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第28話――予言者オーレリア

ゴロは、約一時間ほど一行の先頭を走り続けていた。


そしてようやく、山頂が見えてきた。


「もうすぐだ。あの頂上まで行けば、ここからゼラティスの街が見える」


レンはゴロのすぐ後ろを走っていた。


「急がないと。ミレリヤを連れ去った奴らが、何をしようとしているのか確かめないと」


ガリックもまた、珍しく険しい表情を浮かべながら黙々と走っていた。


一方、リセラは遠くに見え始めた巨大な街を見つめた。


「あ、あの街が本都市なの?」


ゴロは小さく笑った。


「なんだ? 街が大きかったら何か問題でもあるのか? へへ」


レンも街を見つめ、目を見開いた。


「うわ……大きいな」


ライセラもゼラティスを見つめ、驚いたような表情を浮かべる。


「私、ここに来たことない……お城は国境の近くにあるのに」


しかし、ガリックは景色を楽しんでいる余裕などなかった。


頂上に到着すると、すぐに斜面を駆け下り始める。


レンもその後を追った。


「おい! 気をつけろ!」


ガリックは速度を落とさない。


「急がなければならない。ゴロ、あの予言者はどこにいる? それに、どうやってミレリヤを探すつもりなんだ?」


ゴロは数秒間、顎に手を当てた。


「急いでいるのは分かっている。だが、お前はまるで生死に関わる問題みたいな扱いをしているな……」


レンはガリックについて走りながら、ようやく口を開いた。


「ガリック、どうしてそんなに焦ってるんだ? ミレリヤは……そんなに危険な状況なのか?」


ガリックは歯を食いしばった。


それでも足を止めない。


その緊張に気づいたリセラが声をかける。


「ガリック、何か知っているなら話して。何もかもおかしいよ」


ガリックは俯いた。


「……ごめん、ミレリヤ」


全員が困惑し、数秒間ガリックを見つめた。


そして、ついにガリックは真実を口にした。


「ミレリヤは……俺たちが暮らしていた村から連れ去られた後、アルテリオン王国の宮廷で、高位魔術師になるための訓練を受けていたんだ」


全員が沈黙した。


目を大きく見開いている。


しかし、レンは眉をひそめた。


「ああ、焼かれた村の話なら覚えてる。でも、それがどうしたんだよ?」


ゴロが答える。


「アルテリオン王国には、脱走者に対する厳しい処罰があると聞いている。宮廷魔術師は誰一人として、そこから出ることを許されていないんだろ?」


ガリックは少し躊躇した。


「……ああ。その通りだ」


レンもようやく理解し始めた。


「待て……じゃあ、ミレリヤはそこから逃げたのか? でも、さっき現れた二人って、獅子のギルドでもかなり優秀な冒険者じゃなかったのか? どうしてあいつらがミレリヤを連れて行ったんだ?」


ガリックは目を細めた。


「アルテリオン王が、いくつかのギルドにスパイを送り込んでいたとしても、俺は驚かない」


リセラが口を挟む。


「エルフたちとの争いが始まったのも、アルテリオン・ドレン王の治世だったと聞いたことがある」


ゴロが頷く。


「その通りだ」


ガリックは続けた。


「俺が知っているのは、脱走者に対する処罰が死刑だということだけだ。それも……公開処刑だ」


レンは深く息を吐いた。


「でも……ミレリヤなら、そんなことにはさせないだろ」


ガリックは首を横に振る。


「宮廷の中には、国でも最強クラスの連中がいる。ミレリヤ一人では、あいつらを相手にするのは無理だ」


全員がしばらく黙り込んだ。


ゴロはガリックを注意深く見つめる。


「お前……宮廷について随分詳しいな」


ガリックは答えた。


「ミレリヤがいなくなった後、俺は強くなろうと必死に訓練した。俺には本気で戦えない理由がいくつかある。それに……俺の剣もなくなったしな……」


全員が黙ってガリックを見つめる。


ガリックはそのまま、自分の過去を語り始めた。


「十分な強さを手に入れた後、数か月ほど冒険者をやっていた。そこでアルテリオン・ドレンと繋がりのある人物と知り合ったんだ。そいつの依頼をいくつかこなして……しばらくして、宮廷の兵士の一人になった」


