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TSやらかし転生@三国志――俺だけチート不完全?  作者: ひとしずくの鯨
第26章 状況の推移5(前篇)
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終話 状況の推移5―3

 数日後、ペロが上機嫌で戻って来た。その顔にはちょっと変わった隈取があった。そうして、倫倫にも。手鞠もついに根負けしたのだろうか? あるいは、倫倫も一緒になって頼むゆえか? 恐らく後者だろう。結果から言うと、ペロの『倫倫と一緒』作戦は見事大成功という訳だった。


 しかし、このペロの隈取、おフザケ感がすごい。両の頬にはグルグルの渦巻きが描いてあり、そして額には三本の横線が。


「ペロ。もうちょっと、ましなのを……」と言いかけ、止めにする。本人はずいぶんと喜んでいるようだ。あえて否定的な物言いをして、気分を腐らせる必要はあるまい。代わりに、白蓮に言う。彼女はペロが隈取されて戻って来たのを見て、近くに寄って来ておった。


「ペロの隈取だが、もう少しマシなものにできないのか。あれでは、効果がなくて当然とさえ想えるが」


「うーん。お姉さまもいろいろ試して、全部ダメだったから、あれに落ち着いたって感じ」


「そうなのか。まあ、この城塞を造り上げるくらいだ。妙な手抜きはしねえか」


「でも、おチビちゃんたちだけ、ずるい。私も、してもらって来よう」そう言って、白蓮は小屋の方に駆けて行く。


 対して、倫倫はといえば、改めて見て、ホウと想う。絵心なんて全くない俺でさえ感嘆する美しさだった。大小の花々が極彩色に描いてあったのだ。


「倫倫。花畑で眠るお姫様みたいだよ」


 そう言うと、倫倫は少しうつむいて、はにかむ。


「ペロは? ペロは?」

 と聞いて来る。


「ヒョットコかな」


「ひょっとこ? なに、それ?」


「とても格好良い奴」


 俺がそう答えると、ペロはまんざらでもない顔になる。まあ、まさに嘘も方便という奴だった。


 やがて白蓮が戻って来た。しっかり隈取してもらっている。手鞠もペロたちだけにして白蓮にしないという訳には行かなかったのだろう。よく見ると、この前と少し違う。何だろうと想う。


「何? 何か変?」


 白蓮が問うて来る。


「なんか、この前と少し違う。どこだろうと想ってね」


「ああ。そういうこと。朱を入れてもらったから」


「朱?」


「お姉さまの血よ。そして、蝶蝶。あなたにもするから来てって」


「いや。俺は必要ないよ」


「違うの。いろいろ試した方がいいって」


「試す? 何の?」


「いいから。行って行って。私が怒られちゃうから」


 ついには、白蓮が手を引っ張りだしたので、


「分かった。分かった。行くから」


 それでも、白蓮は信じられぬのか、立ち上がった俺の腰を押す。試すって何だ。そう想いつつ、小屋に入る。


 手鞠は寝台に座っており、その前にイスが置いてある。


「さあ。座って。座って。隈取しやすいように」


 そう言う白蓮に導かれるように、俺はイスに座り、顔を突き出す。そこで、白蓮はお役御免とばかりに退室する。そうして、手鞠はやはり人差し指を俺の顔に走らせる。


 こいつ、きれいな顔してるな。しかし、こうして至近距離で面と向かうと、なんか、どきどきする。慣れてないゆえだろう。何せ、転生前でこんな経験ない。その心の内を悟られまいと、俺は蝶蝶、俺は蝶蝶と念じていると、何か、そんな己が滑稽に想えて来る。それで、どうやら、顔がにやけていたらしい。


「笑わないで。蝶蝶。戦いにふさわしい隈取ができないわ」


 そう怒られてしまう。それで、俺のにやけ顔はふっとんでしまったようで、


「はい。できあがり」とのお言葉をいただけた。


「城塞の内部は白蓮も詳しいから、彼女に案内してもらって」


 そう言って、手鞠は俺を送り出した。




 皆のところに戻る。


「じゃあ、行こうか。白蓮。案内してくれ」


「俺も行くよ。少しでも役立ちたい」と清流。


 倫倫は自分一人置いてきぼりになると想ったのか、悲しそうな顔となる。


「倫倫。行こうぜ。俺がおぶってやる」


「いいの?」


「もちろん」と俺。


 そこで、なぜか、ペロがグイと間に入る。恐らく自分がおんぶすると言いたいのだろう。


「フリチンお姉ちゃんがいい」と倫倫。


 想い当たる理由がない訳ではない。この前、ペロが倫倫をおんぶして山岳を登ったとき、危なっかしい場面があったのだ。何度か、後方にバランスを崩した。ただ、ペロの場合、その持ち直し方が独特なのである。踏ん張ってこらえるなら、倫倫も恐くないのだろうが、ペロは、そこで後方に宙返りを決める。本人にしてみれば、それで大丈夫との確信があるのだろう。実際、それでうまく行っておったのだが。倫倫にしてみれば、そのたびに後方に落下する感覚を味合わされることになり、怖くない訳ないのである。


「俺がいいってさ。ペロ」


 ペロはふくれっ面をしてみせる。目が見えぬとはいえ、仲の良い二人ゆえ以心伝心、倫倫にも伝わっているようだが、彼女は考えを変える気はないようであった。それほどに恐かったのだろう。


「俺もいるけど」


 清流までも参戦する。そこで倫倫は困った表情となる。


「倫倫はモテモテだな。俺と清流で交代でおんぶすることにしよう」


「ちぇっ」とペロはあきらめきれぬよう。


 そうして、俺たちは白蓮の案内で、本城塞の横穴の入口に至る。

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