表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/62

第2話 王美人2

 扉を抜け中庭に入っても、ボロ屋の印象は相変わらずであったが、出迎えたあるじはすらりとした長身のまだ若い女性であった。後宮ということで、さぞや色っぽい女性かとも想像していたのだが。さっぱりした感じで、クラン御前ベキと気が合うのは良く分かる。そして俺たちは御前から外套をぬぐようにうながされる。


 えっ? 脱ぐの? 門番とのやりとりは、入るためだけの、とりあえずの口実ではなかったということらしい。


 俺たちはまさに珍客にふさわしい姿を披露した。王美人は俺のビキニ・アーマー姿に一興し、ペロの着ぐるみ姿に一興。ただ何より驚き興奮しておったのは、猩猩殿の二つのスイカに対してであった。


「これ、本物なの?」などと言いつつ、つついたりゆすったりしている。そうされている方はといえば、満更でもない様子。まさに、猿もおだてりゃ木に登る、という奴である。


 やがて、お二人――王美人とベキ――は敷物の上に座る。王美人が俺たちに向かって言うには、


「御前がくれたフェルトなの。ふかふかなのよ」


 俺はといえば、かなり古びているとはいえ、洛陽の後宮の建物ということもあり、興味をそそられ、見て回る。とはいえ、そんなに広い訳でもなく、ほどなくして見終わり、皆の方を見る。


 猩猩殿はといえば、上機嫌のままに、お二人から少し離れたところにどっかとあぐらをかく。


 それで、ペロはといえば、中庭を流れる小川に入り何かを探している。その後ろで、子供――小学生低学年くらいであろうか――が少し離れたところから興味津々で見ておった。


 ペロは、やがて目当てのものを見つけたらしく、取り上げると、自らの首に巻き付けておったもの――何か動いている気がするが、気のせいか――を、その手に持っているものに結わえ付けているようであり、何をしておるんだと想っておると、


「はい。あげる。玄武ちゃんだよ」


 と言いつつ、少年の方に差し出す。


 少年は腰をぬかした如くに後ろに倒れて尻餅をつき、泣き出す。


 あいつ、もしかして、そう想いつつ急ぎ駆けつけると、十センチほどの亀に蛇が巻き付けてある。ペロには、俺の本名である白虎のいわれを聞かれた際、玄武を含めた他の四神を説明したことがあった。


 その実行力というか、テイムぶりというかに感心する。亀は分かるが蛇はないだろうと想いつつ、子供のことが気になり、助け起こすために更に近付こうとするが、その前にペロが両手で少年の頬に触れる。ピタリ泣き止んだ。お前、もしかして、その少年にテイムの術をかけたのか? その通りという如くに、加えてどんなもんだいという如くに、ペロがぺろりと舌を出す。


 そのあと、少年はペロになついた小動物同然となり、そうなれば、二人の様はまさに二匹の小動物がじゃれ合う如くとなる。ただ、明らかにぶつかってふっとんでいるのは少年の方である。


 お前、手加減無しだったんだな。俺相手にもじゃれついて来ていたが、俺は武闘家の体だったのでびくともしなかったが。子供相手ではこうなってしまうのか。


 ただ、子供の方はそれでも嬉しいらしく、はしゃいでいる。恐るべし、テイマー。


 でも転んだりして土まみれになっており、母親の王美人は怒っておらぬかと、そちらをうかがうと、大きく口を開けガハハとその様を見て笑っておる。


 でも、王美人といえば――記憶を探る――この人って献帝の母ではなかったか? とすると、あの子供が将来の献帝。ということは、ペロ。お前。皇后になるつもりか?


(注 後漢書によれば、献帝は即位のとき、数えで九才(満でいえば7~8才)。ゆえに、このときはそれより幼い)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