【19話(1/13)】護衛という名の送迎
神木の加護を受ける街・煌都。
訓練校の新入生・湊 陽輝は、神木と意思疎通できる女児・猪狩美咲の身辺警護を任務として請け負う。
美咲と関わるうちに、湊は黒い刃物を持った脱獄囚らの襲撃を受ける。再び来るかもしれない襲撃に備え、槍術の特訓を積んでいるが、幸い美咲に実害が及ぶような事態は起こっていない。
一方、美咲は御使として幼い神木と心を通わせることで、神木や自身の能力に変化をもたらす。
美咲の処遇を決める会議では、本来の御使の血筋である鹿鳴家に美咲を引き入れ、他者と隔離するべきだという意見も出た。しかし美咲は、幼稚園に行きたいという気持ちを会議の場で表明した。最終的に、美咲は鹿鳴家の専属警護班の監視の下、通園を継続できることになったのだった。
ある日の放課後、湊は教官・近衛に呼び出されていた。
「先生、何ですか?俺、幼稚園へ美咲を迎えに行くんですけど」
「それは分かってる。これを渡すだけだ」
封筒には大きな封印が押されてあり、差出人の名前は書かれていない。
湊が封を切ろうとすると、近衛が制する。
「お前の依頼人からだ。誰にも見せるなとのことだから、ここを出た後でこっそり読め」
***
湊が美咲の送り迎えを始めたのは、成り行きの出来事だ。単なる送迎のはずだが、それを正式な護衛任務として依頼したいという人物が現れた。
今の湊は正規の登用訓練生として、その依頼人の命の下、美咲の護衛任務を引き受けている……らしい。
(どんな名目だろうと、美咲の送り迎えをすること自体は変わらない。だから、任務だっていう実感があんまり湧いてないんだよなぁ)
今までは、依頼人からの接触など無かった。
こんな手紙を寄越すということは、何かあったのだろうか?
(近衛先生はお偉いさんって言ってたし、どうせ金持ちのおっさんとかだろ?……そうか、これが昇給の手紙って可能性もある!)
勝手な想像を膨らませながら、湊は誰もいない中庭で封を切った。
中には紙切れ1枚が入っていた。
文章は書いておらず、ど真ん中に数字だけが印刷されている。
(何だこれ……通信機の番号か?)
その場で登録して、名前を確認する。
だが、名前の欄には『手紙は細断して処理を』と書いてあった。
(はいはい、用意がいいことで……)
湊は手紙を細かく千切って、ゴミ箱に捨てた。
(結局、誰なんだよ?)
試しにメッセージを送信してみた。
『こんにちは。あなたは誰ですか?』
しばらく待ったが、既読は付かない。
(……そうだ!美咲!早く戻らないと)
すっかり手紙に気を取られていたが、美咲を迎えに行く前に呼び出されたのだった。
湊はメッセージの画面を閉じ、幼稚園へと走るのであった。
***
メッセージの通知が来たのは、その日の夜だった。
湊は寮のベッドに寝転がり、内容を確認する。
名前は相変わらず『手紙は細断して処理を』のままだ。送られてきたメッセージには、日付だけが書かれていた。
(ええと……これ、2週間後の土曜日か?)
返信を送ってみる。
この調子だと、きっと答えてくれないだろうが。
『この日に何かあるんですか?俺は何をすればいいですか?』
(俺の任務は美咲の護衛だし、これもきっと美咲に関係してるんだろ?とりあえず、この日は美咲と一緒にいた方がいいのかな)
美咲の幼稚園の予定表を、頭の中で思い浮かべる。
確か、この日に幼稚園の行事は無い。研究室へ測定に行った後は、家か公園で過ごすことになるだろう。
湊は既読の付かないメッセージ画面を眺める。
(こいつ、口数が少ない方がミステリアスでカッコいいとか思ってるんじゃないだろうな?普通に意味分かんないし、会ったら絶対文句言ってやる!)
まだ見ぬ依頼人に対して、不満を募らせる湊なのだった。
読んで頂きありがとうございます!
至らぬ点があればすみません。
完結まで頑張ります!




