魔女と悪魔
呪香ミツコは魔女の家系に産れ、魔女として育った。呪術と儀式こそがミツコの世界観であり、近現代社会はうわべだけの作りものだと確信を持っている。
携帯電話は便利だが、通信相手が身内以外にほとんどいないため、ミツコ自信が何のために持っているのか理解していない。
目に見えない世界を真実であると確信するミツコは、不審なメールを送ってきたのが誰なのか、誰によってこの家まで導かれたのか、重要な問題ではなかった。助けを求めている者がいるのなら、助けるのだ。それ以外のことなど、何も考えていなかった。
女に先だって部屋を出たミツコは、送られてきたメールを確認するために携帯電話を取り出した。メッセージの中に、場所や状況のヒントがあるかもしれないと思ったのだ。背後からムカサに呼ばれたような気もしたが、いつもの習慣で無視した。
携帯電話の画面には、一通の新しいメールが届いているとの情報があった。件名も送信者も不明なメールを開くと、『死』の文字で画面上が埋め尽くされた。
性質の悪い冗談かと、ミツコは喫茶店で受信した、助けを求めるメールを開いた。
文字が消えていた。
文字の代わりに、動画のようなものが映し出されていた。
画面いっぱいに、巨大な眼球が映し出されていた。
真っ黒い瞳で、ミツコを凝視した。
ミツコは黙って見つめ返し、携帯電話をしまった。
――この小さな匣に入っているのは機械だと思いこんでいたけど、本当は封印された悪魔でも詰めてあるのかしらね。
「……こちらです」
女に声をかけられた。ミツコは実際の悪魔を見たことがなかった。だが、存在は信じていた。いつか、呼び出してみたいと思っていた。そのため、女の声に反応し、珍しく上機嫌でうなずいていた。




