再び
学校が休みであることはわかっていたが、地裏ムカサはいつものように輝明学園の制服姿で家を出た。
輝明学園は多くのウィザードが通うことで一部では有名であり、ウィザードに対しては活動に適した仕様の制服が支給されている。
ムカサは家を出ながら、レビュアータの言葉を思いだしていた。
寝巻を着た若い女性の姿をした蛇の魔王は、呪いの家の正体を世界結界の垢だと語った。プラーナを吸収し、力をつければこれから魔王に成長するかもしれないとも。明確な知能は持っていない。ならば、呪いの家で起こる現象は、理論的な説明がつくものではないのだろう。
呪いの家は、ウィザードのプラーナを狙っており、ウィザードを狙うのは、イノセントのプラーナが弱すぎて認識できないのだという。すでに同学年のウィザードが三人消息を絶っており、このままではさらに被害者が増えるだろう。成長して新たな魔王となろうとレビュアータは構わないようだったが、放っておくわけには行かないだろう。
レビュアータは対抗策を教えてくれなかった。
――いや……俺が理解できなかっただけか?
レビュアータは対抗策を語らなかった。だが、教えなかったのだろうか。
――いや……。
大量の血を奪われ、ムカサは足がふらつくのを感じていた。それほどの血を欲する直前に、夢を見ているとはいえ、レビュアータは奇妙な行動をとった。
ムカサの額を指先でつついたのだ。
あの行動には、どんな意味があったのだろうか。
――額……頭……精神……。
人狼である犬神ヤシャが飛び込んできた瞬間、裏界が開き赤い月が登った。だが、二階で呪香ミツコは月匣が出せなかったと言っていた。ムカサは、明らかに追いつめられていたはずなのに、月匣のことを考えもしなかった。
――精神操作か……。
あらゆる能力の中で、もっともやっかいなものの一つだ。
ムカサは考えながら、学校に向かって足を動かしていた。地震の影響で休校なのは承知しているが、常識からもっとも縁遠いのがウィザードである。ムカサのように、ムカサと違う理由で、ウィザードたちが学校にやってきているとしても不思議ではない。一瞬ミツコの顔が思い浮かんだが、すぐに脳裡から消した。同じ体験を共有しながら、共闘できるとは思えなかった。
ムカサは学校に行くつもりだった。
考え事をしていたので、道に迷ったのかもしれない。
どう通ったのか、覚えていなかった。
ムカサの前に、見覚えのある家があった。
呪いの家だった。




