呪香ミツコの魔剣
呪香ミツコは部屋から出るためにドアノブを掴んだ。ドアノブは回らず、ミツコは自分が閉じ込められたのだと悟った。
「開けなさい!」
鋭い声で発したものの、言うことを聞くとは思えなかった。ミツコはすぐにあきらめ、実力行使を選択した。
月衣に手を差し入れ、魔剣を取り出す。
ミツコは魔女であると同時に魔剣使いである。護身用の小太刀のような実践的な魔剣を普段は使っているが、ミツコが好む本来の武器は別にある。
月衣の中から掴みだしたのは、人間が掃除に使う竹ぼうきと全く同様の形をした、箒だった。
竹ぼうきの形をしていても、先端技術の粋が詰まったウィザードの剣である。ミツコの魔女としての力を利用し、扉ごと吹き飛ばす威力を示すだろう。
ミツコは箒を振りかぶった。
目の前の、意地悪な扉を叩き伏せようと思った。
振り下ろす動作に入る寸前、まるでミツコの行動を防ごうとするかのように、扉から腕が生え、ミツコの体を掴もうとした。
箒を振り下ろす前につかまれると判断したミツコは、振りかぶった姿勢のまま後退した。
突如扉から生えた腕は、6本だった。
――腕が6本……3対……3人……。
それは、行方不明になったウィザードの人数と一致する。
ミツコは箒を振り下ろすのではなく、ゆっくりと脇に下ろした。一歩踏み込み、救いを求めるかのようにうごめき空を掻く、腕の一本を掴んだ。
温かく、しっかりとした手だった。
しっかりと床を踏みしめ、ミツコは掴んだ腕を引き寄せてみた。腕を引っ張ったのである。
少しだけ引き寄せることができた。その分、扉が近づいてくる。扉そのものではなく、扉の中からミツコに向かって腕を伸ばした、その中身が近づいた。
扉の表面に、ミツコと同じくらいの背格好の女子生徒の全身が、うっすらと浮かび上がった。
浮かび上がった顔が動く。口元が動く。
――た……す……け……て……。
ミツコは手を放した。ミツコを掴んだ手は、ミツコを放そうとしなかった。
壁の中に、もう二人、人物の姿が浮かび上がった。
ミツコを掴んだ手は、ミツコを壁に近づけようとしていた。
6本の腕が徐々に扉の中に戻り、浮かび上がった3人の人型はよりはっきりと見えるようになっていた。
ミツコは片腕を取られたまま、下ろした片腕に握った魔剣に意識を集中させた。
魔剣はウィザードの力を利用した技術の結晶である。力強く振るほど威力が高まるというものでもない。
「助けてあげる。ただし、結論までは責任は持てないわよ」
壁の中に、本当に行方不明の三人が囚われているのかどうかはわからない。この家を支配する何者かが、ミツコを惑わそうとしているのかもしれない。三人を助ける方法はあるのかもしれない。三人を、殺してしまうかもしれない。
それでも、ミツコはためらわなかった。
ミツコは、魔剣に集中させた魔女の力を、扉に向かって解放した。




