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【完結済】俺の彼女は幻かもしれない  作者: Melon
第9章 現実の始まり

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変化

 次の日、俺は一人で登校することにした。

 勿論、七瀬と出会わないように、早めに家を出た。


 七瀬と復縁したような状態になったとはいえ、気持ちの切り替えができなかったからだ。


 いつも通りの通学路を歩いていると、遠くに人影が見えた。


「あれ?」


 そこに立っていたのは、腕組みをしている七瀬だった。

 俺は七瀬の元へ駆け寄る。


「七瀬......? なんでこんなところで立ってるんだ......?」


「あんたを待ってたのよ。三十分くらい前から」


「なんでそんなことを......」


「私が倒れたら、誰が面倒見るのよ」


 俺は困惑した。

 少し前まで俺のことを嫌っていたのに、態度が急変したからだ。


「母さんに送り迎えしてもらうのはやめたのか?」


「......いつまでも迷惑かけていられないでしょ」


 俺なら迷惑をかけてもいいのか、と心の中で思ったが、七瀬を刺激しないために言わないでおくことにした。


「不満?」


「い、いや......」


「そう。なら、早く行くわよ」


 七瀬は早歩きで学校に向かって歩き始めた。

 俺もそれに追いつけるように、精一杯歩いた。


(な、何があったんだ......?)


 昨日の時点では、取り合えず一緒に居られるようになって良かった。

 その程度にしか考えていなかったが、本当にどういう心境の変化があったのだろうか。



 学校に着くと、俺と七瀬は着席した。


「......ねぇ、あんたって、一日どのくらい演劇の練習してるのよ」


「え!? どうしたんだ急に......?」


「何? 私が雑談しちゃいけないって言うの?」


「いや、そういう訳じゃ......」


 ここ数年、本来の七瀬が自主的に話しかけてくることは、伝言以外では一切無かった。

 しかも、会話の内容が雑談である。


 だから、俺は大きな声が出るほど驚いてしまった。


「えーっと......。平日は二時間。休日は長くて七時間くらいか......? 声を出す時は迷惑になるから、運動や散歩に行くって言って、外で練習してるぞ」


「ふーん......」


「......ちなみに、七瀬はどうなんだ? 毎日勉強してるだろうけど、何時間くらいなんだ?」


「私は学校での学習時間を除いて、平日は七時間、休日は十四時間よ」


「じゅ、十四!?」


 来年に受験を控えているとはいえ、多すぎる勉強量に、俺は再び驚き、大声を出してしまった。


「そ、そりゃ倒れる訳だ......」


「それほど、私がここから出たいって気持ちが本気だったってことよ」


「本気だった......?」


 本気だったということは、今はそう思っていないのだろうか。


「流石の七瀬も、二回も倒れたら控えるか......」


「......まぁな。......ゴホン。まぁね」


 咳払いをし、言い間違えを誤魔化す七瀬。

 相変わらず、俺の口調が残ってしまっているそうだ。


「でも、ここから出たいという気持ちは変わらないんだな......。じゃあ、あと一年半くらいで、七瀬ともお別れか......」


「そういうことに......。なるわね......」


 若干言葉をつっかえさせながら、返事をする七瀬。


「......なぁ。もしかして、調子が悪いのか?」


「突然何よ」


「......いや、何でもない」


 今日の七瀬は、どこか変だ。

 俺のことを待ち構えるし、返事もキッパリと言い切らない。

 もしかして、七瀬の中にまた、俺の人格が蘇ってきているのではないだろうか。


 そう思っていると、坂月先生が教室に入ってきた。


「おはようございます......!」


 坂月先生は挨拶をすると、教卓に鞄などの持ち物を置いた。


「おはようございます」


「......おはようございます」


 珍しく、七瀬も挨拶をした。

 そんな七瀬を見て、坂月先生はきょとんとしている。


「......七瀬、体調が悪くなったらすぐに言えよ」


 俺は七瀬を心配し、一度会話を終わらせようとした。


「言われなくても分かってるわよ......」


 口では分かってると言ってるが、態度は相変わらず冷たいままだった。


「え......。えええええぇ!!!!」


 坂月先生は突然笑顔になり、七瀬の前に駆け寄る。


「ど、どうしたんですか!? あの七瀬さんが正道くんとお話してるだなんて!」


「......別にいいじゃないですか。私が誰と会話しようと」


「いや、そういう訳じゃなくて......! 七瀬さん、他人のことが嫌いだと思ってたから......」


「......嫌いでしたよ、実際」


「えぇぇ......! 酷い......!」


 坂月先生は苦笑いしながら返事をした。


(嫌い、でした......?)


 本当に、七瀬に何があったんだろうか。

 昨日までは理由を気にしていなかったが、今はかなり気になり始めていた。

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