↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/99

【19話(8/13)】対決・鹿鳴冬雪

鹿鳴冬雪は、湊の相手を警護班に任せた後、自宅に戻っていた。

美咲の様子を見に行こうとしたその時、通信機が鳴る。


「おー、早かったじゃねえか。もう終わったのか?」

通信機の向こうから、ため息混じりの声が聞こえてくる。


『終わった?……ああ、別の意味でな……!』

「はぁ!?まさか負けたとか言わねえよな!?」


神事局との合同会議の後、妻が御使の少女を欲しがるようになった。自分があの子どもを鹿鳴家で預かるべきだと意見したばかりに、妻を本当にその気にさせてしまったようだった。

鹿鳴家で後継者の男児を産む重責。長年に渡る不妊治療。ずっと妻の心身に負担を強いてきたことを思うと、簡単に断ることはできなかった。


御使・猪狩美咲の身辺を調査したところ、兄の成海は叔父の啓三に生家を奪われており、事あるごとに目の敵にされていることはすぐに分かった。


利害の一致。

啓三は成海を疎んでおり、彼から全てを奪おうとしている。

対してこちらは、肉親の成海がいなくなれば、美咲を手に入れやすい。

猪狩家の決闘とかいう狂ったしきたりを利用すれば、成海を排除できる。そう考えた冬雪は、猪狩啓三に共同の奸計を持ちかけたのだった。


「おい、どうしてくれんだよ!?こっちはお前があいつを始末できる前提で動いてんだぞ!」

『はぁ……知るかよ、んなこと……』


啓三との通話はプツリと切れた。

冬雪は手首の通信機を外し、床に叩きつけた。


「あぁっ!クソがっ!」


そこへ、青ざめた妻がふらふらとやってきた。


「明日香(あすか)?」

「あなた、ごめんなさい……!私、とんでもないことをしてしまったわ……!今からでも警察に——」

「はぁ!?お前が言いだしたんだろ!俺らはもう引けないところまで来てんだよ!」


冬雪は縋ってくる明日香を振り払った。


「いいか、これは誘拐じゃない。れっきとした保護だ。神木への信仰心が足りない連中から、御使を守るんだろ!」


そう言い残し、冬雪は自室に向かった。

飾ってあった、豪奢な宝槍を手に取る。


(ったく、どいつもこいつも!俺がやるしかねえ!)


冬雪は自宅を出て、再び祈念室へ向かうのだった。


***


祈念室にて、湊はもう一人の警護班員と対峙していた。


「おいおい、まだ手こずってんのか!天下の警護班さまがどうしたってんだよ!」

苛立った声を上げながら、冬雪が戻ってきた。

手にはきらびやかな宝槍を持っている。


(あいつ、さっきは余裕そうだったのに、どうしたんだ?もしかして、美咲が脱出できたのか?)


冬雪は班員を押し退ける。

「もういい!俺がやる!お前らは退避だ!」

班員は、もう片方のダウンした班員を担ぎ、祈念室を出て行く。


「待て!お前らが誘拐の実行犯だろ!」

湊は班員を追いかけようとしたが、今度は冬雪に阻まれた。


「まずはお前から片付ける。その次にあのクソ兄貴だ」

そう言って、冬雪は湊に宝槍を突きつける。


湊も宝槍を構え、祈りを込めた。

冬雪は湊の眩い宝槍に動じることなく、むしろ鼻で笑う。

「おやおや、とんだ命知らずがいたもんだなぁ。鹿鳴家を相手に宝槍で戦おうなんて!」


冬雪は宝槍を振り下ろす。

それを受けると、手がビリビリと痺れた。


(一振りが重いっ……!)


飛び退いて距離を取ろうとするが、冬雪はお構いなしに間合いを詰め、攻撃を重ねてくる。


訓練校の宝具は安物で、軽い素材に結晶の粉末をコーティングして作られている。しかし、高級な宝具ほど結晶の割合が増え、その分宝具の重さも増える。

祈念の問題ではなく、シンプルに槍としての重量に圧倒されてしまうのだ。


(結晶の輝きは無いから、祈念は得意じゃないのかもしれない。でも、重い槍をぶん回すだけの体力はあるってか……!)


冬雪の攻撃を受けることに集中していると、宝槍への祈念もままならない。


「ほらっ、足元がお留守だぞ!」

「わっ!?」


冬雪の宝槍に足元をすくわれ、湊は尻餅をついた。

立ち上がろうとしたが、喉元に宝槍の切先をぴたりと当てられた。


「勝負あったな。鹿鳴家の宝具は鹿角槍(ろっかくそう)。俺らは宝槍の扱いをこれでもかって叩き込まれるんだよ」

そう言う冬雪は、マスク越しでも分かるくらいにニヤついている。


(こいつ、ムカつく!一発殴ってやらないと気が済まない!なのに、こんな奴に負けて——)


湊は怒りと悔しさを滲ませたが、ふと気づいた。


(いや、待てよ……どうして宝槍での勝負にこだわらないといけないんだ?)


湊は喉元の宝槍を掴み、綱引きのように勢いよく引き寄せた。


「なっ!?」


バランスを崩した冬雪の胸ぐらを掴む。


「宝槍で負けたから何だってんだよ!」


自分の宝槍を投げ捨て、冬雪のマスクを掴んだ。


「そのツラ見せろ!引っ叩いてやる!」

「何しやがるっ!やめろっ!」


激しく揉み合った末に、湊は冬雪のマスクを剥ぎ取った。


「えっ……!?」


湊は怒りを忘れて、呆然と冬雪の顔を見つめた。


冬雪の鼻と唇の間には、ぎょっとするような赤黒いアザが広がっていた。

読んで頂きありがとうございます!

至らぬ点があればすみません。

完結まで頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。