるのか?
果たして現れた敵の掲げる牙旗にひるがえるは『孫』の字。おお。想わず、三国志好きの心が反応してしまう。孫堅か。確かに、あの者は袁紹を盟主とする義軍の先鋒として、董卓を討たんとしたはず。そう。あの伝国の璽を発見したことで有名な洛陽への遠征である。
こちらの世界線では、既に董卓はおらぬ。そして、俺たちの陣営に献帝がおるゆえ、史実とは異なり、こちらへ攻め来たったということであろう。
俺の心は期待に胸がふくらんでおった。孫堅との勝負にである。でも、何で勝負するか? 呂布の場合、迷うことはなかった。何せ、三国志上、最強の一人。ならば、ということで、一騎打ち。しかも呂布がこちらに合わせてくれて、格闘戦となった。もう、想い残すことはねえというほどの経験をさせてもらった。あとは全部おまけとさえ言って良い。
それで孫堅である。おまけとしては大きすぎらあ。
それで、どうする? 俺。何で勝負する? 俺。
孫堅は武芸に秀でてはいようが、呂布ほど圧倒的ではない。なので、一騎打ちはなし。
とすれば、軍勢を率いる将として相まみえるか。これは、俺ができないので、NGだ。
一人で孫堅の部隊を相手にするか。確かに相手は大軍ではない。その宿営を遠望する限り、恐らく数百人。多くても千人ほど。まさに、俺強え―にふさわしい策であるが、ゲーム・キャラに転生するを得たとはいえ、そこまでの自信はない。おまけに俺ってば、チート不完全だし。
俺にあるのは『俺、速えー』のみ。それを活かすとなると、逃げるか? ただ、当然、逃げてどうするとなる。逃げるだけではダメだ。
ならばと、俺は歴史上の色んな戦を想い出してみる。そうすると、参考になりそうなものがあった。逃げるとみせかけて、敵を誘い出す。そうして、叩く。もちろん、俺一人なら厳しいが、そこは皇甫嵩将軍に軍を率いて待ち伏せしてもらえば良い。これで、行けるんじゃあねえか。
俺は将軍にこの策を提案し、了承を得た。
逃げるルートについては、清流と共に十分に練った。
最終的なルート確認のために、実際に走ってみる。できるだけ、馬の走行の邪魔になるもの。倒木、木の根本が突き出ているところ、あるいは木が密生しているところ、そうしたルートとなるべく、清流と練ったルートに更に修正を加える。
次は如何なる文句にて挑発してやろうか、それを考える。半乳半ケツの珍奇姿で、敵軍の前をうろうろしてみせれば、十分であろうとも想われるが。こだわるべきところでもあろう。それこそが軍略というもの。
俺って、もしかして、この軍略にはまってねえか。俺って、このために転生したのか。自らのやらかしを忘れたいために、そんな妄想にふけるフリチンであった。




