表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナイトウィザード 二次創作  作者: 西玉
呪いの家
52/62

呪いの終わり

 地下室に倒れていたのは、地裏ムカサと呪香ミツコだけではなかった。四緑カオリが二人の間で横になり、犬神ヤシャは疲れたように座りこんでいた。

「何が起きたのかわかりますか?」

 意識を失った感覚はない。突然精神の世界から放り出されたのだ。夢使いでもある犬神なら、状況がわかるのに違いない。

「裏界が閉じたんだ。裏界も月匣もなく、精神の中にはいられない。カオリさんはどうなった?」

 生徒たちの心配より、犬神はカオリを気遣った。意外でもなかった。ムカサもカオリの様子を見ようとして、自分が消耗していることに気づかされた。

 体を支える腕が振るえ、立ち上がろうとした膝が笑う。ミツコは意識を失っているが、囚われていたのだ。プラーナを奪われているかもしれない。寝かせておいた方がいいだろう。

「カオリさんの中に居た敵は、倒したと思います。カオリさんがどうなったのかまでは、わかりません。ひょっとしたら、カオリさんの意識のなかで、重要な部分を破壊してしまったかもしれない」

「では、カオリさんはどうなる?」

「少し、静かにしてください」

 教師に言う言葉ではない。だが、犬神は黙った。自らが無力だと知っているのだ。ムカサとしても、専門の知識があるわけではない。だが、一時的にでもカオリの精神の入ったのだ。以前より、カオリのことがわかるような気がした。

 横になり、身動き一つしないカオリの体を抱き上げる。

 死体のように力が抜けているものの、息はしていた。心臓は動いている。

 カオリの額に手を当てた。

 ムカサは龍使いである。自らの龍脈を操り、潜在能力を引き出すのを得意とする。肉体を触れさせれば、他人の龍脈に対しても、全く無力というわけではない。

 だが、初めてのことだ。上手く行く自信はなかった。

 自分の力を送り込む。そのように、イメージする。

 ――カオリさん。戻ってきて。

 突然、ムカサの脳裡に大蛇のイメージが広がった。あまりにも巨大で、この世界そのものを飲み込むかのような大きな蛇だった。

 ムカサは顔を上げ、あたりを見回した。

 薄暗い地下室だった。何もない。誰もいない。四人のウィザード以外、誰もいない。

「……地裏くん?」

 下から、声がした。

「カオリさん!」

 呼んだのは犬神だった。ムカサの腕の中で、カオリが薄く目を開けていた。

「良かった。ご無事でしたか」

「無事かどうかは、よくわからないわ。何が起きたの? 私は、何かに操られていたの?」

 ムカサの体につかまり、カオリが半身を起こす。ムカサはそのまま、カオリを床に座らせた。

「カオリさんに罪はありません。すべて、世界結界の歪みが原因です」

 ムカサは立ち上がり、犬神に場所を譲った。まだ眠ったままのミツコを抱き上げる。このまま、寝かせておくわけにもいかないだろう。ミツコはただ眠っているだけだと、根拠なく確信していた。

「地裏、ありがとう」

「いいえ、先生、礼なら、レビュアータに。次にお会いできれば、伝えておきますよ。その時は、また学校が休みになるかもしれませんが」

「まさか……昨日の地震は……」

 これ以上は言うべきではないと思い、ムカサはミツコを抱いたまま部屋を出ようとした。部屋の中で何かが動いた。警戒するのが習慣になっているムカサは、動いた者の正体を知るために振り向いた。

 四緑カオリが立ち上がっていた。

「まだ、無理はしない方がいいと思います」

「私は大丈夫よ。それより、すぐには帰らないでしょう? 上で何か食べていって。すぐに支度するから。ムカサ君には、恥ずかしいところを見られちゃったから、口止めぐらいさせて」

「では、お言葉に甘えます」

 カオリに笑い返し、複雑な表情をしている犬神を残してムカサは階段を上がった。


 呪いの家の噂を聞くことはなくなった。


 失われたウィザードが帰ってくることはなかった。


 第一章 了 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