第3話 九原にて3
それで、残る猩猩様はといえば、こちらも、呂布に負けじとあちこち、うろうろしておった。どうも単独行動らしいが、彼女の身に危険が及ぶことはまずないだろう。よからぬ考えを抱いて近付く者がおったとしても、簡単に返り討ちにされるであろうから。
それで、観光しているの?と問うと、見聞を広めるため、ということであった。いや、だから、それって観光なんじゃないのとは想うも、まあ、それはそれ。彼女自身の内にそれ――彼女いわくの見聞を広めたい理由があるだろうことは、何となく分かる気がする。ゲーム・キャラとはいえ、自らの過去というものがあるようであり、また、それゆえにこそ、将来に向けてというのもあるだろう。
そしてゲームといえば、俺はこの世界について一つの結論に達しておった。どうやら、ここは俺が遊んだことのある三国志シミュレーション・ゲームの中ではなく、過去に戻ったのだと。しばらくはいつ出るかと楽しみにしておったステータス・ウインドウも含め、ここがゲームであることを証し立てる、それどころか、ほのめかすものさえ、これまで出会うことがなかった。
加えて、俺自身についても、一つの結論を出しても良いようであった。
俺の心が男でなくなったというのは、転生初日に分かったことであったが。どうやら、女になった訳でもないようだった。誰であれ、ここまで、男を好きになることがなかった。
転生前、モテる訳ではなかったので、彼女はできなかったが、女性を好きにならなかった訳ではない。むしろ、一目惚れしやすい方だった。それが、こちらに来てはさっぱりだった。
男でも女でもない、というか、男とか女とかの前の段階に俺はなった、というか、俺の心は戻ったらしい。いわば、三才児転生という訳だ。
ここで、ふと、ペロが俺につけた字を想い出す。フリチン。何だそれと、ずっとそう想って来た。少なくとも体は女になったのだから、フリチンなどしたくてもできねえぞと。ところで、フリチンといえば、小便小僧。まさに三才児。ペロの奴、俺の三才児転生を早くもあのとき――丁原様の陣に初めて赴いた時点で見抜いておったのか?
そうしてペロの方を見ると、こちらで良く見かけるタルバガン――要はネズミのとても大きな奴――数匹とじゃれ合っておる。相撲の如くに取っ組み合っては、タルバガンを放り投げる。そうして、胸を張る。いや、そもそもペロの方がずっと大きいし、そもそもチートキャラ。勝って当たり前だろう。
そうして俺が見ているのに気付いたペロ。まるで手招きする代わりにという如く、両腕を突き出し、その小さな手のひらからかぎ爪を出したり引っ込めたりしてにやにやしておる。
やれやれ、どうやら俺の勘違いらしい。こいつが、そんな慧眼を持っておるはずもない。




