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第4話 血の四日間4

 丁原は邪魔にならぬよう、配下を引き連れ、一端は南大門前から少し距離を取る。


 そうこうしておるうちに、果たして武器庫から奪って来たのか、巨大な衝車しょうしゃ(注1)が大勢の者たちにより運び込まれ、やがて破城槌が大門にぶち当てられる。耳を聾するほどの轟音が鳴り響き、体を揺するほどであった。(注1 衝車:車体部を有する破城槌)


 更に巨大なハシゴが何本も城壁に立てかけられ、それを伝って兵はのぼらんとし、一方で城壁の上からは矢が射かけられる。そこもまた攻防の最前線であった。


 遂に大門が突破され、袁紹の隊を先頭に、袁術の隊、また、あるじを失った何進の隊――率いるは呉匡ごきょう――が続く。早くに片が付くと想っておったが、夕刻を過ぎ、全てを夜の帳がおおっても、城内からは何の連絡も無かった。


 考えてみれば、ここを託されたのも急であったため、伝令や連絡の取り決めは一切しておらぬ。袁紹が残していった隊の指揮官に尋ねてみるも、やはり同様であった。


 宮城内からはすごい音――騒音や悲鳴や怒声が聞こえて来ておれば、戦闘は継続しておるのだろう。


 やがて巨大な炎が立ち昇り、夜空を赤赤と照らす。続いてもう一本の炎が。丁原たちがおる(宮城の)南大門から見ると、ちょうど左右に炎が見え、宮城が灯す巨大なかがり火と見えなくもない。


 ようやく伝令が至って告げるところでは、

「虎賁中郎将たる袁公路(袁術の字)様が東宮と西宮を焼き討ちしました」


(まるで戦ではないか)


 ようやく丁原は状況が呑み込めて来た。




 他方、その二つの炎を宮城の内から見上げる者がおった。盧植であった。


 このときに至るまでの間のこととして。


『兄の進は逆賊ゆえ誅されたと聞いております』


 との皇太后からの信じがたき返答文をふところに入れて、しばし、南小門の前を行ったり来たりしておったが、これでは却って宦官側も動かぬかと想い至り、一端は離れ、遠くから門の様子をうかがっておった。


 そして宵闇に包まれると共に、再び近付き、いずれの小門からも死角となるところにある植え込みに身を隠す。旧暦の八月、虫の音は盛んであり、皮肉な風情に包まれての監視続行であった。


 そんな最中に炎が燃え上がったのである。


 状況を確認したく想い、盧植は二つの炎の方へ、つまり南の方へ向かう。


 そのとき後宮の方から不意に物音がし、雑多な足音がそれに加わる。戻ることにした。


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