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第27話 リオレン、ドラヴィオンを仲間にする

リオレンは荒い息を吐きながら、ゴロへ向かって鋭い爪を突きつけていた。


「これじゃあ、いつまで経っても終わらない!」


次の瞬間、リオレンは凄まじい速度で地面を蹴り、ゴロへ向かって一気に踏み込んだ。


そして、その鋭い爪を振り下ろす。


ガキィンッ!


ゴロは二本の短剣を交差させ、リオレンの攻撃を受け止めた。


そこから二人は、目にも止まらぬ速さで激しい攻防を繰り広げ始める。


金属と金属がぶつかり合う音が、戦場全体に響き渡った。


その戦いを見ていたダルガンは、完全に置いていかれていた。


「俺……全然ついていけない。あいつ、ギルドのレオンよりも強いんじゃないか……?」


その横で、シルヴァラが一本の矢を引き絞り、二人の戦いへ向けて弓を構える。


「――増殖!」


次の瞬間。


一本だった矢が、まるで分裂するように数十本へと増えていく。


ヒュンッ! ヒュンッ! ヒュンッ!


五十本もの矢が、一斉にリオレンとゴロへ向かって飛んでいった。


ゴロは目を見開く。


「おい! 俺が戦ってる最中に、俺まで狙ってるのか!?」


しかしリオレンは、飛来する矢を素早く、正確な動きで次々とかわしていく。


しかも、それだけではない。


矢を避けながらも、ゴロへの攻撃を一切止めようとしなかった。


まるでシルヴァラの攻撃など、彼の戦闘の流れを乱すには足りないと言わんばかりだった。


その頃、ダルガンは地面に座り込み、荒い息を吐いているミレリアに気づいた。


彼は彼女のもとへ駆け寄る。


「おい……まだ魔力は残ってるか?」


ミレリアは大きく息を吸い込んだ。


「もう……限界……。ああ、もう……!」


シルヴァラが彼女の腕を掴む。


「は、早く安全な場所へ行こう!」


「う、うん……」


二人は戦場から離れようとする。


しかし、その時だった。


戦場の向こうから、大きな声が響き渡った。


「おーい!」


全員が声のした方向へ振り向く。


そこには、ライセラを連れたレンがこちらへ向かって走ってきていた。


シルヴァラは目を見開く。


「くそっ……! なんで今なんだよ、デカブツ!」


ダルガンはレンとライセラを一瞥すると、すぐに叫んだ。


「なら、さっさと終わらせるぞ!」


ダルガンは両足を地面へ叩きつける。


「――深淵裂破!」


ドォォォォンッ!!


大地が激しく震えた。


地面に巨大な亀裂が走り、それが一気に周囲へと広がっていく。


「な、なんだ!?」


「きゃああっ!」


「危ない!」


次の瞬間、地面そのものが崩れ落ちた。


巨大な穴が開き、そこにいた全員がバランスを崩して落下していく。


その最中でさえ、リオレンはゴロとの戦いをやめなかった。


「おい! こんな状況でもまだやるのか!?」


「黙れ!」


リオレンが再び爪を振るう。


ゴロは辛うじて身をかわしたが、リオレンの爪が頬を掠め、浅い傷を刻んだ。


「チッ!」


その瞬間だった。


ライセラが突然、リオレンのすぐ隣へ現れる。


「――いい加減にしろ!」


ドゴォンッ!


