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俺の彼女は幻かもしれない  作者: Melon
第1・5章 目覚め・現実

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新たなる生活の始まり

 それから、俺は演技力を上げるための練習をしつつ、七瀬にお見舞いに行く日々を過ごした。

 七瀬の体調は回復していき、ついに退院できることになった。



 ある日の下校中、車に乗った七瀬の母さんとすれ違った。


「あ、こんにちは。七瀬のお迎えですか?」


「ええ、そうよ」


「......じゃあ、明日から本格的に始まるんですね」


「......そうね。......私も頑張るから、頼んだわよ。正道くん......。いや、七瀬ちゃん、ね」


「お互い頑張りましょう。......正道のお母さん」


「それじゃ、行くわね」


「はい」


 俺はペコリとお辞儀をし、七瀬の母さんの車を見送った。



 そして、俺と一緒に登下校をすることを条件に、家から学校へ通うこととなった。

 俺と七瀬の制服を入れ替えているので、俺はスカートで登校するのだが、慣れなくて少し恥ずかしい。

 だが、それを我慢して七瀬を迎えに行き、玄関で準備が終えるのを待つ。


 少し待つと、俺の制服を着た七瀬が玄関に来た。


「おはよー。よく眠れた?」


 俺は七瀬に挨拶をする。


「んー、まあまあかな......」


 俺と七瀬が話していると、七瀬の母さんが割り込んできた。


「......七瀬ちゃん。正道のことをよろしくね」


「はい! 任せてください!」


「じゃ、いってくるよ」


 七瀬はそう言い、玄関の扉を閉じた。


「じゃ、行こうか!」


 俺は七瀬の前に手を出す。


「な、なんで手を繋がないといけないんだよ」


「だって、途中で倒れたりしたら危ないでしょ」


「でも、手を繋ぐのは恥ずかしい......」


「いいじゃん! どうせ家から学校まで人なんてほとんどいないんだし!」


 そう言い、手を繋いだ。

 そして、俺が先に進む形で学校に向かうことになった。



 いつもは学校に行くために、使われていない畑や林、数軒の家しか存在しない退屈な道を、時間をかけて一人で歩いていた。

 だが、今日は違う。

 七瀬がいるので、退屈することはなかった。


 今日は霧が発生しており、遠くの景色は見えなかった。

 だが、そんな風景も幻想的で、美しかった。


「霧......。霧かぁ.....」


 無意識に、ボソっと口に言葉を出してしまった。


「ど、どうしたんだ?」


「私たちの人生もさ、霧が発生した今みたいに、先が見えないよね」


「なんだよ突然」


「いや、霧を見てたら、ふと思って......。今は学校っていうはっきりした目標があるから進めるけど、人生でも今日みたいに進んでいけるかなぁって......」


「......でもさ、将来の夢とかはあるだろ? だったら、それを目標にして歩けば進んでいけるんじゃないか?」


 七瀬に、なんかいい感じのことを言われた。


「あー。確かに......。じゃあ安心だね!」


「安心ってわけではないと思うけど......。ちなみに、七瀬の夢って何だ?」


 七瀬は、俺の夢について聞いてきた。


「......笑わない?」


「......内容による」


「......実は私ね。将来演劇の役者になって食っていきたいんだ」


「演劇ねぇ......。大変なんじゃないのか? 演技の練習は勿論、体力を付けたりもしないといけないし......」


「うん......。でも、どうしてもなりたいんだ。演者として有名になって、この地元を人気にしたい」


 少しだけ恥ずかしくなったが、夢を言い切った。


「七瀬、いいやつなんだな。しかも、ちゃんと将来も考えてて......」


「そう?」


「俺なんて、とりあえず勉強してここから出ていくことしか考えてなかったし......」


 だからこそ、中学二年生の今から必死に勉強して、この田舎外の、頭のいい高校に合格し、一人暮らしの許可を貰う。

 それが、七瀬の夢であり、七瀬の倒れた理由。


「ちなみに、演劇の練習ってしてるのか?」


「実はちょっと......」


「へぇ。うまくなったら見せてくれよ」


「うん......!」


 夢について話していると、いつの間にか学校の前までたどり着いていた。


「学校も久しぶりだなぁ......」


 七瀬が学校を眺めながら言う。


「そういえば、俺がいない間お前一人だったんだろ? 寂しくなかったのか?」


 寂しかった。

 片思いしている七瀬と接点が無くて、ずっと寂しかった。


 だが、そんなことを言えるはずがない。


「流石に私のことを不憫に思ったのか、先生がずっといてくれたよ。それに、正道がいた時だって全然話してなかったから、先生がいなかったとしても全く問題なかったと思うよ。多分」


「......言われてみればそうだな」


「でも、いないよりはいた方がいいからね。正道が来てくれて嬉しいよ」


「はは、そう言われると照れるな......」


 照れる七瀬。

 そんな七瀬が、とても可愛かった。


「今までは恥ずかしくて話しかけられなかったけどさ。私たちも仲良くなったわけだし、これからはいっぱいお話しようね!」


 俺は、七瀬とこれからたくさん話をしたいと思い、そう言った。

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