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第1話 出会い@フリチン1

(視点はフリチンです)


 俺たちは山西の中心たる大同を拠点として、防備の固めを図った。城壁や土塁の補修や新造をなしたのである。実際の工事は皇甫嵩こうほすう指揮下の漢軍がなし、俺はといえば、大同の周辺の地をうろついておった。


 ここ大同は戦国七雄の一たる趙が邯鄲かんたんの前に都としたところであり、時代が下っては、四世紀の末に北魏が都とした。地理でいえば、ちょうど遊牧勢力と農耕勢力の間に位置し、北宋がその奪還を宿願とした燕雲十六州とは、まさにこの地である。大同が雲(州)、(現在の)北京が燕である。ちなみに、この燕雲十六州は、後晋の石敬瑭せきけいとうがキタイ(契丹、遼)に割譲した地であり、宋が領有したことは一度もない。ところで、キタイは燕には五京の一つの南京を置いた。遊牧勢たるキタイにとっては、その軍勢の展開上、平べったい燕の地が好ましく、山がちの大同は好ましくないのである。


 俺にとって、先の董卓攻めからの退却時、どこのどことも分からぬところを逃げるというのは、とても不安な経験であった。王允おういん仕孫瑞しそんずいに導かれたゆえであったが、別の言い方をすれば、俺たちはまともに退路について考えていなかった。攻め入るにおいては、出来る範囲であるとはいえ、周到な準備をなした。今回は、退路についても、入念な調査をした上で決定したいというのが、俺の念頭にあった。


 また猩猩しょうじょう様の見聞を広めたいとの意向も、俺の刺激となった。ならば、俺も負けていられぬ、という訳である。


 秋が深まり行く中、くれないだいだいの落ち葉が重なる地を歩きつつ、山の緩急――谷の流れ――そうしたことを頭に入れた。夕刻が迫れば、己の小天幕に戻り、地図に落とし込んでいった。そこだけ床に敷いているフェルトをどかし、地面に直接描く地図である。


 冬ごもりに備えて餌を探しておるのであろう、動物たちを見かけることも少なくなかった。兎や鹿は可愛らしくほほえましき気分となったが、熊に出くわしたならば、びっくり仰天、そんなときは俺の足の速さが役に立った。


 また、大同や周辺の町村からあぶれたのであろうか、人を見かけることもあった。ただ、多くの場合、それで終わりであった。こちらも近付くことはないし、あちらからも近づいて来ることはなかった。


 ただ、例外もあった。子供たちである。この者たちも近付いて来ることはなかったが、あいだを空けて追って来た。しかし、それもある範囲に限ってのことであった。また、追って来る者は同一人物ではないようだった。子供は子供なのだが、背丈や体つきが異なっている。


 どうやら、俺が彼らの縄張りを侵しているらしい。ただ、相手が子供であり、また、距離も保っておれば、必要以上に気にかける必要はあるまい。そう想っておった。


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