彼は一度言葉を止めた。


「そして……そこでミレリヤを見つけたんだ。あれだけ長い時間が経った後にな」


レンは数秒間、ガリックを見つめた。


「ってことは……かなり長い時間が経ってたんだな」


ガリックはため息を吐いた。


「何年経ったのかすら、もう覚えていない……でも、ああ。かなりの時間が経っていた」


リセラが少し首を傾げる。


「それで、再会した後は……そのまま二人で逃げたの?」


ガリックは小さく笑った。


「そんな簡単な話じゃない。数週間の間、ミレリヤは俺のことを知らないふりをしていた」


レンは目を見開いた。


「えっ? あいつ、そんなことしたのか?」


「俺も焦った。でも、その後、ミレリヤがこっそり俺に話しかけてきた。そこで聞いたんだ。宮廷では、男と女が接触すること自体が厳しく制限されているって」


ガリックは少し間を置いて付け加えた。


「……王を除いてな」


ゴロが片眉を上げる。


「ほう……」


全員が意味が分からず、ゴロを見る。


ゴロは走りながら、肩越しに後ろを振り返って考え込んでいた。


「なるほどな……お前がそんなに急いでいる理由が分かったぞ、ガリック!」


ガリックは困惑した。


「俺が急いでいる理由?」


ゴロは意味深な笑みを浮かべる。


「いや、なんでもない」


ガリックはため息を吐き、話を続けた。


「再会してから一年が経った。その間に、俺たちは七、八回くらいしか話せなかった」


その表情がさらに険しくなる。


「本当に危険だった。誰かに俺たちが会っていることを知られたら、二人ともただでは済まなかった」


全員が真剣に話を聞いていた。


「そしてある日、俺が宮廷の外で警備をしていた時……」


ガリックは一度言葉を止める。


「ミレリヤが、俺の勤務中に窓から飛び降りてきたんだ」


レンは目を見開いた。


「窓から飛び降りたのかよ!?」


ガリックは頷いた。


「ああ。ミレリヤはそのまま俺のところまで走ってきて、俺の手を掴んだ。そして……逃げよう、と言った」


彼は一瞬、俯いた。


まるで、今でもその光景が目の前にあるかのように。


「ミレリヤには計画があった」


声が少し低くなる。


「この世界を変えるつもりだった……そして、アルテリオン・ドレンの支配を終わらせるつもりだった」


ガリックの笑顔が消えた。


「……あいつは泣いていた」


その場に静寂が訪れた。


誰も何も言えなかった。


ガリックは深く息を吸い、話を続ける。


「それから数日間、二人で逃げ続けた後……」


彼はレンを見つめた。


「ミレリヤは……お前を召喚した」


ほんの少しの間。


「……レン」


リセラは目を見開いた。


「ガリック……じゃあ、あなたも――」


ガリックは彼女の言葉を遮った。


「俺は重要じゃない。でも……ミレリヤは違う」


誰かが言葉を返す前に、ゴロが前方を指差した。


「もうすぐ街だ」


ゴロは二本の指を口に当てる。


そして、魔法で音を増幅させながら大きく口笛を吹いた。


しばらくすると、暗い肌をしたリザードマンが剣を携えて彼らの前に現れた。


「ゴロ様、お待ちしておりました」


ゴロは笑った。


「久しぶりだな。だが、予言者からの伝言はちゃんと果たしてきたぞ」


リザードマンは一行を見る。


「では、この方々が救世主たちですか? ……おや? 待ってください。この女性……魔族の一族では?」


ライセラは目を見開いた。


ゴロはすぐに手を上げる。


「落ち着け、ブキ。彼女は味方だ。俺が直接確認した」


ブキは気まずそうな顔をした。


「ああっ! 申し訳ありません! 救世主の皆様、ありがとうございます――」


ゴロが遮る。


「今はいい、ブキ。他の指導者たちと話さなければならない。急いでいるんだ!」


「……あ、はい。こちらへどうぞ。ただし、迷子にならないように気をつけてください」


ゴロは頷いた。


「彼らは集合場所にいるのか?」


「はい、ゴロ様」


ブキは一行を街の中へ案内し始めた。


数分ほど走ったところで、ブキが注意する。


「迷子にならないようにしてください。今日は大通りがかなり混雑しています」


レンは周囲を見回し、感心した。


「リセラ……本当にいろんな種族がいるな。今まで行った街よりずっと多い。普通ならゲームの中でしか見ないような光景だ」


リセラは小さく笑う。


「またゲームの話……。いつか本当にあなたの世界を見てみたいな」


レンは小さく笑った。


「まあ……できるなら、だけどな。へへ」


すぐ後ろを走っていたライセラが首を傾げる。


「な、何の話をしてるの?」


レンが振り返る。


「ああ、それは――」


ドンッ!


