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終話 曹操5

 ある夜、曹操は冀州の刺使の王芬おうふんから、内密に願うとの条件の下、帝(霊帝)の廃位及び新帝として合肥侯(注1)の擁立をもちかけられる。


 曹操は驚いた。己がそのような不忠者に見えるのかと。翌朝、開門と同時に帝への謁見を願い出る。王芬の計画は帝の河間への巡行を狙うというものであった。なので、帝には巡行を中止するよう求めた。他方で、王芬の説得は私にお任せくださいと申し出た。否であれ応であれ、帝からの答えはなかった。


 帝はまずは太史令(平安朝の陰陽師に近い)の名を借りて、巡行は不吉であるとしてとりやめにした。更には、己が王芬への手紙を書いている間に、帝は王芬へ宮殿に来るように命を出し、結局、王芬はそれを拒んで自殺した。なので、その手紙は出さぬままに手元に残ることになる。


(注 王芬から曹操への謀反の誘いは、『三国志』の本文ではなく、裴松之の注が伝えるものである。とはいえ『九州春秋』と『魏書』の二書が伝えるのであるから、史実であると想われる。更に言えば、このことが公に知られている。

 ただ不思議なことに曹操が帝にこの計画を報せたことを史料は伝えない。知っていて報告しなければ、帝への裏切りは明らかであり、罪に問われかねない。なので、どう考えても帝に報告したと想われる。そうして報告したからこそ、のちに謀反の誘いがあったことがおおやけになっても、曹操は罰せられなかったのである)


 注1 同じ王族であっても、王は郡を封地とし、侯は県を封地とする。ただ、侯から皇帝に即位した者は多く、桓帝や霊帝もそうである。

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