終話 二人の少女5
(視点は妹[白蓮]です)
「お姉様。ずるいわ。ずいぶんと楽しそう」
純白の洋装ドレスを身にまとう色白の少女がそう言う。
「楽しいことは良いことではなくて? 太平道の教義にも合っているし。ねえ」
こちらは黒ずくめの洋装、肌もこんがり小麦色の少女が答える。
「それはそうだけど」
私たちは黄巾勢とともに潁川というところから南に下って、ここに至った。聞いたところでは、巴郡というところらしい。お姉様の注文は厳しく、ようやくお眼鏡にかなったのが、ここであった。
山岳地であり、馬で進むより人が歩く方が楽というほどの険しさであった。それで、手鞠お姉様が何が楽しそうって、加えて何に夢中かって言うと、城砦造り。厳密には城砦『群』造りだ。そのうちの一番高いところにある城から二人で見下ろしている。眼下に見えるはまさに建造中のそれらだ。人もたくさんいる。
「いっぱい造るんだね」
「そう、城と城を連結させて守るんだ。大きな城一つで守るより固いんだよ。特にこんな山ばかりの地だとね」
「ふうん。そうなんだ。そんな知識、どこから手に入れたの?」
「ほら、チートって奴よ。あなたが魔法を使えるのと同じ。私には、本来なら、知らないはずの知識が入ってるの」
「なるほどね。でも悪役令嬢らしくないわよ。日光の下で皆と一緒になって働いているなんて、何か健康的過ぎる」
「そう? 謀略とかしないから? どっちにしろ、生き残るために一生懸命やってるだけよ。それにお城が徐々にできて行くというのは、見ていて、楽しいわ」
「私は一緒に働いてはいけないの。あれ。版築造りというの。あれくらいなら手伝えそうなんだけど」
「いけないことはないけど、あなたは皮膚が弱いから、あまり日焼けしない方がいいわ。それに、あなたが働いていると、皆がうるさいのよ。なぜ、黄天様を働かせるんだ。俺たちがやるのにってね」
「そうなの。つまんないわ。もう少し活躍したいのに」
「白蓮。あなたは戦闘においては切り札だから。それに幻術の方は無闇に使うと、皆が慣れてしまい、却って逆効果よ」
「そうよね。分かっているんだけど。退屈なの。おチビちゃんがいればなあ」
「あのテイマーのこと? あなたはずっとそう呼んでいるけど、言うほど違わないじゃない」
「でも私より小さいのは確かだから。それに、私になついてくれて、私の方もあの子が大好きで。ねえ。こっちに来ていると想う?」
「どうだろうなあ。いつか会えるかもね。ただ、この地に合っているのは、あの脳筋連中の方だろう」
「うーん。それは良く分かる」
二人して笑い、なつかしくなり、少ししんみりする。
「会いたいなあ」と私。




