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【23話(4/5)】来たる選択

明石耀一郎(よういちろう)は、美咲を半ば引きずるようにして走る。


「待ちなさい!総員、出口を塞いで!」


背後から課長の声が聞こえる。


(総員!?外に複数の協力者が!?)


頭の中がぐちゃぐちゃになりながら、階段を駆け降りる。

呼吸は乱れ、心臓が早鐘を打つ。


(どういうことだ!?全部課長がやったのか!?)


オフィスにいた明石は、やはり湊の様子が気がかりで、廊下へ出ていた。上階で美咲の泣き声が聞こえ、応接室へ向かった時には、既に血塗られた光景が広がっていた。

しかし、明石がその惨状に言葉を失っていた時——湊の腕は、美咲を引き剥がし、明石の方へと押し出したのだった。


(湊くんはまだ生きている!美咲嬢を頼むと言わんばかりに、確かに動いた!)


正面玄関には、黒い車が停まっていた。


(迎えの車だ!良かった!)


明石のただならぬ様子に気づき、運転手の女性が出てきた。

女性は血塗れの美咲に駆け寄る。


「あぁっ、お嬢様!?」

「美咲嬢は無事です!これは湊くんのです!」


その言葉に、女性は青ざめる。


「早く美咲嬢と逃げて下さい!」

「あなたは——」

「中にまだ湊くんが!追手は複数です、早く!」


女性はぐっと口を結び、頷いた。

泣く美咲を乗せて、車は猛スピードで走り去っていった。


(話の分かる人で良かった……じゃなくて、湊くんを助けに行かないと——)


しかし、明石は振り返ることができなかった。


(ああ、終わった……)


両腕を封じられ、喉元に槍先を突きつけられる。

槍先からは、禍々しいものを感じる。


「残念だわ、明石くん。他の研究員と違って、あなただけは利口だと思っていたのに」

「……自分は、煌都が発展するならば、多少のリスクはやむを得ないと考えています。だから課長が幼木を折った時も、そちら側に着きました。ですが、子どもたちを犠牲にするなんて、到底賛同できません」

「子どもた(・)ち(・)?」

「ええ、そうですよ!湊くんだってまだ子どもです!」


明石の言葉を、彼女は嘲笑った。

「ふーん、子どもを助けるために残ったの?とんだヒーロー気取りね」


喉元に、槍がグッと押し当てられる。


「最後に、もう一度チャンスをあげる。明石くん、忌々しい姉が率いる組織なんて、従いたくないでしょう?私の部下として、職務を全うなさい」

「職務……御使を害することが、職務であると?」

「あなたの職務は、私に従うこと。そうでしょう?」


湊と美咲、それに室長と過ごした日々が、脳裏を掠めていく。


大人に噛みつく狼のようで、実際は犬のように人懐っこい彼。

最初は顔を見るたび泣かれていたが、ようやく名前を呼んで駆け寄ってくれるようになったあの子。

弱い自分を隠すのに必死なのが可愛らしくて、時に見えてしまう素直な部分も愛おしい彼女。


——違う。自分の職務は、誰かの命令に隷従することではない。自分が属する推進研究室の使命は、幼木とその御使の謎を解き明かし、守り育てることだ。


「じゃあ、こういうのはどう?私に協力したら、虫の息の湊くんを助けてあげてもいいわ」


嘘だ。逆らう者を簡単に切り捨ててきた課長が、助ける訳がない。


明石は、槍の冷たさを喉に感じながらも、ゆっくりと振り向いた。

課長の瞳を、じっと見返す。


「自分は、あなたにも姉にも与しません。自分は推進研究室の研究員です。自分が忠誠を誓うのは、推進研究室の室長、ただ一人です」


そう言うと、彼女の冷酷な瞳は、一層鋭く明石を突き刺した。


「あら、そう。それは一番腹が立つ答えかもね」


課長は槍を持ち替え、うなじに石突を勢いよく振り下ろした。


「うっ——」

「忠誠なる私の部下。最期まで役に立ってもらうわよ」

読んで頂きありがとうございます!

至らぬ点があればすみません。

完結まで頑張ります!

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