ガリックが一人の少女にぶつかった。


「すまない、お嬢さん……あ」


少女は一歩後ろへ下がった。


尖った耳と金色の髪。


「だ、大丈夫です。そんなに強くぶつかってないから」


ガリックは冷や汗を流しながら少女を見る。


「あ……それじゃ……さようなら。き、気をつけてな」


少女は髪の一房を指に絡めながら微笑んだ。


「うん、へへ。あなた、礼儀正しいんだね」


ガリックは顔を真っ赤にし、慌てて振り返ると、そのまま走り続けた。


レンは目を見開いた。


「リセラ! さっきガリックがぶつかった女の子……あのエルフ!」


リセラは後ろを振り返る。


「私もそう思った。前の街で私たちに情報を教えてくれたエルフと同じみたい」


二人は遠ざかっていくエルフを見つめた。


ライセラが尋ねる。


「あなたたち、あの子を知ってるの?」


レンが答える。


「俺たちがレンの毒の解毒剤を置いていた診療所の住所を教えてくれたんだ」


ライセラは考え込む。


「うーん……ここまで来てもエルフを見かけるのは珍しいね。それに、あの服装を見る限り……奴隷にも見えなかった」


レンは眉をひそめる。


「ど、奴隷がいるのか?」


リセラがレンを見る。


「いるよ。多くはないけど、存在してる。どうして?」


「いや……俺の世界では――」


ブキが会話を遮った。


「こちらです! 到着しました。私はここまでです。救世主の皆様、良い一日を!」


ゴロは頷いた。


「分かった。ありがとう、ブキ。みんな、行くぞ」


レンは息を整えながらゴロを見る。


「待って……本当にミレリヤの居場所を探す方法があるのか?」


ゴロは頷いた。


「ああ。だが、そのためには他の指導者たちに相談して、空間魔法へのアクセスを許可してもらう必要がある」


そう言って、ポケットから何かを取り出した。


小さなハンカチだった。


「誘拐される数分前に、彼女からこれを取った」


レンは驚いた。


「誰にも気づかれずに取ったのか?」


ゴロは小さく笑う。


「ギリギリだった。素早く取って、注意を引かないようにしたんだ。あの吸血鬼が現れてから……何か悪いことが起こるような気がしていた」


ゴロはブキの方を見る。


「ブキ、予言者はここにいるか?」


ブキは驚いた。


「予言者? オーレリア様ですか?」


ゴロは頷く。


「そうだ。魔法の準備をしている間、レンに彼女の話を聞かせたい」


「ああ、分かりました」ブキは答えた。「彼女ならここにいます。ただ……機嫌が悪いですよ」


ゴロはため息を吐いた。


「すぐに機嫌も直るさ」


レンはゴロを見つめながら、まだ状況を理解しきれていなかった。


そういえば……あの予言者のこと、すっかり忘れてたな……


もしミレリヤを見つける助けになるのなら、文句を言っている暇はない。


一行は小さな砦へ入っていった。


その内部では、魔法のアーティファクトを装備した数人の兵士が警備していた。


ゴロはその一人に近づく。


「扉を開けてくれ」


兵士は姿勢を正した。


「申し訳ありません。中へ入れるのはゴロ様だけです」


ゴロは一行を指差した。


「こいつらは救世主だ。入れてくれ」


兵士は一行を慎重に観察する。


「失礼ですが、ゴロ様。この方々はどう見ても――」


砦の中から声が響いた。


「そこをどけ! 彼らを中へ入れろ!」


兵士が振り返る。


「し、しかし……」


王冠をかぶったリザードマンが近づいてきた。


「そこをどけ」


「……承知しました」


扉が開かれる。


ゴロとリザードマンは向かい合った。


ゴロが笑う。


「久しぶりだな、ヴォラック・ヴェルコル!」


ヴォラックは満面の笑みを浮かべた。


「ゴロ! ああ……会いたかったぞ!」


二人は抱き合った。


ライセラはその光景を見ながら呟く。


「ああ……彼もここの王様なのかな」


レンはヴォラックを見つめた。


「想像してたのとは違うな」


するとヴォラックは王冠を外した。


その王冠は小さな袋の中にしまわれていた。


そして、それをゴロに渡す。


「ついに! 五人が戻ってきたぞ!」


ガリックは驚いた。


「冗談じゃなかったのか……本当にここも彼が治めているんだな」


ヴォラックは一行へ視線を向ける。


「この集団は……実に奇妙だな。あの少女は魔族の国の者か?」


ゴロが答える。


「まずは中へ入ろう、ヴォラック。事情を説明する。それと、心配するな。全員味方だ! それにレンは予言者と話す必要がある!」


ヴォラックは少し考えた。


「お前がそう言うなら構わん。予言者はここにいる。機嫌は悪いがな。だが……この人数を見たら、ドラカリとフェンルは気に入らないだろう」


「まあ、説得してみるさ」


ガリックが近づいた。


「頼む……俺たちの仲間が死ぬかもしれないんだ……」


ヴォラックは手を上げた。


「分かった。まずは中へ入ろう。ただ先に言っておく。お前たちが求める助けによっては、望んでいるものを手に入れられないかもしれないぞ」


ゴロは笑った。


「とにかく、やってみよう!」


ヴォラックは小さく笑う。


