【19話(5/13)】かえりたい
目が覚めると、美咲はあたたかい砂浜に横たわっていた。
さくらが美咲の白いワンピースを触っている。
「美咲、これ、もしかしてかわいいじゃない?」
「さくらちゃん?……うん、かわいい」
「でしょ〜?かわいいなる感情、さくらも分かってきたかも〜!」
美咲は立ち上がり、身体を揺すってワンピースの裾をヒラヒラさせる。
「これねぇ、ふりふり」
「ふりふり!ふりふりって、かわいいなの?」
「うん、かわいい!」
「やっぱり!いいなぁ、さくらもふりふり欲しい!」
さくらがくるりと一回転すると、さくらの服が美咲と同じワンピースに変わった。
「あっ!だめっ、みさきの〜っ!」
美咲はさくらのワンピースを掴んで引っ張る。
「わぁっ、美咲ってば、何するの!?」
「いやーっ!みさきの!」
「大丈夫、模しただけよ!美咲のは取ってないもん!」
「やだぁー!みさきのふりふり〜っ!」
さくらは渋々一回転して元の服に戻った。
「しょうがないなぁ、ほら、戻ったよ!ねっ?」
美咲は涙こそ流れていないものの、顔をくちゃくちゃにして鼻をぐすぐす言わせている。
さくらはそんな美咲を抱きしめ、頭をポンポンと撫でた。
「よーしよし、いい子いい子!子どもって難しいなぁ。でも大丈夫!さくらが導いてあげるからねっ!」
さくらの腕の中で、美咲は自分の置かれた状況を思い出した。
(あっ!みさき、こんなふうにだっこされて、ねんねしちゃったんだ!ねんねしたから、さくらちゃんとおはなししてるんだもん)
幼木のさくらと会える、不思議な砂浜。
美咲が眠っている時、さくらは美咲をここに連れてきてくれるのだ。
美咲の気持ちに反応して、さくらも声を上げる。
「あっ!そうだった!さくらは美咲を導いてあげるために、美咲を呼んだんだった!」
さくらは美咲の手をぎゅっと握る。
「美咲、起きたら早く逃げて!」
「えっ?」
「そこ、なんか嫌な感じがするの!早く逃げてね!」
さくらがどうしてそんなことを言うのか分からないけれど、さくらの不安な気持ちは美咲にも伝わってきた。
「分かった?美咲、早く逃げるのよ!いい?」
***
美咲は、ふかふかの椅子の上で目を覚ました。
相変わらず、重たいマントが肩にのしかかっている。
女の人は、隣で眠っていた。
(そうだ!さくらちゃん、にげてっていってた……!)
女の人が目を覚ます前に、ここを出ないといけない。
美咲はもぞもぞ動いて、マントからすり抜ける。
床にトンと降り立った拍子に、地面に散らばっていた黒い玉飾りが靴に当たり、コロコロと転がっていく。
美咲が戸口へ向かうと、扉がガチャリと開いた。
「わっ……!」
隙間から覗いたのは、照臣の顔だった。
(このおにいちゃん、おにいちゃんのおともだち!)
照臣は宝槍を構えながらそっと室内を確認し、小声で美咲に話しかける。
「美咲ちゃんだな?早くここを出よう」
照臣は、現在地の位置情報を、成海と狩野夫妻に送る。
(文章を打つ暇は無いが、これだけで分かってくれるだろう。今は早くここを出なければ!)
美咲の手を取ろうとした時、照臣は美咲の足元に目が留まった。黒い玉飾りがいくつか散らばっている。
「ん?何だ、それは?」
照臣は何気なく玉飾りを拾った。
その瞬間、こめかみにズキッと痛みが走る。
「っ!?」
ズキズキとした痛みは、目の奥に広がっていく。
「くっ……ううっ、痛いっ……!」
照臣は宝槍を落とし、顔を押さえて座り込んだ。
美咲はおろおろしながら照臣に声をかける。
「おにいちゃん!どしたの!?おにいちゃん!」
美咲の声で、眠っていた女性が目を覚ました。
開いた扉と、知らない青年に寄り添う美咲に気づく。
「ちょっと!あなた誰っ!?出て行ってよ!」
女性は照臣の襟首を掴み、力尽くで部屋の外へ引きずり出そうとする。
照臣は何とか立ち上がり、女性の腕を掴む。
「やめろっ……美咲ちゃんを返せっ」
「離してっ!出て行って!」
女性が照臣を突き飛ばすと、照臣はふらついて、廊下に倒れ込んだ。
そして、そのまま動かなくなった。
「えっ……!?」
女性は息を飲み、横たわった照臣を見つめる。
「……ち、違うっ、私、何もしてないっ……」
服の裾を掴まれ、女性はビクッとして足元を見下ろす。
美咲が縋り付いて、泣いていた。
「うえぇんっ……おにいちゃぁん……おにいちゃぁん」
「違うのっ、私、そんなつもりじゃ……」
「みさき、おうちかえるっ……おうちかえるのっ……」
足元からじわじわと、震えが走ってくる。
「そう……そう、よね……あぁ、私、何ということを……!」
女性はようやく、自分がしたことの重大さに気づいた。
震える手で、そっと美咲の頭を撫でる。
「私、どうしてこんなこと……あの人に言わないと!」
読んで頂きありがとうございます!
至らぬ点があればすみません。
完結まで頑張ります!




