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休日

 村の開発を始めて二月と少々。

 季節は冬から春盛り。

 野山が新緑に覆われ……って!


 ほんとこの辺りは草木が少なくて殺風景だよな。

 ずっと荒地で放置されてきた土地だ。


 海を望む渓谷の橋。

 あそこの風景は緑が濃くなったんで絶品なんだが、あの展望駐車場は未だ手付かずのままだ。


 なんせ人口が少ない。

 またクロスロード城に人を頼んで、あそこに店開きでもしてもらおうかな。

 客もクロスロードの5千人が、ってそれは当てにし過ぎか。


 サースルカタルからクロスロード、カリノ村を通ってルカサルオドシってルートは距離が遠くなって、観光目的でもなければ誰も通らない。

 その観光も知名度ゼロではどうしようもないってのが現状だ。


 買い付けに足繁く通う行商もクライストだけだし。


 あいつ、仕入れルートを秘匿して一儲けなんて考えてねえよな?

 うちとの取引は結構利があるはずなんだが。


 おっと、それよりもだ。


 俺には一つ悩みがある。

 それはメアリの事だ。


 元々が生真面目な性格らしい。

 それが孤児保護の助成金目当てで飼い殺し、そんな中でチビ3人の面倒を見てきた苦労人。

 って本人も未だ子供なんだが、ずっと気を張って生きている、そんな感じが俺の気に掛かっている。


 クレアやメグも気に掛けて色々教えたり頼りにしたりで、ほぼ大人扱いで持ち上げているが、本人としてはその辺りをどう思っているのやら。


 負担に思っていなけりゃいいなと言うところだ。

 少し気持ちの切り替えをさせてやりたい。


「なあ、メアリ。

 この村も随分落ち着いてきたと思わないか?

 ここらで何日か纏まった休みを取ろうかと思うんだが、どうだろう?」


 まずは本人の希望と言う奴を引き出して見よう。


「良いですね!

 何日まで行けそうなんです?」

 お、日数か?


 考えてなかったぞ、何日村を放置して良いかってか、スキットとエンザもかなり馴染んでいるし事務関係はいいな、スワランジーもすっかりこの辺りの顔役になってる。

 相談事は頼めそうだ。


 ヤマノもマメノも元の長は健在だ。手はかからねえ。


 そう考えると10日くらいは余裕かな、メグがトランシーバー的な通信を作ってたようだし、連絡を受けて指示くらいは出せるしな。

 よし。


「10日かな?

 もう少しいけると思うが」


「10日!

 すごい!

 どこ行きましょう!」


 お、めっちゃ喜んでるなあ!


「あー、でもメグさんとクレアさんにも相談しないと!

 普通に街の観光っても、退屈しちゃいそうですよ、あの2人」


「そういやテオドンの都でもそうだったな」


「そうですよ、あんな広い街でも長居出来なくて、外から夜景見たら移動ですもん」


「何やて、メアリ!

 ウチのこと、何や思とるんや!」


「そうだよ、メグちゃんはともかく、あたしだって頑張ったんだよ?」


「何やクレア、ウチはともかくって?」


「そんなの決まってるじゃない。

 メアリはあたしらのことを良く分かってるってこと」


「そらまあ……

 そうなんやろけど」


 こいつら乱入してきたと思ったら、何を言いたいんだ?


「そうですねえ。

 『イブちゃんタクシー』が退屈しないで村から離れてリフレッシュですか?

 難しい問題です」


「なあに言うとるん?

 簡単や!

 ウチらは冒険者パーティなんやで!」


「冒険者って、登録してるのメグちゃんひとりだけどね!」


「そんなん!

 ええやんか、パーティなんやから」


「それでどうするんですか?

 やっぱり冒険なんですよね?

 どこ行きます?」


「「海や!」よ!」


 おー、揃ったなあ。

 海ねえ、イブちゃんボートで遠洋航海か?

 しかしなあ……

 あれ、モリウチセンとセットでないとちょっと狭いんだよなあ。


「タケオ、どないしたん?」


「いや、ボートはちょっと10日も過ごすには狭いかなと、な?」


「あー、そうね、確かに」とクレア。


「休みはいつからや?」


「これから準備してあちこち知らせて?」

 俺が言うとメアリが、

「それでしたら3日ほど頂ければ」


「3日やな!

 クレア、イブちゃんボートの大改装や。

 ウチはすぐ始められるで!」


「良いね良いね!

 やっちゃおう!

 それでどうするの?」


「あのう?

