第2話 二人の少女2
「でも、いくら私が魔法少女だとしても、あんな大軍を相手にするのは無理よ」
「戦う必要はないわ。まぼろしを見せればいいの」
「どんなの?」
「空を黄色にするの。それなら、できるでしょう」
「できるけど、それがあの人たちの助けになるの」
「ええ。あの人たち、頭が黄色いでしょう。だから、空が黄色になったら、自分たちを応援してくれると信じられるわ。そうしたら、これまでにない、とんでもない力を出せる」
「そうなの?」
「そうよ。空・・・・・・天と言った方がいいかしら。ここの人たちにとって、天は神様なの。まぼろしをうまく見せることができれば、あなたを天からの御使いと想ってくれるかもしれない」
「それはちょっと面倒くさそう」
私は少しふくれっ面をしてみせる。
「そこは私がやるわ。あなたの従者として」
「お姉様が私の?」
「気に入った?」
「うん。だって、そんなの初めてだもん」
それから、私は手鞠お姉様とともに下に向かう。お姉様いわく、両軍からもっと良く見える高さ、ただし矢が届かないところということであった。なので、手頃な高さにある突き出た岩の上に陣取った。
それからのお姉様の動きには驚き、更には笑みがこぼれてしまう。
どっから声を出しているのと言いたくなる、普段のお姉様の落ち着きはらった声からは想像さえできない奇声を発しながら、途中で見つけて来た枝を一本ずつ左右の手に持ち、暴れている。踊っているのかもしれないが、暴れているようにしか見えない。更には、その二本の枝をぶつけ合う。太鼓代わりなのかもしれないけれど、音がうまく出ていない。ただただ、こちらに注目を集めたい。その気持ちは伝わる。
やがて動きが止まり、息を切らせてあえぎつつ、お姉様は言う。
「白蓮。お願い」
ようし。私の出番だ。
幻術で良いなら、それほど難しくない。怪異を見せることと、怪異を出現させることの難易度は段違い。特に今回は色のみ変えれば良いのだ。
私は精神を集中するために、胸の前に両手を合わせ印を組む。最初に憶えた、とても簡単な印だ。でも、私ととても相性がいい。しっかりと周囲を――もちろん空も――陽は朝と昼の間の高さにあった――見る。それを脳裏に刻み込む。それからあえて目をつぶり、頭の中で全てを黄色に染め上げる。
「すごいわ」
お姉様の声がする。
どうやら、成功したらしい。
私が目を開くのと、下からどっと歓声が上がるのは、ほぼ同時であった。
それからはお姉様の言う通りとなった。負けていた方が押し返し、やがて敵軍は崩壊した。『漢』や『曹』の旗印をかかげた者たちが逃げ散る。
「あれっ。あの人、つかまっちゃったね」一際、目立つ格好をした者が囲まれ、そのまま捕らえられるのが見えた。やがて、動いている敵はいなくなり、動けない者が地に横たわっておった。「あの人たち。死んじゃったのかな?」
「見ない方がいいわ。血が黄色に染まっているから、そこまでひどく見えないけど」




