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第2話 転4

「ペロっ。どこに行く」

 果たして、俺の声が聞こえなかったのか、いずれにしろ、止まる気配はない。


 俺は迷ったあげく、ペロを追うことにする。呂布の助太刀をしたいのは山々だが、さすがにペロ一人で行かせる訳には行かぬ。猩猩様、呂布の旦那を頼む。心中にそう念じると、俺はペロを追い始める。


 ただ、既に姿は無い。どっちだと見回しておるところへ、ドカンドカンと間を置いて音が聞こえる。とりあえず、俺はそちらに向かう。すると、丁度、ペロのサイズの穴が壁や障子に空いているのが見えた。どれだけ、強引なんだよ。俺は身をかがめてくぐりつつ、その後を追う。


 やがて一つの部屋に入る。奥側にペロがおった。


「大丈夫か?」


 ただ、ペロは異形の如くの相貌と化しておった。その可愛らしき顔は引き歪み、恐怖と怒りがないまぜになって伝わって来る。小さな口からはこれまで見たことがない牙がむき出しになっておった。そして、少年を両腕でかき抱いておる。


 その側らには、あでやかな着物を着た女性がうつぶせに倒れておった。そして床には血が溢れておった。


 そして反対側、部屋の入り口に剣を持った兵が何人もおった。その一本は血で汚れておった。俺はペロの開けた穴から入ったこともあり、ペロたちと兵の中間に位置しておった。


「王美人?」


 少年の顔には見覚えがあった。ゆえに、心当たりがあるとすれば、彼女しかおらぬ。呼びかけて生死を確認しようとする。くぐもったうめき声のみが聞こえる。良かった。まだ生きている。


 俺は兵たちの方を向いたまま、後ずさって彼女の側らに至る。その体を軽く揺する。彼女が顔をこちらに向ける。やはり王美人であった。ただ、顔色は蒼白であった。


「逃げましょう。歩けそうですか?」


「私のことはよい。弁を頼む」


「何を言っているのです。俺が兵を抑えます。ペロとともに逃げてください」


「私は放っておけ。歩くはおろか、立つことすらできぬ。弁を頼む。でないと、董卓の好き放題にその非道に利用されてしまう」


 俺が彼女をかついで行くか。しかし、そうなれば逃げ切るのはほぼ無理であろうし、この状態の彼女を無理矢理動かせば、却って死んでしまうかもしれぬ。


「ペロッ。先に逃げろ」


 俺はペロが空けた穴を指し示す。ペロがそこを抜けたのを確認してから、俺は一端部屋の片隅に跳び、灯明を消し、次に兵たちの方に突撃する。前面におる誰彼構わずに打撃をくらわし、それから、急ぎペロの後を追う。


 またペロの姿が見えぬ。しかし、ドカンドカンとやはり音が聞こえる。


 おいおい。王が頭を壁にぶつけ過ぎて死んだなんて洒落になんねえぞ。俺は音の方に急ぐ。すぐには見つからぬ。まったく何てスピードだ。王を抱えてこれだから、チートキャラという奴は。


 やがて見つける。追いつき、並ぶ。あの形相のままであった。しかも前しか見ておらぬ。


「ペロ。落ち着け。少しは俺に頼れ。俺が先導する」


 ペロがようやくこちらを見て、少しスピードを落とす。


「よし、良い子だ」


 俺は通り抜けるそこが廊下であれ部屋であれ、そのことごとくの灯りを消して行き、兵と出くわしたならば、一撃をくらわし、倒して行った。


 そうして、やがては呂布たちと別れたとおぼしきところに出る。彼らと合流を図るか、俺たちだけで出口に向かいそこで待つか迷う。王を連れた今、どちらが安全か、即座に判断できなかったのだ。


「猩猩様たちの方に行こうよ」


 とペロ。俺はそれに従った。向かうにつれ、徐々にペロの顔が元に戻って行く。


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