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第35話 — 純粋なる悪、ハクバ

松田蓮は、アルテリオン・ドレンを完全に虚ろな目で見つめていた。


ドレンが腕を失った箇所から、強烈な白い光が溢れ出し、傷口を包み込むようにして出血を止めていく。


ドレンは顔を上げた。


— 女神ルミナリア……どうか、さらなる力をお与えください。この冒涜的な存在が、あなたの世界を穢しています。


次の瞬間、蓮の手がドレンの顔から数センチのところに現れた。


ドレンは即座に反応した。


剣を抜き、蓮の腕を斬り払うようにして弾き飛ばす。


俺は片手だけで岩を砕くことができる……


それなのに、こいつを斬れなかった?


すると、蓮は口を開いた。


— ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!


耳をつんざくような咆哮が響き渡った。


蓮の周囲にあるすべてのものが、その声に反応しているかのようだった。


草木は彼から逃げるように大きくしなり、瓦礫が吹き飛ばされる。


まるで空気さえも、蓮の存在そのものによって押し退けられているようだった。


少し離れた場所では、ミコネコがその光景を見つめていた。


— レン……? なんだか、変……


立ち上がろうとした瞬間、強烈な痛みが全身を貫いた。


— ゴホッ……あぐっ!


ミコネコは腹部を押さえる。


その隣で、ガリックが腕を伸ばし、彼女の手を握った。


— 大丈夫か?


— うん……他のみんなと比べれば……ゴホッ……私は大丈夫。


ガリックは再び蓮へと視線を向けた。


— レン……あいつの周囲にあるもの全部が歪んでいる。


ミコネコは歯を食いしばった。


— た、助けないと……。


ガリックは首を横に振る。


— いや……助けが必要なのは、アルテリオン王のほうだ。


二人は戦場を見つめた。


アルテリオン・ドレンが前へと踏み込む。


強烈な動きとともに、蓮へ向かって斬撃を放った。


蓮の姿が、まるで稲妻のようにドレンの目の前から消える。


刃は空を切った。


その一撃によって生じた風圧は凄まじく、何本もの木々が根元から引き抜かれ、遠くへと吹き飛ばされていく。


蓮はジグザグに走りながら、自分へ飛んでくる木々を次々とかわしていく。


そして、凄まじい勢いで地面を蹴り砕いた。


蓮はドレンの目の前で停止する。


その声は金属音のようであり、同時に、人間のものとは思えない何かが混じっていた。


— ようやく……少しだけ制御できる。


ドレンは一瞬、黙り込んだ。


すると、彼の身体が輝き始める。


強烈な光が全身を包み込んだ。


そして、ドレンは笑い始めた。


— ハハハハハ! 天は俺の味方だ!


身体を包むエネルギーがさらに膨れ上がる。


— これほどの力を与えられたのは、初めてだ!


ドレンは剣を掲げた。


— 神聖斬!


一度だけ、剣を縦に振り下ろす。


ドォォォォン!!


目の前にあったすべてが破壊された。


大地が大きく裂ける。


それどころか、頭上の雲までもが、その一撃の力によって真っ二つに割れていった。


ドレンは荒い息を吐く。


— ハァ……ゼェ……ハハ……ゼェ……


そして蓮を見つめた。


— どうやら、お前は不死身ではないようだな、化け物。


ミコネコが目を見開く。


— レェェェェン!


ガリックは地面に落ちていた小さな剣を拾った。


— 俺が行くしかない。


ドレンは蓮を見つめた。


肩からへそにかけて、深い斬り傷が走っている。


それでも、蓮は立ち続けていた。


— それだけの傷だ。痛かっただろう……それなのに、どうしてまだ立っていられる?


蓮はただ咆哮した。


— うわぁぁぁぁ!!


突然、蓮の脚から力が抜けた。


彼は膝をつき、地面を見つめる。


ドレンは剣を掲げた。


— 神の裁き!


再び、空に巨大な光の柱が現れた。


しかし今度は、それが蓮へ向かって真っ直ぐに降り注ぐ。


蓮は顔を上げた。


ドレンは彼を見つめる。


数秒間、完全に動きを止めた。


蓮の顔に浮かんでいた何かが、ドレンを本気で恐怖させた。


— お前は……何なんだ?


