終話 転6
俺とペロが歩いて行くと、たいして進むことなく、二人が戻って来た。どうやら早くに終わったらしい。
こちらに気付いたらしい呂布が手に持っておった何かを投げ捨てる。恐らく董卓の首であろう。ペロに見せたくなかったのだろう。
ただ、ペロはそれを目ざとく見つけ、王をおぶさったまま追いかけんとする。俺はあわててしがみついてそれを止める。
「呂布と猩猩様が仇を討ってくれたんだ。あれはもう放っておいて良い。王を生きて逃がすために全力を尽くそう」
ペロはしばし体を震わしておったが、やがて落ち着いてくれたようだった。
血まみれで、濃厚な血の臭いをさせておった呂布。少年に気付き「陳留王なのか?」と問うて来る。ついで、「どうして?」と。
俺がいきさつを説明する。
「助けに行かなくて良いのか?」
「動かしたら、命が持たぬ。それに、あの出血量。恐らくは・・・・・・」
俺は口ごもらざるを得なかった。よく、あのとき、逃げましょうなどと言えたものだと想う。俺も動揺しておったのだろう。輸血ができ、救急医療が整っておる転生前の世界ならいざ知らず、この三国志の時代の医療技術では何とかできるとは想えなかった。
「王美人に託されたんだ。陳留王を無事連れ出したい」そこまで言ったあと、俺はふと気になり、問うてみる。「猩猩様やペロだったら、何とかできる?」
ゲームのチート・キャラゆえ回復魔法など使えぬかと想ったのだが、二人の答えは救いとなるものではなかった。
建物の出口付近にまで至ると、広場に敵が集まっておるのが見えた。どうやら、敵は逃がすものかと待ち構えておったらしい。盛大なかがり火を多数、焚いておった。闇夜で闘えるというこちらの利がつぶされておる。といって、今更、どうこうできる訳でもない。突入時とほぼ同じ隊形で脱出を図る。ただ、ペロのみ王をおぶるのが異なる。俺は替わってやるかとも想ったが、攻撃力のある俺が敵のつぶし役に回った方が良いとの結論に至る。
ペロが呼び出したコウモリが乱舞して助勢してくれる。ただ、敵も慣れたらしく、それを過度に恐がることがなくなり、またかがり火で照らし出される俺たち相手なら、見失うことはないらしく、執拗に攻撃を仕掛けて来る。
突破できるか否かは五分五分、あるいはそれより低いかもしれぬ。俺は数多の者を殴り蹴り倒しておったが、尽きせぬ如くに敵は出て来る。応援を呼ばれたか?
そうして、やがて俺たちは進む勢いを失い、前面に出て来る敵を倒すのが精一杯となる。更には新手が横合いから加わるのが見えた。これは厳しいぞと想っておると、その者たちが董卓軍とやり合い始める。
「奉先殿。逆臣の董卓を討たんとしておると聞き、急ぎ助太刀に参った。東門を抑えておる。そこより逃げられよ」
「これは子師殿[王允]に君策殿[士孫瑞]。まことにありがたい」
俺たちはこの新手の助勢により逃げるを得た。




