二人でゲーム
姉に無理やり連れて行かれ、辿り着いたのは、古臭い、ボロボロのゲームセンターだった。
「......姉さん。デートに行くとか言っておいて、デートとは縁遠い場所に連れて来られた俺の気持ち、分かる?」
「えっ!? えーっとねぇ......」
姉さんは俺から目を逸らす。
「......せめて、駅前の新しいゲームセンターに......」
「で、でも! ここのゲームは少ないお金で長く遊べるんだよ! 駅前の新しいゲームと違って、とーっても、長く! それに、ここは暗いし、他の人があんまり居ないから、映画館みたいで雰囲気があるし!」
姉さんは熱弁するが、俺にはそこまで響かなかった。
「おや、音々ちゃんじゃないか。いらっしゃい」
カウンターの奥にある部屋から、五十代くらいと思われるおじさんが、姉さんに向かって挨拶した。
「知り合い?」
「うん。ここの店長」
「おや、そっちの子は?」
店長が俺の顔をジーッと見つめる。
「こっちは英治。私の弟だよ」
「ほう......。坊や、君、今何歳だい?」
「え? 一四歳ですけど......」
「そうかい......。英治くん、お姉ちゃんとは、仲良くするんだよ」
「は、はぁ......」
(突然年齢を聞いてきたかと思えば、今度は姉さんと仲良くしろだなんて......)
「いやーしかし......。やっぱり音々ちゃんみたいな若い子が来てくれると、ここも活気が出て良いねぇ。そうだ、いつものアレあげるから、ちょっと待ってな」
店長のおじさんは、再び部屋へと戻っていく。
「いつもの?」
「UFOキャッチャーとかで、景品としてお菓子が置いてあったりするでしょ? そのお菓子を、いつも私にくれるんだ」
「へぇー」
俺と姉さんが話していると、様々な駄菓子を持った店長が部屋から出てくる。
「はいよ」
「ありがとう! 店長!」
「ほら、英治くんも遠慮せずに」
「あ、ありがとうございます......」
俺は店長からお菓子を貰う。
「じゃ、私は仕事に戻るから。じゃあね」
おじさんは手を振り、また部屋へと戻っていった。
「じゃ、二人でゲームでもしよっか!」
「え、でも、あんまりゲームに詳しくないから、何が面白いとか分からないんだけど......」
俺はゲームを遊ぶとしても、基本的には家でしか遊ばない。
だから、ゲームセンターのゲームの知識は、ましてや、古いゲームセンターのゲームなど、ちんぷんかんぷんだ。
「大丈夫! 私が英治でも楽しめそうなやつを選んであげるから! ほら!」
姉さんは俺の肩に手を置く。
俺は駄菓子をポケットに入れ、姉さんに連れられてゲームセンターの奥の方へ向かっていく。
「神谷さん! どうっすか!? 調子は!?」
「ん......?」
急に、背後から馴れ馴れしく名前を呼ばれた。
だが、友人や知り合いの声ではない。
俺は背後を振り返るも、そこには、カウンターの前に立っている男性客だけだった。
「......なぁ、姉さん。もしかして、あの店長......」
「......うん。店長の名前は、神谷武さん。......私たちの親戚だよ」
自分たちの親戚が働いていることに関しては、そんなに驚かなかった。
子孫繁栄をしきたりとしている家だ。
家族や親戚が多くて当然だ。
「......神谷家って、公務員とか銀行員が多い印象だけど、ゲームセンターで働いてる人もいるんだな」
「まぁ、あの人はゲーム好きだからね。......それよりさ、ほら、あのゲーム! 英治も知ってるでしょ?」
姉さんがゲーム機の前の椅子を引いて、座るように促す。
そのゲームは、今も新作が出続けている対戦パズルゲームだった。
落ちてくるブロックを四つ並べて消し、お邪魔ブロックを相手に押し付け、天井まで届いたら負け、というルールだ。
「知ってはいるけど、やったことないぞ?」
「大丈夫だって! 私が手取り足取り教えてあげるから! ま、足は使わないけど。ほら、座って座って」
俺が椅子に座ると、姉さんは隣の椅子に座った。
そして、お互いの肩同士がくっ付くくらい、椅子を寄せてきた。
「姉さん、近くないか?」
「だって、ゲーム画面が見にくいから......。もしかして、意識しちゃってる?」
「そ、そんな訳ないだろ! 実の姉に寄られたって......」
「ショボーン......。ストレートに言われるとガッカリしちゃうなぁ......」
姉さんはガクッ、っと項垂れる。
「いいもん。私は一生男性にモテずに一人で暮らしていくんですよーだ......」
「は、話が飛躍しすぎだって......」
予想以上に落ち込んでいるので、若干可哀想になってきてしまった。
「そ、そうだ! ゲーム! ゲームやろうぜ! 俺が奢ってやるから!」
俺は姉さんを励ますために、二人分のお金をゲーム機に投入する。
「ほら、始まるぞ!」
姉さんの肩をユサユサと揺するが、姉さんは落ち込んだままだ。
ゲーム内の時間がどんどんと進んでいき、このままではゲームが勝手に始まってしまう。
「姉さん!」
何度もユサユサと揺すっていると、姉さんはハッっとして、ゲーム画面を見る。
「え? わっ! わわわっ!」
姉さんは反射的にコントローラーを操作し始める。
そして、圧倒的な速度での操作で、俺を攻める。
「ちょっと待ってくれ!」
姉さんの操作は凄まじく、どんどんと落ちてくるブロックを消していく。
「姉さん! ストップストップ! 俺初心者!」
「あ......」
俺の必死な声掛けで、姉は正気に戻る。
だが、時すでに遅し。
姉さんが押し付けてきたブロックのせいで、俺はもう少しで天井に届きそうだった。
「そうだ、英治に教えるんだった......! 英治、このゲームは縦長のブロックで一気に......」
「いや、もう無理だって!」
ここからまともな勝負ができるはずもなく、俺は惨敗してしまった。
「......ごめん。......そうだ! つ、次は一緒に遊べるゲームをしよっか!」
「お、おう......。このまま対戦しても、勝て無さそうだしな......」
俺と姉さんは立ち上がり、一緒に遊べるゲームを遊ぶことにした。
しかし、姉はどのゲームも上手すぎて、俺の出番は無かった。