ドレンの目が大きく見開かれる。


— その目……


ドレンは唾を飲み込んだ。


— まるで……深淵だ。


蓮の瞳は完全な黒だった。


それは、彼の記憶の中に現れた偽りのミサキの目とよく似ていた。


そして再び、蓮の金属質な声が響く。


「十の型……ハクバ、完全体。」


蓮の身体を中心に、赤い爆発が巻き起こった。


神の裁きの白いエネルギーが、蓮を真正面から直撃する。


ドレンは笑みを浮かべた。


— 今度こそ、底の底まで落ちろ、このクソ野郎――


そこで言葉が止まった。


ドレンの視線が蓮に釘付けになる。


蓮の身体が変化していた。


身体が大きくなっていく。


その姿は、より荒々しく、獣のようなものへと変わっていった。


強烈な赤いオーラが全身を包み込む。


光の奔流はなおも蓮の身体を押し潰そうとしていた。


それでも、蓮は立っていた。


その両目は、二つの漆黒の深淵と化していた。


そして蓮は一度だけ口を開き、その牙で一撃を放った。


シュオオオオオッ!!


その衝撃によって、神の裁きが完全に弾き返された。


同時に、凄まじい圧力の波が周囲のすべてを吹き飛ばした。


— レン!? 待て!


ガリックが叫ぶ。


シュオオオオオッ!!


すべてが空へと吹き飛ばされる。


蓮の周囲に小さな竜巻が発生した。


ガリックはかろうじてその場に踏みとどまる。


アルテリオン・ドレンは遠くへ吹き飛ばされ、そのすぐ近くに叩きつけられた。


胸部は完全に擦り剥かれていた。


それでも、まだ呼吸を続けている。


白い光は依然として彼の身体を包み込んでいた。


— うおおおおおっ!!


ドレンは地面を強く叩いた。


— 俺は……アァッ! お前ら全員を……殺してやる!


ガリックはその光景を呆然と見つめる。


— レンに何が起きたんだ!?


そしてドレンを見る。


— お前が何をした!?


ドレンは苦しそうに呼吸する。


— ゼェ……お前ら……


血を吐き出す。


— ゼェ……お前らは……冒涜そのものだ……


さらに呼吸が荒くなる。


— お前らは……ゼェ……排除される!


そのとき、二人は大きな音を聞いた。


二人が空を見上げる。


馬車がこちらへ向かって飛んできていた。


ガリックはその軌道を目で追う。


— 馬車!?


馬車が激しく落下する。


中にはミレリアがいた。


ガリックは目を見開いた。


— ミレリア!?


馬車が地面へ激突する。


— ミレリア!


ガリックは立ち上がり、ふらつきながら馬車へ駆け寄った。


馬車に到着すると、そこには気を失ったミレリアがいた。


以前固定されていた彼女の腕は、今や骨が露出するほどの開放骨折になっていた。


ガリックは愕然とする。


— くそ……


歯を食いしばる。


— くそっ……くそ、くそ、くそ!


ガリックはミレリアを抱き上げ、ミコネコのいる場所へ戻ろうとする。


そのとき、蓮の姿が目に入った。


彼は完全に別人のような姿になっていた。


その怪物は、血を吐きながら地面に倒れているアルテリオン・ドレンの前に立っていた。


ミコネコはゆっくりと立ち上がる。


声が震えていた。


— レン……?


そして深く息を吸う。


— も、もういい……終わったんだよ。帰ろう。


怪物はゆっくりと頭を動かした。


その声には獣のような響きと、まったく未知の何かが混ざっていた。


— 命令するな。


蓮はミコネコを見る。


彼女は傷ついていた。


片目だけが開いている。


そして蓮は腕を上げた。


たった一度、拳を振るう。


バァァァァン!!


ミコネコは吹き飛ばされた。


ガリックは目を見開く。


腕を伸ばしたままドレンの前に立っている蓮を見つめる。


ミコネコは戦場を飛び、激しく地面を転がった。


ガリックはミレリアを慎重に地面へ寝かせる。


— すまない、ミレリア……


そして蓮へ向かって走り出した。


そのとき、ライセラとライセラは、先ほどの戦闘によって生まれた巨大な穴からようやく這い出してきた。


ライセラは苦しそうに息を吐く。


— ようやく……ゼェ……出られた!


