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ナイトウィザード 二次創作  作者: 西玉
呪いの家
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部屋にいた者

 呪香ミツコに続いて地裏ムカサが女に向き合って座ろうとしたとき、ミツコはムカサが落ち着くまで待たずに話し出した。

「私に助けを求めたかしら?」

 ミツコの質問は、実に単刀直入だった。ムカサは、ミツコが喫茶店『五芒の月』で受け取ったメールの内容を知らなかった。突然のミツコの物言いに、ムカサがたしなめる余裕もなかった。ムカサはただ、自分の精神の落ち着きを待ちながら、女の様子をうかがった。

「……いいえ」

 女は言った。

 ミツコは、助けを求めるメールを受け取ったのだ。だから喫茶店を出てきたし、この女が助けを求めていると感じて、この家に来たのだ。どうしてこの女だと決めつけるのか、ムカサにはわからない。歴代の魔女の家系である。ムカサには理解できない、ミツコなりの解釈があるのかもしれない。

 真実はどうあれ、女は助けを求めたことを否定した。

 ――つまり、この家にいる理由がなくなった。

「ミツコ、帰るぞ。人違いだ」

 肩を掴もうとしたムカサの手を、ミツコは払いのけた。ムカサには視線すら向けない。それが普段のミツコの所作であることを知っているムカサは、いつものミツコの様子にむしろ安堵した。

「私に助けを求めた人がいるの。あなたがそうではないとしたら、この家に監禁されているかもしれない。確認させてもらってもいい?」

「ミツコ、いい加減にしろ。俺たちは警察じゃない。たまたま、家に上げてくれたからといって……」 

「……どうぞ」

 ムカサの言葉を遮るかのように、あるいは全く聞いていなかったかのように、女が言った。ムカサはまるで存在を無視されたかのような扱いに、わずかでも喜んだ自分の心を恥じた。

 迷う様子もなく、ミツコは立ち上がる。ムカサも立とうとした。体が動かなかった。

 金縛りではない。上半身は動くが、ただ足のみが鉛のように重い。

「……案内します」

「ええ。お願い」

 女が立ち上がる。動くことができなくとも、女と二人で残されるわけではないとわかり、少しだけムカサは安心しながら、自分の足に目を落とす。

 子供の顔が、正座をして座った膝の先にあった。青白く、透き通るようなはかなさを持ちながら、見開かれた目はじっとムカサを見つめていた。

 強引に立ち上がれば、自分の膝とちゃぶ台で子供を潰してしまう。ムカサは腕でちゃぶ台を遠ざけようとした。ちゃぶ台のしたから子供を救い出そうとしたのだ。その時、子供の顔だけが見えていたちゃぶ台の下から、短く真っ白な腕が伸びた。

 小さな手が、ムカサの股を掴む。青白い顔が近づく。

「……おい、ミツコ?」

 ムカサは呼びかけた。助けを求めたかったわけではない。少しだけ、時間が欲しかった。

 望むものは与えられなかった。

 部屋の戸が、無情にも閉ざされ、部屋にはムカサと、見ず知らぬ子供だけが残された。


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