魔王訪問
地裏ムカサは恥じていた。
呪いの家と呼ばれる民家で、確かにムカサは怯えたのだ。自らが罪を犯したかもしれないという恐れと、常軌を逸した女の姿に、恐怖した。
一緒に女を見た呪香ミツコはむしろ、恐れていないかのように見えた。
魔王と契約し、落とし子となったムカサが、魔王の不興を買うこと以外で恐れを抱く。ムカサとしては、決してあるはずのないことだった。
ムカサはいつにもまして強く自らを鞭打ち、全身から汗を吹き出し、背中から血を吹き出そうとも、鞭を打ち続けた。
「申し訳ありません魔王レビュアータ、俺はすべてをあなたに捧げた身でありながら、恐れを抱きました」
全く同じ言葉を、何度となく繰り返していた。
血と汗の臭いが部屋に満ち、唯一の衣服である下着が血の色に染まる。肌を滑り、足を伝い、床に落ちる。
血だまりが床にできてもなお、ムカサはやめなかった。
時間はわからない。
時間の感覚も失われ、次第に意識がもうろうとしてくる。
その時だった。
ごとり、と音が聞こえた。
前方には魔王レビュアータの偶像がある。左手の押入れの中から、重たいものが落ちるような物音が聞こえた。
昼間に異常な事件に遭遇していたムカサは、不自然な物音に、昼間の事件を思い起こした。すぐに振り切る。一体自分がなんのために自らを傷つけたのか、思い起こしたのだ。
ムカサは立ち上がった。恐怖心がなかったとは言えないが、避けることはできなかった。魔王レビュアータの名において、ムカサは物音がした押入れに向かった。
押入れの戸を開ける。
大きな物体が転がり落ち、ムカサの上に乗った。
ムカサは受け止めようとしたが、意識が半ば朦朧としていたこともあり、受け止めきれずにしりもちをついた。
パジャマ姿の、麗しい乙女の姿をしていた。
眠りこけているようで、ぴくりとも動かず、ただムカサに向かって落ちてきた。
居るはずがなかった。
存在するはずがなかった。
だが、ムカサの腕の中に、それはいた。
本来は巨大な蛇の姿をしているといわれる、魔王レビュアータその人だった。




