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第11話 【Eternal Chine】守りの誓い part5 視聴回数5万 高評価5882

「く、くそ!?」


「Guuu……」


 青年の衣服はボロボロだった。

 彼の傍には傷つき倒れ動かないヤマアラシがいる。


『GUOOOOON!』


 対峙するは体長4メートルを超える巨大な怪鳥だ。

 周囲に風をまき散らし、口から吐いた炎と組み合わせ火災旋風を巻き起こす災厄だ。

 青年の膝をつき、それでも目の前の怪鳥に立ち向かわんと決意を固める。

 なんのためか?


「駄目! 私を置いて逃げて!」


 女性が倒木の下敷きになっていた。

 このままでは抜け出すこともできず、そのまま怪鳥に襲われ命を落としてしまうことだろう。

 青年はその女性を守るために……愛すべき相手を守るために立ち上がった。


「お前を置いていけるわけないだろ! 俺たちと一緒に帰るんだ!」


「リク……」


『GYUUAAAAAAA!』


 しかし、現実は非情だ。

 怪鳥は叫び、同時に風の刃がリクと呼ばれた青年を襲う。


「ぐ、ぐああああああっ!?」


「リクうううう!」


 青年はなすすべもなく倒れ伏した。


『GYOGGYOGGYO!』


 怪鳥は笑う、嘲笑う。

 そして……


「ぐ、うううう……」


『GYUO? GYUAAAAA!!』


 まだ息のある弱者にイラつき……ブレスを放った。


「いやああああああ!」


 女性は悲鳴を上げ。


「く、そおおおおおおおお!」


 青年は叫び。







「ぎゅあああああ!」






 青年の相棒がその死を告げる炎を防いだ。


「なっ! パイン」


「ぎゅ、ぎゅ……」


 相棒を守るためにその身を炎に晒し倒れ伏したパインは、小さく鳴き、その命を……


「お前!? なんで……駄目だ!」








「死ぬな……!」









 瞬間ヤマアラシの肉体がこれでもかと光輝く。


「これは……ッ!」


「ぎゅあ、ああああ!」


 パインは叫ぶ、まだやれると。

 そして青年も──叫んだ。









「《神秘解放(アルカナ)》あああああアアアアアアッ!!」








『GYUOO!?』


 煙が晴れる、そこには。


「……パイン、なのか?」


「GYUA」


 そこには青年と、一匹のヤマアラシがいた。

 しかし先ほどまでと違いその体躯は倍以上に膨れ上がり、なによりも戦意に満ちていた。


「これが……新しい、力……パイン! やれるか!」


「GYUA!」


 青年は相棒と共に。

 ヤマアラシは相棒と共に。

 守るために走りだした。


『GYUOOOO!?』


 そこからは見事な大逆転劇だ。

 青年とヤマアラシは怪鳥の攻撃を躱し巧みな連携で追い詰める。

 そして……


「パイン、行けえええええええ!」


 青年が作り出した隙を突き、パインが怪鳥の懐に潜り込み。


「GYUAAAAA!」


 ヤマアラシの背から針の嵐が放たれた。


『GYUOOOOOOO!?』


 それが決め手になったのだろう。

 怪鳥はうめき声をあげながら……ポリゴンとなって砕け散っていった。


 青年は、頼れる相棒と共に愛した女性を守り切ったのだ!