「希望を持つのはいいことだ、友よ。へへ。さあ、中へ入ろう」


廊下の奥から、灰色の髪をした一人の女性が現れた。


彼女は灰色の服を着ており、その片脚が露出している。


太腿には、ポータルを思わせる小さな紋様のタトゥーがあった。


顔にはわずかな皺が刻まれている。


そして、濃いアイラインが彼女の目と睫毛を強調していた。


彼女は広間へ入ると、まっすぐレンを見た。


全員が気づいた。


オーレリアは遠くからレンを見つけると、目を大きく見開いた。


そして、レンへ向かって歩き始めた。


一歩。


また一歩。


最初は普通に歩いていた。


しかし、距離が縮まるにつれて、その歩みはどんどん速くなっていく。


ガリックは困惑しながらその様子を見た。


「だ、誰だあの女? それに、なんであんなに急いでこっちへ来てるんだ?」


ゴロは平然と答える。


「ああ、あれが予言者だ。オーレリア」


レンも少し目を見開く。


「この人が……予言者?」


オーレリアはついにレンの目の前までやって来た。


そして、何も言わずにレンの両手を握った。


目を大きく見開いたまま。


「あなた!」


レンは固まった。


「あなた!」


レンは困惑し、ライセラを見る。


「あなた!」


ライセラはオーレリアの手をそっとレンから離した。


「はい、はい……。あなたが予言者なんでしょ? レンに何の用なの?」


オーレリアはゆっくりとライセラへ顔を向ける。


そして、再び目を大きく見開いた。


「あなた!」


ライセラは数秒間、黙り込んだ。


そしてリセラを見る。


「……このおばあさん、頭おかしいの?」


リセラは腕を組む。


「壊れたレコードみたい」


ゴロがすぐに割って入った。


「おい! 予言者オーレリア様に失礼だぞ!」


そして軽く頭を下げる。


「悪かったな、オーレリア。こいつらの無礼は謝る」


しかし、オーレリアは答えなかった。


彼女はリセラをじっと見つめていた。


数秒後、その視線が完全に変わった。


先ほどまでの奇妙な表情が消える。


顔が真剣になった。


リセラは居心地が悪そうにする。


「な、何? 何か問題でもあるの?」


オーレリアは彼女を見つめ続けた。


そして、ようやく我に返ったように深く息を吐いた。


「ずっと……あなたたちに会うのを待っていた」


ゴロは眉をひそめた。


「あなたたち……? 勇者だけじゃなかったのか?」


全員がゴロを見る。


オーレリアは落ち着いた声で答えた。


「もしもう一人が魔族の国にいると言っていたら、あなたはあの依頼を引き受けなかったでしょう?」


ゴロの額に青筋が浮かんだ。


「俺を利用したのか!?」


拳を握りしめる。


「こ、この……!」


しかし、ゴロは深呼吸して諦めた。


「ああ、もういい。お前がこういう奴だったのを忘れていた」


オーレリアは小さく笑った。


「私が予見した出会いとは、少し違っていた。どうやら、いくつかの出来事が変わったようね」


彼女はレンとライセラを見る。


「でも、あなたたち二人には……とても重要な話がある」


歩き出そうとした、その時。


オーレリアはガリックを見た。


「あなたにも一つ、助言しておきましょう」


ガリックは自分を指差した。


「俺に?」


「衝動を抑えることね」


ガリックは意味が分からず、彼女を見つめた。


衝動……?


オーレリアは振り返る。


「私の部屋まで来なさい」


ゴロは頷いた。


「俺は他の指導者たちと空間魔法の準備を進めてくる。終わったら、オーレリア。勇者を指導者たちの広間まで連れてきてくれ」


「ああ、もちろん」


オーレリアは笑った。


「あの二人の頑固者を説得するには、勇者を見せる必要がありそうね」


そして歩き始める。


「ふふ……。さあ、急ぎましょう」


レンとライセラはオーレリアについて廊下を進み、やがて暗い部屋へ入った。


オーレリアはソファを指差す。


「座りなさい」


レンとライセラは隣り合って座った。


オーレリアは二人の向かい側にある椅子へ腰を下ろす。


数秒間、彼女はただ二人を黙って見つめていた。


そして尋ねる。


「あなたたち二人……カエルタルに、もう婚約者だと名乗ったの? それともまだ?」


レンとライセラは眉をひそめた。


ライセラが答える。


「も、もう言ったけど……どうして知ってるの?」


オーレリアは微笑んだ。


「見たのよ、可愛い子」


そして片手に頬を乗せる。


「あなたたち二人が協力して、この世界に平和をもたらそうとしているところもね」


笑みが少し薄くなる。


「……少なくとも、そうなる可能性は見えたわ」


レンは眉を上げた。


「どういう意味だ?」


オーレリアは数秒間、レンを見つめる。


そして、ため息を吐いた。


「あなた……マツダ・レン」


少し間を置く。


「今、何を夢見ているの?」


レンは数秒間黙った。


そして答える。


「えっと……時々、妹の声が聞こえる気がするんだ」


少し俯く。


「トウカの声が」


ライセラはすぐにレンを見る。


妹……?