ライセラの拳が、リオレンの顔面を真正面から捉えた。


「ぐはっ!」


リオレンの身体は横へ吹き飛び、そのまま瓦礫の中へ叩きつけられた。


しばらくして、全員がなんとか巨大な穴から這い上がる。


レンは周囲を素早く見回した。


「みんな無事か!? ミレリアは!?」


リセラが答える。


「ミレリアなら、さっき上にいた!」


ライセラは巨大な穴を見下ろす。


「まったく、あいつやりすぎよ! リオレンと戦うためだけに、ここまでやったの!?」


ゴロはしばらくその場に立ったまま、周囲の気配を探っていた。


そして、目を細める。


「……もう、いないな」


レンが振り返る。


「何?」


ギャリックも怪訝そうな顔をする。


「どういうことだ、爺さん?」


ゴロはゆっくりと息を吐いた。


「あの二人を最初に見た時から、ずっと妙な感じがしていた。俺のことを警戒している……いや、それだけじゃない。ミレリアのことも、ずっと気にしていたように見えた」


ギャリックが目を見開く。


「そうなのか? でも、いったい何のために?」


ゴロはゆっくりとうなずいた。


「それを確かめようとしていたんだ。あの吸血鬼さえいなければ……」


レンは歯を食いしばる。


「くそっ!」


そしてライセラへ振り向いた。


「ライセラ、俺を解放してくれ! 助けに行かないと!」


ライセラは不思議そうに瞬きをする。


「え? でもレン……もう解放されてるわよ?」


「……え?」


「契約が果たされたから、魔法が解除されたのよ」


レンは数秒間、黙り込む。


「……ああ。そうだった」


リセラが周囲を見回す。


「ミレリアを連れて逃げたってこと? そういうことなの?」


ギャリックは少し考え込んだ。


「奴らも俺たちと同じ、獅子のギルドの一員だったんだよな? なら、ギルドへ向かったほうがいいんじゃないか?」


ゴロが首を横に振る。


「待て。俺たちの国に伝わる空間魔法なら使える」


レンがゴロを見る。


「空間魔法?」


ゴロは答える。


「ああ。以前にも言ったが、俺たちはお前の力を必要としている。だが……お前はまず、彼女を助けたいんだろう?」


レンはゴロへ一歩近づく。


「当然だ……でも、本当に俺たちを助けられるのか?」


「ドラクサールには、力を貸してくれる者たちがいる」


レンの顔に笑みが浮かぶ。


「それなら話は早い! 行こう!」


ギャリックは考え込む。


「最初からミレリアを狙っていたってことなのか?」


リセラが答える。


「たぶん……でも、まだ何とも言えない。それより、あいつらはいったいミレリアに何の用があるの?」


ギャリックは拳を強く握りしめた。


「そんなことはどうでもいい。とにかく、ミレリアを見つけるぞ。できるだけ早くな!」


ゴロがうなずく。


「なら、行くぞ」


一行は走り始めた。


しかし、数歩進んだところで、レンはライセラがついてきていないことに気づいた。


レンは足を止め、振り返る。


「ライセラ、何してるんだ?」


ライセラは巨大な穴の前に立ったまま、城を見つめていた。


「何って……私、ここに住んでるんだけど?」


レンは一瞬、言葉を失った。


そして、尋ねる。


「お前……一緒に来ないのか?」


ライセラはわずかに目を見開いた。


「え……? ど、どうして?」


レンは肩をすくめる。


「俺からすれば、もうお前も仲間だからな」


その言葉を聞いた瞬間、ライセラの顔に自然と笑みが浮かんだ。


レンは彼女へ手を差し出す。


「じゃあ……来るか?」


ライセラは差し出された手を見つめる。


そして、小さくため息をつきながら、嬉しさを隠すように言った。


「それなら、私に付き合う覚悟をしておきなさい。私、たまにすごく面倒くさいし、要求も多いんだから」


レンは差し出した手で彼女の腕を掴むと、そのまま引っ張り始めた。


「はいはい、分かった分かった! ほら、行くぞ! ミレリアを見つけないと!」


二人は先を走る一行を追いかけ始める。


レンは走りながらも、しばらくライセラの腕を掴んだままだった。


「ちょ、ちょっと……レン。もう手を離していいわよ。ちゃんとついていくから……ふふ」


レンは自分が何をしているのかに気づき、慌てて手を離した。


「あっ! 悪い。忘れてた」


そして、表情を真剣なものへ戻す。


「そうだ。全部終わったら……エラリオンへ行くことも含めて、もう一度お前の父親と話すつもりだ」


ライセラはレンを見つめる。


「ええ、話は聞いていたわ。それに……あなたと一緒に出かけるなら、せっかくだし少しくらい世界を見て回るのも悪くないと思ってる」


レンは前を向いたまま、少し興奮した様子で言った。


「それにしても、俺の中にある何かが、この世界の女神とまで張り合えるなんて……めちゃくちゃだよな! でも、あいつはどうやってそれを見抜いたんだ? 俺自身ですら知らなかったのに」


ライセラは少し考え込む。


「そうね……。父さんがあんなに興味を示すところなんて、私も初めて見たわ」


レンが彼女を見る。


「お前も感じただろ? あの時」


ライセラはうなずいた。


「ええ。何か、とてつもない力を感じた。でも……不思議な感覚だった。指先を這うように、痺れにも似た感覚が広がっていったの」


レンは再び前を向く。


「まあ、今は一つずつだ。まずはミレリアを見つけることに集中しよう」


レンたちがその場を去った後。


瓦礫の中から、リオレンがゆっくりと立ち上がった。


荒い息を吐きながら、壁まで歩いていき、そのまま背中を預ける。


「まったく……ライセラ……はぁ……そういうことか……はぁ……」


その時だった。


突然、轟音が響き渡る。


ドォォォンッ!