 魔石って要ります?

 売るかどうか迷ってる在庫があるんですけど……」


 なんか勝手に話が進んで行くなあ。

 いつものことだが、これって暴走の前兆ってやつだよな。

 まあ良いか。


 どう話が決まったのかメグとクレアは、

「イブちゃん連れてくねー」

 と言ってバタバタと出て行った。


 10日の休日確保の為に、俺は俺のできる仕事を進めるとしますか。


   ・   ・   ・


「どうやタケオ。

 準備はええか?」


「まあこんなもんだろ。

 アレは使わせてくれるんだろ?」


「何や伝話の魔法具のことやら心配要らんで?

 もうあちこちに預けて来たよって。

 お互いにも話せるさかい、余程のことやないとこっちには来んはずや」


 ほう。アレはデンワで良いのか。

 元は携帯の電話機能だからな。

 通話先が少なすぎて、トランシーバーと使い方が変わらんがな。


「それでボートはどんな改造をしたんだ?」


「それは見てのお楽しみちゅうやっちゃ」

「タケオ、絶対びっくりするから!」


 いつものように荷車を曳いて港まで。

 今朝は峡谷の景色がまた良く陽に映える。

 天気がいいのは幸先がいい。


 ここからだと港はほとんどが手前の木の影だが、チラッと白い船体が見えた。

 アレは見た事がない。

 改造したボートのようだがかなり大きくないか?


 まあ、驚くのは港に行ってからか。


 そうして走るカーブの多い下り坂は、考え事には向いてない。


 半島を横断する山越路。

 左手の下に港が見えて来る。

 他を圧する威容の白い船が目に飛び込む。

 ここから見ると箱型のようだが。


 いくら魔石推進と言っても船幅を広くとるのは船足が落ちる。

 メグたちは何を作ったんだ?


 港の進入路へ入って視線が下がると、その絡繰(からくり)が見えた。

 それは3胴船だった。

 同型船を二つ並べて甲板で繋いだのが双胴船で、これは向こうで見た事があった。


 この場合は元になったボートが中央にそのままある。

 両方に離れて並ぶのはやや小ぶりの漁船。

 その3隻を覆うように2層の甲板が菱形に重なる。

 全幅で12メートル強、確かに甲板は広いが何と言うか、走ると風の抵抗がすごそうだ。


 これはアレか?

 イブちゃんの防御結界の中に収まるとかを考えての?


 確かに最初の漁船を作ろうって時に、いろんな形の船の話はした。

 フロートの付いた小舟は安定がいいって話もしたと思うが、ここまでやるか?

 建造費がクレアとメグの魔力と手持ちの魔石で収まっちまうからなあ、やりたい放題って奴だ。


 タクシー(イブちゃん)を載せる段になって、進入路に蓋が掛かるらしいと気がついた。

 捕鯨船の解体甲板(デッキ)が蓋の上に出来るようなんだ。

 そのための海中への斜路が跳橋のように後ろに伸びて、今はフェリーボートのように岸壁と繋いでくれている。


 船を跨ぐ甲板は下が居住層で上が屋上の2層。

 船尾付近にはシートを被った手漕ぎボートらしい影がひとつあった。


 居住層の後ろ半分は解体甲板(デッキ)で区切られている。

 全長20メートル弱のボートだから、捌ける獲物は延長デッキを上げても精々16、7メートルだ。


 まあメグがいるからな。

 デカくてもどうにかしちまうだろうが。


 荷車は外して宿舎の脇へ預ける。

 港の総勢18人が揃って出陣の見送りとは大仰なことだ、勘弁してほしい。


 タクシーを下層に入れて梯子を上がるとそこは解体甲板(デッキ)だ。


 操舵室はボートの船首に移っている。

 部屋割りは右舷が男、左舷が女だと言うが、居間や水回りは右舷にあるんだ。

 人数比で行くとそうかも知れんが、なあ?


 左右のフロート代わりの小型漁船は全長6メートル、幅1メートルちょいと釣り船くらい、本当に小さい。

 中は食料等の貯蔵庫になっている。

 メインの船倉はボートの前半分だから相当の量の獲物が積み込める。


 さて船内の案内は板に書かれた案内図でおわらせ、ずらっと並ぶ見送りの視線から逃げるように舵輪を握って出港だ。


 もちろんそう感じるのは俺だけ。

 他の6人は手を振り挨拶するのに余念がない。


 天気は晴朗、風は西、されど波高しってとこかあ!

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