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第4話 曹操9

 曹操の家系を調べて目を引くのは、やはり祖父の曹騰そうとうである。この者は宦官であった。私自身、調べ尽くしたとは到底言えぬが、漢地の王朝で祖先を宦官とする例を知らない。


 宦官の権力を掌握する様を見るにつけ、歴史上に近しき者として想い浮かぶは西アジアのマムルーク(グラームとも呼ばれる)である。日本ではもっぱら奴隷との語が当てられるが、あくまで主人との関係で奴隷なのであり、身分カーストではない。マムルークの権勢は王朝を開くまでに至る。有名なところではまさにその名で呼ばれるマムルーク朝であろうが、他にも少なからずある。


 支配者(皇帝など)に身近に仕えるを許されたゆえに、マムルークも宦官も権力を得た。ただ、マムルークには存在せず、宦官のみに存する大きな問題とは何であろうか。いうまでもなく、子孫が残せぬことである。権力や富貴を手に入れても、それを継ぐ者がいなければ、それを礎としての更なる繁栄など望みようもない。




 ところで、後漢朝において、宦官について興味深き法改正が行われておる。ときは第八代順帝の御代。陽嘉ようか四[135]年の2月のこと。『宦官が養子を取り継嗣となし、封爵を世襲することを許す』と。


 これにより後の曹操の存在そのものが許されたといっても過言ではあるまい。




 後漢書を調べていると、曹家についての面白い記事が見つかった。収められる『蔡衍さいえん伝』である。時代は明記されておらぬが、このあとに霊帝が即位するとあるので、恐らくは前の代の桓帝のとき。


 この伝の主たる蔡衍が河間(王)国の相たる曹鼎そうていの千万銭にのぼる収賄の罪を弾劾したのである。この曹鼎が何ものかといえば、ときの中常侍たる曹騰(曹操のおじいさん)の弟である。曹家の皆さん、蓄財に励んでますなという奴である。


 ちなみに、曹鼎の官職である河間(王)国の相は、曹操が任官した済南(王)国の相を想い出させる。その済南王に新たに就いたのが河間王の系譜であることは既に述べた。そう、河間王家と曹家はまさにズブズブの仲だったのである。言を更に加えれば、桓帝も霊帝も河間王の系譜に属する。




 そして、曹操といえば、やはり『治世の能臣、乱世の姦雄』であろう。これについて後漢書に異伝がある。『許劭きょしょう伝』である。許劭は人物評で名高かった。そこで曹操も我もまたと想ったのであろう。人物評を求めた。ただ、許劭は曹操をいやしんで答えぬ。恐らくその祖父が宦官であることを利用し富貴をなしたゆえであろう。


 ついには、曹操が脅かすので――果たして、怒鳴りあげでもしたのだろうか? 殴ったりまではしなかったであろう。さすがに相手は年長の名士であるから、それをやったらアウトである――やむなく答える。『君は清平の姦賊。乱世の英雄』と。この前半は許劭の本音であろう。お前のようなやからは、この漢朝の御代にては存在してはならぬクズとの。後者はこの乱暴者が満足して帰るべく放った言葉であろう。しつこく居座り、脅してくる輩に向けての。


 英雄とは古今東西、若者が憧れる存在である。三国志が人気なのも、まさにこの英雄たちが活躍するゆえであることは、論をまたない。


 実際のところ、曹操はたいそう喜んで去ったと史書は伝える。


 巷間知られるところの『治世の能臣、乱世の姦雄』が曹操のキャッチフレーズとしてはるかに優れていることは明らかである。これゆえに、後代の曹操の人物像イメージが形作られたとさえ想えなくもない。その悪者ヒールとしての。『三国志演義』などの物語の中だけではない。実際、後代の宋にては、臣下の諫言に際し、暴虐なる君主の例として、しばしば曹操の名が挙げられていたりする。


 ただ、許劭と曹操、二人の心情に寄り添うならば、『君は清平の姦賊。乱世の英雄』の方が現実味があろう。




 また、何か面白いものがあったら、投稿したいと想います。


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