遅く起きた朝
休校の連絡を受け、呪香ミツコは二度寝するためにベッドに潜り込んだ。
携帯電話を抱いたまま眠りに誘われる。いままで邪険にしていたが、携帯電話は悪魔が動かしているのだと勘違いしたミツコにとって、いまやお気に入りの道具となっていた。
マナーモードにしていた携帯電話が震える。再び眠りに落ちようとしていたミツコは、携帯電話を投げ捨てようとして思いとどまった。
目をこすりながら画面を見つめる。出ようと思っていたわけではない。止めるための操作ボタンを探したのだ。
電話ではなくメールだった。
昨日のメールを思いだしたが、助けを求めるメールではなく、悪魔が宿ってもいなかった。
だが、ミツコの眠気を吹き飛ばすのにはもっとも効果的なメールだった。
魔女の本場プラハで魔術の修行をしているはずの、母からだったのだ。
『今日の運勢……』
ミツコは目を点にした。まるで、テレビの占いコーナーのようなタイトルだった。母は年季の入った魔女である。占いも得意で、日本でのもっとも大きな収入源だった。だが、ミツコの運勢を送ってきたのは初めてだ。
よほど悪いことでも起きるのだろうか。ミツコは不安になり、二度寝するために潜り込んだベッドの上に正座して、ミールを開封した。
『部屋に居てはいけません。必ず悪いことが起きるでしょう』
――学校が休みになったの、誰か連絡したのかしら。
そのためだけに、国際電話をする人間がいるだろうか。ミツコの知っている母は、その時の気分でどんなことでもやる人物だった。ただ、それ以外はとてもミツコを大切にしているのもわかっていた。
「仕方ないわね」
ミツコは大きく伸びをした。
部屋を出ることにしたので、目覚まし時計を一時間後にセットして、まずは当初の目的を果たすことにした。
二度寝するのである。




