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【完結済】俺の彼女は幻かもしれない  作者: Melon
第9章 現実の始まり

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復縁?

 次の日、俺は七瀬に遭遇しないようにするために、早めに家を出た。

 夏の日差しに晒されながら、一人で道を歩いていく。


 そんなことは慣れっこなはずなのに、どこか悲しいような、そんな気持ちだった。



 教室に入った俺は着席し、特に何もせずに誰かやってくるのを待っていた。

 いや、何もしていなかった訳ではない。


 七瀬のことを思い続けながら、ただひたすら待っていた。



 ふと、時計を見ると、時刻はいつの間にか八時二十分になっていた。

 そろそろ、坂月先生か七瀬がやってくる頃だろう。


 そう思った途端、教室の扉が開く音が聞こえる。

 やってきたのは、七瀬だった。


 七瀬は早歩きで自分の席に座り、鞄を置いた。

 そんな七瀬の顔は、どこか調子が悪そうな感じがした。


 いや、悪そうな感じではない。

 七瀬のお見舞いに行った時にも見たことがある、体調が悪い時の顔だった。


「お、おい。七瀬、大丈夫か......? 顔色が悪いぞ......?」


「チッ......。関わらないでって言ったの、覚えてない? 私に話しかけないで」


「で、でも! 体調が悪そうだから......。ほ、保健室に連れてってやるから、少し休めよ......」


 俺は七瀬の手を取り、保健室へ連れていこうとした。


「うるさい!」


 しかし、七瀬は俺の手を払いのける。

 それと同時に、七瀬の体からは力が抜け、床に崩れ落ちた。


「おい七瀬......? おい! おい!」


 とにかく保健室に運ばなければ。

 そう思った俺は、七瀬を抱え上げ、保健室へと向かうために教室から出た。


 教室から出ると、坂月先生とぶつかりそうになってしまった。


「きゃ......! って、七瀬さん! ど、どうしたんですか!?」


「七瀬が倒れちゃって......! 急いで保健室へ連れていきます!」


 俺はそう伝え、保健室に急いで向かった。



 保健室の前までやってきた俺は、足で扉を開け、七瀬をベッドに寝かせた。

 七瀬は魘されており、どこか苦しそうだ。


「熱とか出てるのか......? た、体温計は......。って、熱を測るためとはいえ、服を脱がせるのは......」


 俺は体温計を探すのをやめ、七瀬に近寄る。


「七瀬、すまん......!」


 俺は七瀬に謝りながら、おでこに手を当てた。


「熱は......。無さそうだな」


 ということは、勉強のし過ぎによる過労で倒れてしまったのだろうか。

 とりあえず坂月先生にどうするべきか確認するため、保健室を出ようとした。


 しかし、そんな俺を止めるように、七瀬が制服の袖を掴んだ。


「いかないで......くれ......」


 意識が朦朧している中、俺の袖を掴んで離そうとしない七瀬。


「一緒に......」


 俺はどうしようかあたふたしていると、坂月先生がやってきた。


「ごめんね......! 七瀬のお母さんに連絡してたら、遅れちゃって......」


「あ、坂月先生......」


「あら......。......今から七瀬さんのお母さんがすぐに来るらしいから、七瀬さんのこと見ててくれない......? もし、何かあったら校門の前にいるから、呼んでね......?」


 坂月先生は、俺の袖を掴む七瀬の手を見ながら、そう言った。


「わ、分かりました......」


 俺が返事をすると、坂月先生は外に出ていった。


「うぅ......」


 七瀬は苦しそうにしながら、俺の袖を握り続ける。


「一緒に......。居てくれ......」


「い、居るから安心してくれ......」


「行かないで......」


「大丈夫だから......! 離れないからな......!」


 そんなことを言い続ける七瀬を、俺は見守り続けた。



 数分ほど待つと、七瀬の母さんがやってきた。

 俺は七瀬の母さんにお願いされ、七瀬を車まで運び込んだ。


 七瀬の母さんは七瀬のことを心配しながら心配しながら家へと帰っていった。


「正道くん、お疲れ様......。ありがとね、七瀬さんのこと......」


「いえいえ、当然のことをしただけですから......」


「......朝から大変だったけど、授業を始めましょう」


 坂月先生はそう言って、教室へ戻っていった。

 俺も後に続き、教室へと向かった。



 放課後、帰ろうとして学校から出ると、七瀬の母さんの車が停まっていた。


「あれ、どうしたんですか?」


「いやぁ、正道くんに迷惑をかけちゃったから、送っててあげようと思って......」


「ああ......。お気遣いありがとうございます」


「ほら、車に乗って」


 車に乗るよう促された俺は、車に乗った。

 俺が乗ったことを確認した七瀬の母さんは、車を走らせた。



 しばらく経つと、車が停まった。

 しかし、そこは俺の家の前ではなく、七瀬の家の前だった。


「正道くん、どういう心変わりがあったのか分からないけど、七瀬が話したいって言うのよ。だから、お願いだけど、少しお話してあげてくれない?」


「え? 七瀬が......?」


 あんな冷たい態度を取っていた七瀬に何があったのか。

 気になった俺は、七瀬のお見舞いついでに合うことにした。


「鍵開いてるから、先に上がってていいわよ」


「わ、わかりました......」


 俺は車から降り、七瀬の家の扉を開ける。


「お邪魔します......」


 靴を脱ぎ、七瀬の部屋がある二階へと向かう。

 七瀬が話したいと言ってたそうだが、何をどう話せばいいか、分からなくなっていた。


 七瀬の部屋の扉の前に立ち、ドアノブを握る。

 しかし、その手が全く動かない。


「入って。開いてるから」


 扉の向こうから、七瀬の声が聞こえた。


「あ、ああ......」


 俺は反射的に返事をし、扉を開けてしまった。


 七瀬はベッドに座り、スマホを眺めていた。


「そこ座って」


 七瀬はスマホから目を離さずに、机の前の椅子を指差した。

 俺は何も言わず、言われるがままに椅子に座った。


「なぁ、何の用なんだ......?


 俺は七瀬に質問するも、七瀬は一言も発しない。

 ただずーっと、スマホを眺めるだけ。


「七瀬......?」


「喜びなさい」


「喜ぶって、何を......?」


「撤回してあげる。私に関わるなっていうのを......」


 どういう風の吹き回しなのだろうか。

 俺のことを罵倒した七瀬が、そんなことを言うなんて。


「ど、どういうことだよ......」


「気にしなくていいから。喜ばしいことでしょ?」


「それはそうだけど......」


「ということで、これからは別に話しかけてもいいから。分かった? 分かったなら帰って頂戴」


 七瀬はまるで虫を払うかのように、手を払う。


「か、帰れって......」


「ずっと休んでたから、勉強しないといけないの」


「で、でも......! 休んだからって、また無理をして倒れでもしたら......!」


「はぁ......」


 俺は七瀬のことを心配するが、七瀬は呆れて大きなため息を吐いた。


「......だから、撤回するって言ったのよ」


「ど、どういうことだ......?」


「私が倒れそうだったら、正道が止める。それで私は助かる。正道は私と一緒に居れて嬉しい。そういうことよ。分かった? 分かったなら帰って」


「わ、分かった......」


 俺がそう言うと、七瀬は俺に背を向け、机に向かった。

 そして、参考書などを鞄から取り出し、勉強を始めてしまった。


 もう一切話す気が無いということを感じ取った俺は、七瀬の部屋から出ていった。



 理由はどうであれ、俺は七瀬とまた一緒に生活できる。

 そのことが、俺はとても嬉しかった。

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