オーレリアは数秒間黙っていた。


「……なるほど」


そして再びレンを見つめる。


「マツダ・レン。あなたの旅は、この世界では終わらない」


一度言葉を切る。


「これから先、あなたの道には多くの重要な人々が現れる。ここでも、地球でも。彼らから学べることは、すべて学びなさい」


レンは口を少し開いた。


数秒後、ようやく答える。


「ち、地球……?」


オーレリアは肩をすくめた。


「まあ……何度も見た未来では、そうだったわ。でも別の未来では、あなたはこの世界で命を落としている」


彼女は小さく笑った。


「でも私は楽観主義者なの。知ってるでしょ?」


レンは突然立ち上がり、拳を握りしめた。


「ふざけんな! 何を言ってるんだよ!!」


ライセラはその反応に驚いた。


しかし、オーレリアはただレンを見つめている。


レンは息を荒くする。


「俺は死んだんだ! そんなことを言うな! 俺が馬鹿だと思ってるのか!?」


ライセラはすぐにレンの腕を掴んだ。


「お、落ち着いて、レン……落ち着いて」


オーレリアはため息を吐く。


「そういう反応をすると思っていたわ。予想以上だったけどね」


レンは彼女を睨む。


「予想してた? まさか……それも見たっていうのか?」


オーレリアは一瞬、目を閉じた。


「レン……時間というものは固定されたものではない。そして、空間は私たちの目に見えるものだけで構成されているわけでもない」


ライセラが眉をひそめる。


「何それ? あなたもそこまで分かってるの? 他に何を知ってるの?」


オーレリアはライセラを見る。


「あなたも、マツダ・レンと同じ条件を持っている」


ライセラは困惑する。


「同じ条件……?」


「違うのは、マツダ・レンは自分が何者だったのかを覚えていること。そして……とてつもなく強大な乗客を、その身に抱えていることね」


レンとライセラは互いの顔を見た。


完全に驚いている。


最初に口を開いたのはレンだった。


「カ、カエルタル……魔族の国の王も、似たようなことを言ってた……」


そして再びオーレリアを見る。


「お前たちは、俺が知らない何を知ってるんだ? 俺の中には何がいる?」


オーレリアはゆっくり立ち上がった。


「レン。あなたに必要なことは、もう話したでしょう」


彼女は少し間を置く。


「これからあなたの前に現れる重要な人々から、できるだけ多くを学びなさい」


そして再び言葉を続ける。


「それから……地球についてだけど」


オーレリアの表情が真剣になる。


「それについては、もっと重要な人物があなたに話すことになるでしょう」


「どういう意味だよ!?」


オーレリアはライセラへ視線を向ける。


「うまくいけば、あなたは自分が来た場所へ帰ることになるでしょう」


ライセラは眉をひそめる。


「私が……来た場所?」


オーレリアは続けた。


「ルメリオンでは、あなたはカエル・ヒョレンを助けなければならない」


レンは完全に固まった。


「……カエル・ヒョレン?」


「お前、答えてないだろ!!」


ライセラは左右を見回し、何を言えばいいのか分からない様子だった。


「カ、カエル・ヒョレン……? 私には分からない……ルメリオン?」


オーレリアは落ち着いたままだった。


「私の伝えるべきことは伝えた。これ以上は言えない」


少し間を置く。


「それを話せば……あなたたちが死ぬ可能性があるから」


そして付け加える。


「まあ……それでも、そうなる可能性は残っているけどね」


レンは歯を食いしばった。


「お前は全部話せ!」


レンは前へ踏み込み、オーレリアの首元近くの服を掴んだ。


「地球に何があるんだ!? 妹の声と何か関係があるのか!?」


さらに服を強く握る。


「言え!!」


しかし、オーレリアは怯えなかった。


ただ、レンの目を深く見つめている。


そして言った。


「……一人の特別な少女を、あなたが鍛えてあげるといいでしょう」


レンは黙った。


オーレリアは続ける。


「もちろん……すべてがうまくいけば、だけどね」


レンは困惑したまま彼女を見つめる。


まだ服を掴んでいる。


しかし、もう何を聞けばいいのか分からなくなっていた。


ライセラが近づく。


