思わぬ敵
地裏ムカサが敷地に足を踏み入れた途端、玄関の扉がけたたましい音ともに開かれた。ムカサの体が硬直し、背後から背中に衝撃を受けた。
背中からの衝撃は、呪香ミツコが蹴りつけたのだとわかっていた。
「ムカサ、怯えているの?」
軽蔑するような、反面、面白がるような声で、ミツコが尋ねた。ムカサは背後を向かず、首を横に振った。
「待ち構えているとわかれば、昨日よりずっとやりやすい。倒せばいいとわかっている相手なら、どんな奴でも怖がる必要なんかない」
ムカサは本心を口にした。昨日は半信半疑で訪問したが、今日は違う。
戦いやすい環境にするため、あえて月匣を展開しようとした。
背後から肩を叩かれた。
「その必要はないみたいよ」
ミツコの声と同時に、赤い月が昇った。
裏界が開かれたのだ。
背後のミツコを振り返る。
ミツコは魔剣を取り出していた。
小太刀のような形をした使いやすい剣ではなく、竹ぼうきを模した破壊力のみを追求した箒だった。
「家ごと壊すつもりか?」
「せっかく裏界を開いてくれたのだから、構わないでしょ」
たとえ突然家が破壊されたとしても、周囲の住民がミツコの仕業だとわかることはない。裏界に引き込まれたということは、そういうことだ。ムカサは笑った。ミツコも笑い返した。ムカサに武器はない。鍛えた肉体のみがムカサの武器だ。ムカサは開け放たれたままの玄関に突入した。扉が吹き飛ぶ。ミツコが背後から吹き飛ばしたのだ。
「殺すつもりか!」
「景気づけよ」
まともに狙いが定まらないのは、昨日天井を破壊して下敷きになったことでも明らかだ。ミツコは笑っていた。今の一撃で、ムカサが死んでいても不思議ではないのだ。
――一緒に来る相手を間違えたな。
だが、すでに選択の余地はないのだ。




