↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の彼女は姉です嫌です助けてください  作者: Melon
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/12

誕生日

 神谷家の居間。

 畳の上に置かれた、木製のちゃぶ台が一つ。

 その上に、大量の料理と、俺の誕生日ケーキが置かれていた。

 そのちゃぶ台の周りに、俺と姉さん、両親が正座で座っていた。

 

 神谷家は子どもが多いため、親戚などはわざわざ参加することは無い。

 そのため、誕生日パーティーは基本的に両親や兄弟、姉妹だけで行われる。

 そして、俺に兄さんや弟、妹はおらず、姉さんしかいないため、四人だけで誕生日を祝うことになった。

 

「「誕生日、おめでとう」」


 両親のお祝いに合わせ、俺はロウソクの火を吹き消した。


「あ、ありがとう」


「英治、おめでとう」


「あ、ありがとう......。えっと......」


縷々(るる)だよ......」


 姉さんが、俺の耳元で偽名を囁いた。


「ありがとう。縷々、さん......?」


「縷々でいいよ。なんてったって、彼女なんだから」


 姉さんは俺のことを抱きしめる。


「あらー、二人とも仲がいいのねぇ」


「英治がいい人と出会ってくれて、お父さん嬉しいぞ」


 両親は姉さんのことを褒める。

 姉さんは、少しだけ顔を赤らめた。


「あ、ごめんなさい。少しお手洗いに......」


「どうぞどうぞ。英治、案内してあげて」


「わ、分かったよ」


 俺と姉さんは立ち上がり、居間を出た。

 トイレに向かうまでの間、特に姉さんと話すことは無かった。

 ボロが出てしまってはマズイからだ。

 姉さんも同じことを思っているのか、一言も発しない。


 長い廊下を歩き、トイレに辿り着くと、姉さんは扉を開ける。


「それじゃ、ちょっと待っててね」


 姉さんはトイレの扉を閉めた。

 俺はトイレから少し離れ、柱に寄っかかりながら待っていた。


「おう、英治」


「あれ? 茂樹(しげき)兄さん?」


 俺に声をかけたのは、従兄弟の茂樹兄さんだった。


「珍しいね。実家に帰ってくるなんて」


「ま、お前を祝ってやろうと思ってな......。それよりもさ、お前の彼女をさっきチラっと見たけど、可愛いじゃねぇか」


「あ、ありがとう......」


「全く、どこであんな可愛らしい女性と出会ったんだ? 雰囲気的に、同級生じゃないよな?」


「ま、まぁね......」


 姉さんとも知らずに褒めたたえる兄さんは、俺の耳元に顔を近づけた。


「......あいつ、音々だろ?」


「......っ!」


 まるで、心臓を握られたかのような苦しさに襲われる。


「や、やだなぁ......。違うって......。似てるだけだよ......」


 呼吸が荒くなりながらも、必死に茂樹兄さんに返事をする。


「俺はあいつと仲が良かった。ずっと一緒に居たから、特徴を覚えてる。あいつは緊張すると、耳付近の髪の毛を左手の中指で、クルクルと何度も巻くんだ。それに、歩き方、手の動かし方。その他色々......。あいつにそっくりだ。それに気が付くと、メイクをしていても似てるなって思ってよ......」


「......茂樹兄さん。そんなにジロジロと見てたんだ」


「誤魔化すなよ。それで、どうなんだ?」


 とにかく否定しなければ、とにかく反論しなければ、俺は必死に考えた。


「......違」


「まぁ、落ち着けよ。バラしたりはしねぇって」


 しかし、茂樹兄さんはそう言って、俺から顔を遠ざける。

 そして、辺りをキョロキョロと見渡した。


 緊迫から解放され、落ち着きを取り戻す。

 無呼吸になっていたのか、少しだけクラクラしている。


「......俺もこの家が、いや、方針が嫌いなんだ。俺の事情を知ってるお前なら、分かるだろ?」


「それって、檸檬(れもん)さんのことだよね......? 結婚直後に家族の病気が悪化して、自宅に帰省してて......」


「そう。俺も檸檬と一緒に住みたいが、仕事の都合でそれは無理。その結果、子孫繁栄に貢献できず、神谷家からは厄介者扱い。......もしかしたら、俺もこの家を追放されるかもしれないな」


「でも、茂樹兄さんは自立しているし、実家にこだわる必要もないから、追放されても別にいいんじゃ......」


「......そうだと、良いんだがな」


「え......?」


 茂樹兄さんが見せた、一瞬だけ曇った表情。

 それが、何を示していたのか、俺には分からなかった。


「ま、大人には事情があるんだ。お前は気にせず、青春を楽しめよ」


 そして、再び俺の耳元に顔を近づける。


「ま、そのためには音々をどうにかしないといけないがな......」


 茂樹兄さんはそう呟きながら、俺のポケットに何かを入れた。


「スマホだ。......俺のおさがりだけど。大切にしろよ」


 茂樹兄さんは手を振りながら、俺の前から去っていった。

 

 

 それから少し待つと、姉さんがトイレから出てきた。

 

「お待たせ英治。それじゃ、戻ろうか」


「お、おう......」


 俺と姉さんは再び長い廊下を歩き、居間へ戻る。


「お、お待たせしましたー」


「あら、お帰りなさい。神谷家って広いから、トイレに行くのも大変だったでしょ? 大丈夫だった?」


「はい! 英治のエスコートのおかげで、特に問題は無かったです!」


「そう。それなら良かったわ」


「それじゃ、みんなで料理を食べようか。ほら、二人とも座りな」


 俺と姉さんは、お父さんに促され、畳に座った。


「それじゃ、いただきまーす」


「「「いただきまーす」」」


 お母さんの合図で、みんながいただきますを言う。

 こうして、俺の俺の誕生日パーティーが始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。