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【完結済】俺の彼女は幻かもしれない  作者: Melon
第10章 白銀の世界で

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迷惑

 なんとか七瀬について行き、学校に着く。

 そして、玄関で靴を脱ぐ。


「ちょっと寒くなってきたな......」


 床の冷たさが、足に伝わる。

 靴下を履いているとはいえ、少しだけひんやりとした冷たさを感じた。


「......どうしたの?」


「いや、床が少しだけ冷たく感じてさ」


「そんな細かいことを気にするのね」


「気にした訳じゃなくて、偶然気になっただけだ」


「そう」


 七瀬は、せっかく履いた上履きを脱ぎ、床に足を付ける。


「......確かに、冷たいわね。夏の頃とは、大違い」


「七瀬?」


「......何でもない。行きましょ。本当に遅刻しちゃうわ」


 七瀬は再び上履きを履き、教室へ向かった。



 教室に入ると、坂月先生が椅子に座っていた。


「おはようございます」


「おはよう......ございます......」


「正道くん、七瀬さん。おはようございます」


 坂月先生はニコニコしながら、俺たちの挨拶を返してくれた。

 そして、七瀬を見つめる。


「......どうしたんですか?」


「最近、七瀬さんが調子良さそうで、先生嬉しいです」


「......別に、変化は無いと思いますけど」


「そうですか? なんだか前と比べて、毎日を楽しそうに過ごしているなって感じがしますけど」


「......そう、ですか」


 七瀬はそこで話を切り上げ、席に座る。


「でも、ちょっとクールなところは変わってませんね」


 クスッと笑いながら、笑顔を見せる坂月先生。


「確かに、前と比べて変わったよな」


「あんたまで何?」


「いや、別に?」


 七瀬が元に戻ってから約四ヶ月。

 戻った直後は拒絶され、かと思えばまた一緒にいるようになり、今は人への当たりが若干優しくなったような気がする。


 それだけじゃない。

 自分の身の回りの物に、興味を持ち始めているような気がする。

 いい意味で、子どもに戻ってきているような、そんな気がした。



 いつものように授業を終え、放課後。

 気が付けば、登校から下校の時まで、七瀬と一緒にいるのが当たり前になっていた。


「なぁ七瀬、今朝の話の続きなんだけど......」


「何?」


「俺が奪ったのは、勉強の時間や人格のことだけじゃないって話......。俺さ、他に七瀬に何か悪いことってしたっけ......?」


「はぁ......」


 七瀬は呆れ、大きなため息を着く。


「ご、ごめん! そ、そんなに失望するほど、悪いことをしちゃったのか......?」


「......ええ、したわよ。あんたはとんでもないことを......」


 こんな態度を見せるということは、忘れられないレベルで多大な迷惑をかけたに違いない。

 しかし、そのことがどうしても記憶に無い。思い出せない。


「あんたのせいで、私の人生計画はめちゃくちゃに狂った。私が努力して積み上げてきた計画を、少しずつ、少しずつ破壊した......」


 俺は七瀬の言葉を聞き、急に全身が冷えた。

 俺は七瀬に、とんでも無いことをしてしまったのかもしれない。


「ご、ごめん......! 俺、七瀬にそんな迷惑を......」


「......謝ることではないわ。迷惑だとは、思っていないから。......多分」


「ど、どういうことだ......?」


 七瀬は俺の疑問を無視し、歩き始める。


「お、おい! どういうことなんだよ!」


「今朝も言ったでしょ? 話はまた今度って。今は話したくないのよ」


「話したくない......。そ、そうか。悪かった」


「......分かればいいのよ」


 話を聞く限り、物凄い迷惑をかけたのに、迷惑だとは思っていないということになる。

 一体、俺は七瀬に何をしてしまったのだろうか。

 

「そういえばあんた、誕生日って十二月の末よね?」


「そうだけど。俺、誕生日について話したことってあったっけ?」


「......毎年、坂月先生があんたのことを祝ってるでしょ? 嫌でも覚えるわよ」


「そ、そうか。でも、誕生日がどうしたんだ?」


「......私のお母さんが、あんたのことを祝うって言ってるのよ。私の誕生日の時、計画して、祝ってくれたでしょ? そのお礼をしたいんだって。......楽しみにしてなさいよ」


「お、おう......! ......ちなみに、七瀬は俺のことを祝ってくれるのか?」


「......あんたの今後次第」


「今後次第......」


 ということは、祝ってくれない可能性もあるということだ。

 まだ祝うか祝わないか、ギリギリの関係ということが、七瀬の言葉から感じ取れる。


 だが、俺の誕生日を覚えてくれていただけでも、俺は嬉しかった。

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