式神と侵入者
犬神ヤシャが訪れた部屋は、理解しがたいものであふれていた。
狭い地下室に、ひしめくように並べられた修羅の像、奥に神棚があり、床には五芒星が描かれ、その中心で四緑カオリが横になっていた。
横たわるカオリを、天井から見降ろしていたのは、浮き上がる巨大な顔だった。
地裏ムカサが居合わせたら、その顔が呪いの家にいた女のものだと気づいただろう。犬神は直接顔を合わせていなかった。狼へと変じた間の記憶は、きわめてあいまいになっているのだ。
しかし、カオリを見降ろす顔が、作り物でないことはわかった。恨めしそうにカオリを見降ろし、カオリは目を閉ざして動く様子がない。カオリは巫女のように羽織と袴を身に着け、目を閉ざしてあおむけになっていた。
「カオリさん!」
状況が理解できない犬神は、カオリのもとに駆け付けようと部屋に踏みだした。
行く手を遮ったのは、並べてあった修羅の像だった。いつの間にか、犬神の行く手を阻むように並んでいた。
木製で、子供の背丈ぐらいの像だ。どかそうとした。
足を取られた。
足首をつかまれたかのように、犬神は体勢を崩した。
振り返ると、ただ木の像があるだけだった。
並んでいる像の配置までは記憶していなかった。
再びカオリの方に向き直ったが、どかしたはずの像が、またしても邪魔な位置にある。
木の像が動くはずもない。侵魔なら、犬神が気づくはずだ。
犬神は強引に進もうとした。
またしても、足が取られた。
振り向くと、後ろから押されたような気がした。
犬神は転んだ。
起き上ると、そこは地下室の入口だった。
地下室の中に入ろうとして、結果的に押し出されてしまったのだ。
天井に浮かび上がった顔から、粘液のようにものが落ちる。
「カオリさん!」
横たわるカオリに達した。
「……誰?」
カオリが目を開けると同時に、大量の木像が犬神の居る場所を向いた。




