終話 状況の推移4―2
曇天の下、眼下の城塞群を眺めつつ、手鞠はもの想いにふけっておった。
鳥に携えさせて届いたおチビちゃんからの手紙。白蓮はそれに大喜びして、私ばかりか、おチビちゃんを知らない陸仙姑おばあさんとか黄おじいさんにまで見せていたけれど。そして、曹操がまた軍を送ってくるかもしれないからと、「助けに来て」との旨の返書を書いて、それを鳥に託していたけれど。うまく届けばいいんだけれど。
そういえば、おチビちゃんからの手紙には気になることが書いてあった。
おチビチャンは、今、ペロと呼ばれているらしい。あの娘の舌をすぐに出すクセゆえだろう。そして、脳筋コンビは猩猩様とフリチンとのこと。猩猩様もまた見た目通りだから分かるとして、蝶蝶がフリチンて何?
曹操自ら率いる遠征軍。晴天の下、土煙を上げて進軍しておる。
夏侯惇もまた従軍しておった。出発して早々に、自部隊を離れる。別部隊を率いておる郭嘉の近くにわざわざ至り、駒を並べる。そして憤懣やるかたない様子でこう告げる。
「確か、そなたは放って置けば良いと言うておったな。正直、我もそれが最善だと想う。なので、てっきりそなたが孟徳を説得するものと想うておったが。そなたほどの者が説得に失敗したのか? それとも説得を試みなかったのか?」
「無論、しました。しかし、責はわたくしにはありませぬ。元譲様(夏侯惇の字)にこそ」
「なぜ、我に責がある? 胡乱なことを申すな」
「殿はおっしゃいました。城塞を造り上げた軍師を是非我が陣営に迎え入れたいのだと。元譲様に勧められて以来の宿願であると。どうです。心当たりがあるのではないですか?」
「ハッ。孟徳め。まったく呆れるわ。これほど、冗談の分からぬ奴とは」




