第3話 転5
ときは少しばかり前にさかのぼる。
ペロの突貫ぶち抜きとは違う形で破竹の進撃を続ける二体の巨漢――しつこいようだけど、一体は女である。ペロがぶち抜いたは壁や障子であったが、この者たちがなぎ払うは敵兵であった。湧き出る兵の多さから、この先に董卓がおるであろうと確信する二体。
後を行く彼女のみ、他の二体が離れたのに気付いたが、そのまま、呂布について行く。やがて呂布も気付いたようで、
「師匠たちは付いて来ておらぬのか?」
「ペロがどこぞかへ走った。あちらはフリチン師匠に任せれば良い。我らは董卓の首を獲る」
「うむ。フリチン師匠がおれば、安心か」
いつの間にか、呂布にまでそんな呼び方をされておることはさておき、白虎が聞けば泣いて喜ぶであろう、二体の信頼がその会話には示されておった。
そして、明らかにこれまでとはモノが違うと、その立ち姿だけで察せられる武芸者が待ち構える間へと入った。恐らく董卓の護衛が詰める控えの間なのであろう。しかも相手は三人。
「奉先殿。先に行かれよ」
「否、猩猩。ここは共に闘い、まずはこの者たちを倒してからだ」
「灯りを消して戦うゆえ、そなたがおっては却って邪魔。逃げられる前に首を獲って来られよ」
そこまで言うと、彼女はその巨体に似合わず、大きく跳び、奧への扉を塞ぐ形で立ちはだかる一名に斬りかかる。まさに自らの体をぶつける如くに。
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相手は剣で受けるも、踏み留まるを得ず、後方の扉に激しく体をぶつけ、痛みのためであろう、うめき声をあげる。
彼女がそのまま力尽くで押しつぶす如くに剣に体重をかけると、たまらず相手は横へとその圧力をかわし、それゆえ、扉への道が開くこととなった。
「かたじけない。恩にきる」
その背中側を呂布が通り過ぎざま、声をかける。呂布が奧へと姿を消すのと、押された者が仰向けに転ぶのは、ほぼ同時。
他の二名は、次は我らの方かと身構えるも、彼女が跳んだは灯明の方。それを消せば、部屋は完全なる闇へと転じる。唯一、昼同様に見える彼女の剣が舞う度に、死体が転がることとなった。そうして、彼女が奧の間へと進めば、
「どうだ。我の息子とならぬか? さすれば、我の権勢も富もそなたのもの。全てを与えることを約そう」
大の男がやはり大の男に対して猫なで声でそう訴えかけておった。
「我が父上として仕えるは建陽様のみ、母上同様に慕うはクラン御前のみ」
呂布は大股に間合いを詰めると、形ばかりに剣を持つも震えが止まらぬ男の首めがけ、方天画戟を一閃。首は大きく跳ね飛び、吹き出す血が部屋といわず、呂布の体と言わずを汚すこととなった。