ライセラは歯を食いしばる。


— あのクソ王……殺して――


そこで言葉が止まった。


彼女の目が大きく見開かれる。


— だ、誰……あれ……?


ライセラもそちらを見る。


アルテリオン・ドレンの前に、獣のような怪物が立っていた。


片腕を上げている。


ライセラは完全に困惑する。


— あ、あんなもの……どこから現れたの?


そのとき、二人は小さな剣を手にしたガリックが、その怪物へ向かって走っているのを見た。


— もうやめろ、レェェェン!


ライセラは完全に固まった。


目を大きく見開き、口をわずかに開いたまま、言葉が出てこない。


ライセラが立ち上がる。


— え?


もう一度、怪物を見る。


— レン!?


声が震える。


— あれが……レンなの!?


ガリックはすでに怪物の近くまで来ていた。


彼は短剣を掲げる。


— 穿孔――


ガリックは足をもつれさせた。


— ああっ!


攻撃を最後まで繰り出す前に、地面へ倒れ込む。


蓮はゆっくりと頭を動かした。


その未知の声が響き渡る。


— 次はお前の番だ。


腕をゆっくりと下ろし始める。


— またな……


そして、その目をドレンへ向ける。


— ルミナリアの下僕。


ドレンの目が見開かれる。


— そんな……


突然、アルテリオン・ドレンと松田蓮の間に、極めて強烈な光が現れた。


何かが、蓮の腕をいとも簡単に掴む。


蓮はそれを見る。


— 何だ……?


ドレンは完全に恐怖に包まれていた。


— め、女神……?


強烈な光に包まれた女性が、二人の前に姿を現した。


その姿が徐々にはっきりとしていく。


彼女は、ほとんど神そのものと言ってもいいほどの存在感を放っていた。


ルミナリアはもう一方の手を伸ばし、蓮の胸に触れる。


その声は穏やかだった。


— あなたが……そこにいるのを感じる。


彼女は目を細める。


— マルデク。


蓮の胸が強烈な白い光を放ち始める。


ライセラは理解できないまま、その光景を見つめる。


— な、何をしているの……?


ライセラは目を細める。


— 何かを吸い取っているように見える!


ライセラはルミナリアへ向かって走り出す。


— あなたは誰!?


— 何をしているの!?


ルミナリアはライセラを見る。


そして手を動かした。


二人の周囲に輝く円が現れる。


ライセラはその障壁に激突した。


— 結界!?


ルミナリアは再び蓮へ視線を戻す。


— マルデク……あなたがこの人間にこれを引き起こしたわけではないようね。


再び、蓮の身体の周囲で何かが光る。


ルミナリアは彼の腕を放した。


怪物の姿が消え始める。


蓮の身体がゆっくりと元へ戻っていく。


ガリックは驚愕しながらそれを見つめる。


— レン……?


そしてルミナリアを見る。


— あなたが……レンを元に戻したのか?


ルミナリアはただ、無表情でガリックを見つめた。


それからアルテリオン・ドレンへ振り向く。


彼女が軽く触れるだけで、ドレンの身体が元の状態へ戻り始めた。


ドレンは自分の身体を見る。


失ったはずの腕が戻っている。


傷もすべて消えていた。


— お、俺の腕!?


自分の身体に触れる。


— き、傷まで!?


ドレンはその場に跪いた。


— ありがとうございます、女神様……


頭を下げる。


— ありがとうございます……私は永遠にあなたの下僕となります。


ガリックは呆然とする。


— め、女神……?


ルミナリアを見つめる。


— 本当に……女神なのか?


ルミナリアはドレンの頭に手を置いた。


— 今は休みなさい。私の下僕よ。


次の瞬間、二人の姿が消えた。


その場には何の痕跡も残っていない。


ガリックは周囲を見回す。


— どこへ……ゼェ……どこへ行ったんだ……?