□自室 烏鷹千里


「【次元(ディメンション・)の針(ニードル)】、クランメンバー絶賛募集中、と」


 時刻は深夜。

 俺が今見ていたのは、俗にいうプロモーションビデオだ。

 青年が愛した女性を守るためにモンスターに立ち向かい、絶体絶命のピンチに相棒である<アルカナ>が覚醒。

 見事な連携によってモンスターを打ち倒しハッピーエンドを迎える、までを編集した動画である。

 パートごとに分かれており、まるで何かの映画と見間違うほどの臨場感と爽快感を感じさせるそれは、とあるゲームの一部始終を動画に収めたものらしい。


 もうお分かりだろう、<Eternal Chain>である。


 コメント欄は個人製作の映画と思い込んでいる者も一部おり、実際にはゲームのワンシーンだということを知ると早く教えろと言わんばかりの熱量を有していた。


 <アルカナ>関連の話題は基本調べないようにしていたのだが、この情報は既知となった。

 ということでイベントの調査がてら簡単に調べ、トップに出てきたのが先ほどの動画というわけだ。


 この動画、かなりの反響があったらしくすでに5万回以上も再生されている。

 この【次元の針】は商業連盟の中に含まれた一都市で発足したクランらしい。

 普段は縫物をしている生産系クランのようだ。

 あのパインと呼ばれていた小さなヤマアラシも、もとは生産系を支援するスキルを有した<アルカナ>だったらしいが、<ガーディアン>として進化した結果が今回の動画とのことだ。


 公式ホームーページに記載されている現在のランキングを見てみると、商業連盟のImpact The World部門上位にリクというプレイヤーネームがランクインしてるのを見つけた。

 全体ランキングでも168位とかなりの高順位にいる。

 新規の参入のきっかけや初心者の支援、情報の共有等そういった形で世界に影響を与えたポイントはこれに計上されるみたいだ。


「このImpact The World部門が鍵か」


 すでにイベントが始まり現実では12時間が経過した。

 ゲーム内では24時間経過しており、最上位層の獲得ポイントは15000を超えている。

 今後、マイナス補正がかかるほどに勢いは収まるだろうが、今のところ1時間で700ポイント前後を稼ぐのが上位に入る目安になるらしい。


 総合ランキングと個人ランキングを簡単に試算してみたが、ランキング上位にいるプレイヤーの大半が国別ランキングにおいて2つ以上の部門で上位500位以内に入っている。うち、1つは100位以内にいる傾向があるのだ。

 りんご飴が500位以内に入るなら、ルクレシア王国の商売部門とImpact The World部門の2つで上位に食い込まなければならない。


「商売部門が現在601位、悪くはないが上位層が厚いな。プレイヤーネームは……琴乃葉、ね」


 ルクレシア王国の商業部門の1位の獲得ポイントはすでに10000を超え1人飛び抜けていた。

 よっぽどの人気商品があるのか、やり手の生産職なのか。

 これは気にするだけ無駄だな。


 元々りんご飴は生産職として高い位置にはいたので、数をこなし効率よくポイントを稼ぎ始めたところだ。

 しばらくはブーストがかかるのでもう少し伸びると見ていいだろう。

 なにより、今のタイミングなら買う側の財布の紐も緩い状態だ。

 あとは何か一つきっかけがあれば、悪くないところまでいけると俺は見ている。


「メリナの策略がどう刺さるかだな」


 そのままログインしようとし……それを見て思わず動きが止まった。


「なにが無理がない程度に頑張る、だ」


 ルクレシア王国の討伐部門ランキングの最上位。

 今まで不動の1位を貫いていた彗星が、2位に降格していたのだ。

 そして、その玉座の陥落を成し遂げたプレイヤーの名前はちょこちょこドドリアン。

 ブルーだ。


 ここ数時間彗星のポイントの変化がなかったところを追い抜いた形だ。

 彼女はおそらく用事がありゲームからログアウトしていた。

 その間にポイントを稼いだのだろう。


 数時間経っても埋まらないセーフティリードを作った彗星の殲滅能力を恐れればいいのか、ブルーのログイン時間の暴力に恐れればいいのか。

 そして、彼らは全体ランキングでも90位あたりの2桁に居すわっている。

 他国の討伐ランキングの最上位も同じような位置にいるようで……


「マイナス補正もなんのその、モンスターの討伐だけで上位に居すわっているバカ野郎共も一部いますと」


 国ごとの有利不利など関係ない。

 細かいことを考えずひたすらゴリ押せばランキング上位に入れる程度にポイントは稼げるらしい。

 それはきっとソロ専のプレイヤーにとっての救いに。


「なるわけないな……」


 脳筋極まりすぎる攻略方法を横目に、俺はログインするための準備を進めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 情報の公開まで含むとなると、伸び悩んできたところで見境なしに情報公開する輩が現れないかが懸念されるところでしょうか。 そして脳筋勢の攻略に関しては、ある意味風物詩ではあるのでしょうね……。…
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