「レン、彼女を離して」


レンは答えない。


ライセラは続けた。


「この人……頭がおかしいように見えるけど、言ってることの一部には筋が通ってる」


レンはライセラを見る。


「俺には全然そう思えない。どう考えても、ただの狂った婆さんにしか見えない!」


オーレリアは小さく笑った。


「あなたたちには、助けなければならない人がいるんでしょう?」


レンは黙った。


「それとも、ここで私と話し続ける?」


オーレリアは服を整える。


「私はもう、必要なことはすべて話したわ」


ライセラはようやく気づいた。


「ミレリヤ……」


そしてレンの腕を掴む。


「行こう、レン!」


レンは少し俯いたまま、まだオーレリアの服を掴んでいた。


「お前……」


顔を上げ、彼女を睨む。


「俺はまたお前と話す。覚えておけ」


オーレリアは微笑んだ。


「それは……難しいでしょうね」


レンは眉をひそめた。


「何?」


オーレリアは笑顔のまま答えた。


「次にあなたたちが私を見る時……私はおそらく、死んでいるから」


レンの顔が真っ青になる。


「え……?」


オーレリアは二人に軽く手を振った。


「でも……良い旅を」


レンは苦しそうな顔で彼女を見つめる。


「な、なんなんだよ……あの女……」


ライセラはレンの腕を引っ張った。


「行こう、レン」


そして、オーレリアを見る。


「ありがとう、予言者」


二人が扉の近くまで行った時、オーレリアが最後に声をかけた。


「忘れないで……」


レンとライセラは足を止めた。


オーレリアは続ける。


「時間というものは、固定されたものではない」


彼女は微笑んだ。


「時間は……とても自由に形を変えるものよ」


その目が神秘的な光を帯びる。


「それを、いつも覚えておきなさい。そして、私が話したことは誰にも話さないこと」


少し間を置く。


「あなたたちの身近な人間の中にも……あなたたちを騙そうとする者が現れるかもしれないから」


レンとライセラは、そのまま部屋を出ていった。


部屋から離れると、レンは長いため息を吐いた。


「……ありがとう、ライセラ」


そして彼女を見る。


「もしお前がいなかったら……」


ライセラは小さく笑った。


「レン、あの人の言っていることが全部本当なのか、私にも分からないよ」


彼女は歩き続ける。


「でも、まずは今できることに集中しよう。そうでしょう?」


レンは数秒間黙った。


そして笑った。


「そうだな……」


その瞬間、目を見開く。


「ミレリヤ!」


レンは廊下を走り始めた。


「彼女を見つけるぞ!」


ライセラは静かにレンの後ろへ近づく。


そして耳元で囁いた。


「これだけ色々あったけど……実験の続きをしたい。いい? レン。今度はあなたについて、お父様と予言者が何を言っていたのか気になってきたの!」


「うん、うん。いいよ。それはミレリヤを助けてからにしよう。な?」


ライセラは笑顔になった。


「うん!」


そして、レンを後ろから抱きしめた。


「ああっ、ライセラ……」


すぐに彼女はレンを離した。


「あっ、ごめん……へへ」


頭を掻きながら、レンは心の中で考える。


彼女が何者であれ……可愛いよな。もしかしたら……ミサキよりも……


レンは一瞬、目を閉じた。


……こんな話を聞いた直後に、俺は何を考えてるんだ……


二人の様子を見ていたリセラは、拳を強く握った。


何なの、あの二人……? もしかして……ライセラ、本当にレンのことが好きなの?


ガリックが最初に沈黙を破った。


「それで? あの予言者は何を言ってたんだ?」


レンとライセラは一瞬だけ顔を見合わせる。


「誰にも話すなって言われた」とレンが答えた。


ライセラも頷く。


「うん。私たちの身近な人間の中にも、私たちを邪魔しようとする人が現れるかもしれないって」


ガリックは眉をひそめる。


「え? でも俺たちは仲間だろ?」


レンは頭を掻きながら、少し気まずそうに答える。


「分かってる。でも、まだ誰を信用していいのか分からない。外から来た誰かが偶然俺たちと関わることだってあるかもしれないし……。おかしな話に聞こえるのは分かってる。でも、予言者がそう言ったんだ」