ライセラが蓮のもとへ駆け寄る。


今では彼の身長も元に戻っていた。


身体も、いつもの状態へ戻っている。


白い光がまだゆっくりと皮膚から消えていく。


ライセラは蓮を見つめる。


— 何が起きたの……?


ガリックは蓮を見る。


— レンが……


言葉を詰まらせる。


— あの化け物に変身したんだ。どうしてなのか、俺にもまったく分からない。


ライセラは青ざめていた。


震える声で言う。


— あ、あれが……レンの中に存在しているものなの……?


全員が彼女を見る。


ガリックは数秒間、黙り込んだ。


そして答えた。


— 分からない。


その頃……


ルミナリアは足早に自分の庭へ戻っていた。


片方の手袋を、もう一方の手で握っている。


花々が咲き誇る庭を横切り、いつも執事がいる小さな東屋へ向かう。


彼女を見た執事は微笑んだ。


— お帰りなさいませ、お嬢様。お茶はいかがいたしま――


パァン!


ルミナリアは執事の顔を思い切り平手打ちした。


その衝撃音が響き渡る。


執事は頬に手を当て、彼女を見る。


表情は穏やかなままだったが、その一撃には明らかに苛立っていた。


— 何のつもりだ?


ルミナリアは激怒していた。


— 私たちには約束があったでしょう!


執事はただ答える。


— ふむ。


— あなたは私の世界に干渉しない……


ルミナリアは彼を指差す。


— そして私は、あなたが何をしているのか詮索しない! 覚えているでしょう!?


執事は叩かれた頬を手で撫でる。


— もう一つの約束も覚えている。


冷静な口調で続ける。


— 私はすべてを監視する。君が私のためにある事柄を調べている間、他のダイモンたちから君を隠してもいる。


ルミナリアは歯を食いしばる。


— でも、誰かを誘導する許可なんて与えていない!


再び彼を指差す。


— 誰一人としてよ!


執事は薄く笑った。


その目は完全な黒。


まるで深淵の底のようだった。


— ふっ……


彼は肩をすくめる。


— 分かった。私のミスだ。


ルミナリアは怒ったように鼻を鳴らし、その場を離れた。


そして花々に囲まれた小さな東屋へ行き、腰を下ろす。


腕を組む。


さらに脚を組み、苛立たしげに足を激しく揺らし始めた。


— 誰にも干渉されたくないって言ったのに! 言ったでしょう!


彼女はなおも愚痴をこぼす。


— それなのに、あいつは好き勝手やって……


執事は紅茶を淹れる。


— 文句を言いたいなら、好きなだけ言えばいい。


ルミナリアは数秒間、彼を見つめる。


そして、その黒い目へ視線を向けた。


— どうしてあんなことをしたの?


目を細める。


— どうして私の領域にいる人間を操ったの?


— 何を隠しているの?


執事は紅茶を淹れ終える。


— あの哀れな男……


ティーポットを置く。


— 松田蓮。


執事は彼女を見る。


— 遠くからでも感じ取れた。あの男には助けが必要だった。


— 君が与えようとしなかった助けがね。


ルミナリアは鼻を鳴らす。


— 彼は私の下僕じゃない!


— 彼のために例外を作ることはできなかった。


執事は静かに答える。


— それなのに、ある狂人には絶対的な加護を与えている。


一拍置く。


— 好き勝手に人の命を奪う暴君に……


ルミナリアは眉をひそめる。


— 古代の聖典に定められた規則は絶対よ。私自身がそうした。


— 全員が従わなければならない。


— 例外なんて存在しない。


執事はわずかに首を傾ける。


— つまり、紙の上で規則に従ってさえいればいいと?


ルミナリアは彼を睨む。


— もう一度殴られたい?


執事は数秒間、沈黙した。


そしてため息をつく。


— ああ……


彼女を見る。


— 君には、もっといろいろなことができるというのに……


その表情が少しだけ物悲しいものになる。


— それでも、君はそこに縛られ続けることを選ぶんだな。


ルミナリアは紅茶を一口飲む。


— 私はここが好きなの。


執事は眉を上げる。


— ここがそんなに好きだから、他の世界の物までここへ持ち込んでいる。


薄く笑う。


— まったく独創性がないと思わないか?