リオレンの身体が吹き飛ばされ、そのまま巨大な穴の中へ落下した。


「ぐっ!」


リオレンはゆっくりと立ち上がる。


そして、少し離れた場所に二人の兵士が立っていることに気づいた。


リオレンは迷うことなく駆け出した。


一瞬で一人の首筋へ噛みつく。


「ぐあっ!」


兵士は力を失い、その場へ崩れ落ちた。


続いてリオレンは身体を旋回させ、鋭い爪を一閃する。


シュッ!


もう一人の兵士の首が斬り落とされ、その身体が地面へ倒れた。


その時だった。


背後から、怯えた声が響く。


「……吸血鬼?」


リオレンが振り返る。


そこには、分厚い鉄格子の向こうに閉じ込められた一人の男がいた。


リオレンは鉄格子の向こうにいる、鎖に繋がれた悪魔をしばらく見つめた。


そして口を開く。


「お前……ずっとここにいたのか?」


悪魔は顔を上げ、リオレンを見つめる。


「俺はお前を知らない、吸血鬼……いや、もしかしたら……単に覚えていないだけかもしれない」


リオレンは牢へ近づき、男をじっと観察する。


「それは間違いないだろうな。その髪……ライセラとそっくりだ」


その名前を聞いた瞬間、ドラヴィオンはわずかに目を細めた。


ライセラ……?


リオレンは続ける。


「ちょうどお前を探し始めようと思っていたところだ、ドラヴィオン」


「なあ……もし俺がお前に何かしたっていうなら、本当に覚えてないんだ。まあ、見ての通り、この鎖じゃどこにも行けないけどな。俺はもう、自分の刑罰を受けてる身だ」


リオレンはさらに一歩近づき、腕を上げる。


「俺はお前の妹と取引をしていた」


次の瞬間。


リオレンが腕を振り下ろす。


鋭いエネルギーの刃が、ドラヴィオンを拘束していた鎖を一刀両断した。


ガキィンッ!


切断された鎖が、次々と地面へ落ちていく。


ドラヴィオンは警戒しながら、二歩ほど横へ飛び退いた。


そしてリオレンを睨む。


「……なぜ俺を解放した?」


リオレンは腕を下ろし、落ち着いた口調で答える。


「俺の名はリオレン。お前と同盟を組みたい」


ドラヴィオンは数秒間、リオレンをじっと見つめた。


「へえ……同盟ね。それで、ライセラとはどんな取引をしていた?」


「彼女には、ある……『通路』を開く方法を探してもらっていた。それと同時に、この世界が本当はどういう仕組みになっているのかも知りたかった」


ドラヴィオンは再び目を細める。


「通路? どんな通路を開きたい? そして……その先には何がある?」


リオレンは数秒間、黙り込んだ。


そして、口元に薄い笑みを浮かべる。


「もっと、聞いた話じゃあ衝動的な奴だと思っていたんだがな……」


ドラヴィオンは小さく笑った。


「十年も牢獄に閉じ込められていれば、行動する前に色々と考えるようになるさ」


「……それで、お前は何を考えた?」


ドラヴィオンの表情が変わる。


その声は、先ほどまでとは打って変わって真剣だった。


「もし、父親を殺すためにもっと周到な計画を立てていれば……俺は負けなかった。自分の力を過信しすぎたんだ……俺は馬鹿だった」


リオレンはしばらく黙り込み、ドラヴィオンの言葉を分析するように見つめていた。


すると、ドラヴィオンが続ける。


「俺には魔王を倒すための仲間が必要だ。だから、こうしよう。俺がお前の望む『通路』を開くのを手伝う。その代わり……お前は俺が父親を倒すのを手伝え」


リオレンの口元に、わずかな笑みが浮かぶ。


「なるほど……。お前のほうが随分と危険な取引だな。だが……いいだろう。取引成立だ」


ドラヴィオンはうなずいた。


「よし。まずは、その『通路』について詳しく聞かせてもらう。それから父親のことだ。仲間も集めなきゃならない。俺たち二人だけじゃ、勝てる保証はないからな」


リオレンは背を向け、歩き始める。


「なら、ついてこい。俺の隠れ家へ行くぞ。俺には、同じように自由を取り戻した吸血鬼の仲間が何人かいる。時が来たら、そいつらを呼び集める」


ドラヴィオンは去っていくリオレンの背中を見つめた。


そして、ゆっくりと邪悪な笑みを浮かべる。


「これは……素晴らしい友情の始まりになりそうだな。我が友、リオレン」

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