リセラは黙ったまま、三人を見つめていた。


ライセラが彼女を見る。


「悪く思わないでね?」


リセラはようやく口を開いた。


「その子が現れたばかりなのに、もうレンと二人だけの秘密を持ってる。それって変じゃない?」


ライセラは眉をひそめる。


「何が言いたいの?」


「見たままのことを言ってるだけ」


「これは予言者が言ったことよ。私じゃない」


レンはリセラを見る。


「リセラ……不公平に感じるのは分かる。でも、俺はあの予言者の言葉に従う」


リセラはため息を吐き、視線を逸らした。


「ちっ……友達にも話せないの?」


ガリックは二人の間に流れる緊張を察し、割って入った。


「まあ、リセラ。俺もこのやり方は気に入らない。でも、二人の決断を尊重しよう」


リセラは数秒間黙った。


そして顔を背ける。


「……分かった」


レンはゴロを見る。


「そういえば、お前、俺たちのために魔法を急がせるんじゃなかったのか?」


ゴロは肩をすくめた。


「お前を待つことにした。俺が長時間、自分の持ち場を離れて空手で戻ったように見えたら……他の指導者たちも気分が悪いだろうからな」


全員は再び指導者たちの広間へ向かって歩き始めた。


その少し後ろをガリックが歩いていた。


待ってろ、ミレリヤ……。もうすぐ行く。お前を死なせたりなんかしない……


突然、ガリックが短く膝をついた。


全員が振り返る。


「ガリック!?」レンが叫んだ。


ガリックはすぐに立ち上がる。


「悪い。何でもない……ちょっと力が抜けただけだ」


ゴロが眉をひそめる。


「まだ毒の残滓が体内に残っている。あと二日もすれば完全に抜けるだろう」


ガリックは歯を食いしばった。


「二日も待てない……。一刻も早く行く必要がある!」


ヴォラックが前方を指差した。


「ほら、もうすぐだ。指導者たちの広間に着くぞ」


数分後。


一行はついに広間へ到着した。


そこには三つの椅子があり、それぞれに誰かが座っていた。


ヴォラックは両手を広げる。


「見ろ! ゴロが戻ってきたぞ!」


すると、猫の耳と尻尾を持つ女性だけが立ち上がり、拍手を始めた。


パチパチパチ!


「ああっ、ゴロ! 久しぶり!」


彼女はゴロのところまで走ってきて、そのまま抱きついた。


「あなたったら、またこんな任務に出てたのね!」


ゴロは笑う。


「ああ、悪かったな、ミコネコ。こんなに長く留守にして」


そして残り二人の指導者を見る。


「フェンルとドラカリはどうしてる?」


腕を組んで座っていた竜人のドラカリが答えた。


「ああ……ようやく仕事をする気になったのか?」


獣人のフェンルも続ける。


「指導者ってのは楽でいいよな! 自分の仕事を放り出して、外で好き勝手できるんだから!」


ゴロはため息を吐いた。


「やっぱりそういう反応か……。だが、見てくれ。俺は……救世主たちを連れてきた!」


ミコネコは目を見開き、頭から王冠を落とした。


「あっ、しまった」


慌てて王冠を拾う。


「こ、この人たちが……大予言者が予言した救世主なの?」


ヴォラックは腕を組む。


「俺もまだ信じてはいない。だが、ゴロがそう言うなら、少なくとも信じる価値はあるだろう」


フェンルは鼻で笑った。


「はっ! どうせゴロがそこら辺で見つけた馬鹿な連中を連れてきて、救世主だなんて嘘をついてるだけだろ!」


ドラカリは黙ったまま、一行を観察していた。


一人ずつ視線を移していく。


そして、ライセラのところで視線が止まった。


彼は彼女の角をじっと見つめる。


ゴロとフェンルが言い争っている間も、ドラカリはライセラから目を離さなかった。


ガリックはレンの腕に触れる。


「おい……あいつ、お前を見てる……いや、ライセラを見てるみたいだぞ」


レンは竜人の男を見る。


そして、ごくりと唾を飲み込んだ。


頼むから……俺たちを攻撃したりしないでくれよ……


ライセラもドラカリの視線に気づいた。


な、なんでずっとこっちを見てるの……? 嫌な予感が――


ライセラが瞬きをした。


次の瞬間。


ドラカリの爪が彼女の顔へ向かって伸びてきた。


紫の炎! 間に合わない!


ライセラの体に小さな黒い炎が生まれ始める。


ああっ、まずい!


ドォンッ!!