ルミナリアは肩をすくめる。


— だから何?


— 私は、誰にも気づかれないものを動かしているだけよ。


執事は答える。


— その多くは……


一拍置く。


— あの惑星から持ってきたものだろう。


ルミナリアは彼を見る。


— 地球?


— ああ……そうだ。


彼女は首を傾げる。


— でも、どうして? あなたは地球が嫌いなの?


執事は沈黙した。


ルミナリアは親指の爪を口元に当てる。


そして何かを思い出したような顔をした。


— そういえば、地球で思い出したけど……


彼女の表情が真剣になる。


— あの男の中に、マルデクを感じた。


執事はわずかに目を細める。


— ふむ。


ルミナリアは続ける。


— 変よ。


数秒間考える。


— だって……あいつは何百万年もの間、あの小惑星群を彷徨っているはずなのに……


突然、彼女の目が見開かれる。


ルミナリアは立ち上がった。


そして執事を真っ直ぐ見つめる。


— あなた、わざとやったわね……ノクティレン。


ノクティレンは背を向けたままだった。


その顔に、物悲しい笑みが浮かぶ。


— 何のことを言っているのか分からないな。


彼は静かに答える。


— 私も、マルデクが地球の人間の中にいると知ったときは驚いたよ。


ルミナリアは歯を食いしばる。


— とぼけないで。


彼女は彼を指差す。


— あなたは私が介入することを知っていた。


— 私があの男と接触するよう仕向けたのも、マルデクを感じ取らせるためでしょう。


目を細める。


— これで、あいつは私がここにいることまで知った。


ルミナリアはノクティレンをしばらく見つめた。


— あなたはあの男の精神の中にいた……マルデクの存在を感じなかったの?


ノクティレンは沈黙した。


ルミナリアは疑うように目を細める。


— 本当に……感じなかったの?


数秒後、ノクティレンはようやく答えた。


— ああ。あの太陽系から来るものは、何も感じ取れない。


短く間を置く。


— なぜなのかは分からない。


ノクティレンは背を向けたままだった。


— ただ、あの男が何かを抱えているような、かすかな感覚だけはあった。


彼は少しだけ顔を横へ向ける。


— だが、確認してくれてありがとう。


ルミナリアはしばらく黙っていた。


そして言う。


— そして、遅かれ早かれ……これは地球にまで届く。


ノクティレンは即座に答えた。


— その通りだ。


ルミナリアは眉をひそめる。


— どうして、そこまであの惑星に執着するの?


— 地球のダイモンが、評議会から自分自身を遮断する許可を得たことは、もう話したでしょう。


— 誰も彼にも、彼の惑星にも接続できない。


ノクティレンは背を向けたまま続ける。


— それなのに君は、そこから物を持ち帰り続けている。


一拍置く。


— そして、あのダイモン……


— ライサ。


ルミナリアが答える。


— 彼女については、私がそうできる唯一の存在だって言ったでしょう。


— それに、私はライサと連絡を取ることすらできない。


彼女は歯を食いしばる。


— 評議会はおそらく、自分たちに同調しない者たちに対して何かを企んでいる。


ノクティレンが振り返る。


その顔つきが変わっていた。


声が歪み、まるで怪物のようになる。


— 俺が知らないとでも思っているのか!?


ルミナリアは真剣な表情で彼を見る。


— 怖いの?


数秒間、ノクティレンは動かなかった。


そして、いつもの態度へ戻る。


— 怖い?


小さく笑う。


— いや。


視線を遠くへ向ける。


— ただ、どうして彼がそれをすることを許されたのか……それを知りたいだけだ。


ノクティレンは空を見上げる。


— あの小さな青い惑星……原始的な生物たちが暮らす、あの星……


目を細める。


— 評議会があんなことを許すなんて、どう考えてもおかしい。


ノクティレンは一度言葉を止めた。


— もし……


ルミナリアが尋ねる。


— もし……何?


ノクティレンは真剣な表情のまま黙り込む。


— ……


その目が、暗く沈んだ。


— 何か、現実離れしたことが起ころうとしているのなら……

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