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【完結済】俺の彼女は幻かもしれない  作者: Melon
第9章 現実の始まり

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誘い

 次の日の放課後。


 俺は、七瀬の後を着いていき、七瀬の家へと向かった。




「お邪魔しまーす......」




 俺が挨拶するも、七瀬の母さんはいなかった。




「あれ? 出かけてるのか?」




「今日あんたが来るって伝えたら、買い物に行っちゃった」




「そ、そっか......」




 まだ退院して二週間と少ししか経ってない七瀬を置いて出かけられるということは、それだけ俺の子とを信頼してくれているのかもしれない。




「さ、上がりなさい」




 俺は靴を脱ぎ、階段を上がり、七瀬の部屋へと入った。


 部屋の中は、若干散らかっていた。




 勉強ばかりで、あまり部屋を片付けていないのだろうか。


 七瀬の母さんも、思春期の子どもの部屋に入るのはあまり良くないと思い、あんまり掃除をしていないのだろう。




「さ、片付けてちょうだい」




「は!? 今日はお詫びするからって......」




「好きな女子の部屋を掃除するのは嫌?」




「......分かったよ」




 正直、部屋の掃除ができることは嬉しくなかったが、七瀬が一歩も引かなさそうなので、渋々掃除をすることにした。


 ゴミ箱を片手に持ち、散らばったティッシュを捨てたり、ノートを机の上に置いていく。


 そんな様子を、七瀬は椅子で足を組み、ずっと見ていた。




 と、思っていたが、実際は本に目を通し、こちらのことなど一切見ていなかった。




「ほ、本当に申し訳ないと思ってるのかよ......?」




「思ってるわよ」




「そうは見えないけど......」




「思ってなかったら、あんたの言葉に返事すらしないし、そもそも家に呼ばないわよ」




「た、確かに......」




 俺は納得してしまい、掃除を続けた。


 すると、見覚えがあるチラシが、部屋の隅っこに落ちていることに気が付いた。




「あ、これ......。花火大会の......」




 しわくちゃになったチラシを広げ、チラシを見る。




「花火大会......ねぇ......」




 七瀬が突然、そう呟いた。




「なんだ? 行きたいのか?」




「......別に」




「本当は?」




「......うるさい。黙って」




「......はいはい」




 俺はチラシをゴミ箱に捨てようとした。




「......待って」




「なんだよ」




「そのチラシ、貸して」




「え? 興味無いんじゃないのか?」




「いいから」




 七瀬が何を考えているのか分からないが、俺はチラシを丸め、七瀬に投げた。


 七瀬は上手くキャッチし、チラシを広げて見始めた。




 俺は掃除を再開し、再びゴミを拾い始める。


 その間にチラチラと七瀬のことを見るが、七瀬はずっとチラシを見ている。




「......やっぱ、行きたいんだろ」




「......いいから、掃除して」




 七瀬は強情で、なかなか行きたいと言おうとしない。




「......俺は花火大会行きたいけどなぁ」




「......そう。勝手に行けば?」




 もしかしたら乗ってくれるかもと思ったが、そんなことは無かった。




「......どうしても行きたいんだけどさ、中学生で親と一緒に行くのも少し恥ずかしくてさ......。頼むよ......行きたいんだよ......」




 俺はわざと情けない声で七瀬に懇願する。




「......仕方無いわね。少しだけよ」




 すると、七瀬はそんな俺を見て哀れに思ったのか、誘いに乗ってくれた。




「......ありがとな」




 俺は礼を言い、残りのゴミを片付け始めた。


 その時にチラリと見えた七瀬は、少し嬉しそうだった。





 七瀬の部屋の掃除を終え、ゴミをどこに捨てようか七瀬に聞くことにした。


 しかし、七瀬は勉強を始めてしまっていた。


 俺は七瀬の邪魔をしないように、ゴミ箱からゴミ袋を取り出して結ぶ。


 そして、一旦部屋の入口に置いておくことにした。




 それから、七瀬のベッドを背もたれにし、床に座った。


 七瀬の部屋には漫画などは当然無く、俺はボーっとしていた。




 七瀬はそんな俺を構いもせず、黙々と勉強をしている。


 やることと言えば、七瀬が体調を崩さないか見張ることしかない。


 これでは、俺は遊びに来た客ではなく、七瀬を見張る監視役である。




 しかし、そんな事態を打破するかのように、七瀬の母さんが帰ってきた。




「七瀬の母さんも帰ってきたようだし......。もう俺が居なくても大丈夫だろ?」




 俺は鞄を肩にかけ、家に帰ろうとした。




「......ま.....ぁした」




「え?」




「......何でもない。勉強の邪魔だから早く帰って」




「な、なんだよ......。......それじゃ、帰るからな」




 俺は部屋の扉を開け、七瀬の部屋を出た。


 去り際、七瀬は何て言ったのだろうか。




「ま......した......? ま、ぁした......。また、明日......?」




 七瀬がそんなことをわざわざ言うのだろうか?


 だが、それくらいしか思いつかない。




 本当にそう言ったのか、俺の勘違いなのか、真実は分からない。


 だが、また明日と言ってくれたのなら、とても嬉しいことだ。




 俺は勝手に、また明日、そう言ったと思い込み、七瀬の家を後にした。

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