ドラカリの顔面に拳が叩き込まれた。


レンだった。


拳の周囲の空気が歪み、膨張する。


激しい衝撃波が発生し、ドラカリの身体が部屋の反対側まで吹き飛ばされた。


ドラカリは両足で着地した。


ゴロは目を見開く。


「おい、ドラカリ! 何してるんだ!」


ドラカリは自分の頬に触れ、信じられないような顔をした。


「な……なんだと!? 人間がどうやってこんな力を!? それに、なぜここに魔族の女がいる!? 奴らは敵だろう!」


フェンルはゆっくりと椅子から立ち上がった。


「ドラカリが吹き飛ばされるところなんて……本当に久しぶりに見たな。こいつらを少し信用してもいいかもしれない」


ライセラはレンを見る。


「レ、レン……ありがとう」


レンは真剣な表情を浮かべる。


「誰かが俺の仲間に手を出すなら……誰だろうとぶっ飛ばす。覚えておけ!」


全員が数秒間、沈黙した。


すると突然、ミコネコがレンの隣に現れた。


「ふーん……あなた、面白い人間ね。魔力を感じない……それに、空気中の魔法も感じない。どうやって今の攻撃をしたの?」


彼女はさらに近づき、レンの腕に体を擦りつけた。


レンは完全に困惑する。


「す、すみません……ちょっと離れてください」


ライセラとリセラが同時にレンを引っ張った。


「離れて!」


二人の声が重なった。


リセラとライセラは互いを見つめる。


それぞれレンの片腕を掴んでいた。


レンは何度か瞬きをする。


「ありがとう……でも、二人とも掴まなくていいからな?」


二人は同時にレンを離した。


ドラカリはまだ疑っていた。


「俺はまだ怪しいと思っている」


ヴォラックが宣言する。


「四票対一票だ。残念だが、規則上、我々は全員、救世主たちの話を聞くことになる」


全員が再び椅子に座った。


ドラカリだけは不満そうな顔をしていたが、最終的には話を聞くことに同意した。


ヴォラックは腕を組む。


「よし。では、何を求めているのか話してくれ。我々が助けるかどうかを決めよう」


ゴロは両手を上げた。


「そんな目で俺を見るなよ。ここではそれがルールなんだ。俺たちはそれに従うだけだ」


ガリックがため息を吐いた。


「分かった……。俺たちは仲間を探すために助けが必要なんだ。俺たちの仲間である魔術師を」


レンが続ける。


「名前は……ミレリヤ」


ゴロが説明する。


「彼女は獅子のギルドに所属する優秀な冒険者二人に誘拐された。だが、俺はあいつらが傭兵でもあるんじゃないかと疑っている……あるいは、それに近い何かだ」


ミコネコは首を傾げた。


「誘拐された魔術師? どこの国の子なの?」


ガリックは冷や汗をかき始めた。


「ア、アルテリオン……王国だ」


広間が静まり返った。


重い沈黙。


するとドラカリが机を叩きながら笑い始めた。


「ハハハハハ! 聞いたか!? あの血塗られた国から人間を助けろだと!? なんて悪い冗談だ!」


レンはすぐに言い返した。


「でも、ミレリヤはそんな人じゃない! 俺はあの国のことも、そこで権力を握っている奴らのことも知らない。でも、ミレリヤは一人一人を大切にしてる。あいつは優しいんだ」


ライセラとリセラは、レンをじっと見つめた。


ミコネコは二人の反応に気づく。


ふーん……この子、二人のことにも気づいてるのかな? ちょっと遊んでみようかな……へへ


彼女は立ち上がり、両手を上げる。


「私は、この女の子を探すことに賛成!」


全員が目を見開いた。


ヴォラックも驚く。


「ほ、本当にもう投票するのか?」


ミコネコは微笑んだ。


「この人間の目には、嘘がないもの」


ゴロも手を上げる。


「俺も助けることにした。魔法のポータルを使える。彼女のハンカチもあるから、魔力による追跡の助けになるだろう」


ヴォラックはゴロを見る。


「お前……本当にポータルを起動して、こいつらをそこまで送りたいのか? それで、どうやって戻ってくる? あそこには何百人もの強力な兵士や魔術師がいるんだぞ!」


ドラカリが立ち上がる。


「俺はポータルを使うことに賛成だ。あの血塗られた国の連中に殺されればいい。ハハッ」


ミコネコは腕を組む。


「この人たちは死なないわ!」


ドラカリは笑った。


「そうか? なら、とっとと送り出そうじゃないか!」


フェンルはヴォラックを見る。


「ヴォラック、お前はどう思う?」


ヴォラックは数秒間考え込んだ。


「もし本当にこいつらが救世主なら……生きて戻ってくるだろう。俺はそう思う」


フェンルは頷いた。


「よし。もし生きてここへ戻ってきたら、その時は違う扱いをしてやろう。正式に救世主として迎える。それまでは……本当にその称号に値するか、自分たちで証明してもらう。俺も送ることに賛成だ」


ヴォラックも頷いた。


「四票対一票だ。決まりだな。彼らを送り出そう」


ガリックは頭を下げた。


「ありがとう……本当にありがとう」


ミコネコは微笑んだ。


「そ、そんなに感動しなくてもいいって。もう送るって決めたんだから。へへ」


アルテリオン王国


ミレリヤは片目を腫らし、服を汚し、髪も完全に乱れた状態で歩いていた。


両腕には鉄の鎖が繋がれており、その鎖をダルガンが握っている。


ミレリヤは苦しそうに息をしながら呟いた。


「お、お前たち……こんなことをして……ただで済むと思うな……はぁ……」


シルヴァラは苛立ったように彼女を見る。


「黙りなさい。もうアルテリオン王の宮殿の前まで来ているのよ」


ダルガンがシルヴァラを見る。


「お前の空間魔法がなかったら、俺たちはあそこで死んでいたかもしれないな、シルヴァラ」


シルヴァラは小さく笑った。


「この魔法を覚えておいてよかったわ。へへ」


ミレリヤは歯を食いしばった。


「私が……ここから出たら……はぁ……絶対に――」


ドォンッ!


シルヴァラがミレリヤの顔面を殴りつけた。


「黙れって言ったでしょう!」


三人はそのまま、宮殿の入口へと続く巨大な階段を上っていく。


ミレリヤは顔を上げ、目の前にそびえ立つ巨大な宮殿を見つめた。


そして――


その顔から、完全に血の気が引いた。


「……そんな……」

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