招いた者
地裏ムカサは、呪香ミツコに連れられるように門扉をくぐり、玄関に向かった。
「ミツコ、あれがメールをくれた相手か?」
「それはわからないわ。でも、無関係じゃないはずよ」
広い屋敷というわけではなく、玄関まで数歩で辿り着く。二人の会話が聞こえているのかどうかわからないが、玄関から顔を出していた女性は表情を変えずに二人を見つめていた。
「こんにちは」
ミツコの挨拶に対し、女性はゆっくりと会釈を返した。ぎこちない。ムカサはそう思った。
「……どうぞ」
女は玄関の戸を大きく開け、二人を招き入れようとした。整理された洋風の玄関は、居心地の良さを感じさせる。
ミツコが招きに応じようと進み出た。ミツコの肩を、ムカサは掴んだ。
「なに?」
言葉と同様に鋭い視線をムカサに向けながら、ミツコが振り返る。
「要件も告げずに、他人の家に入るのか?」
「……それもそうね」
今のミツコが、どこまで本人の意志で動いているのかわからない。ムカサはミツコが同意したのを受けて、半歩前に進み出た。
気持ちのいい薄暗い玄関と、やる気のなさそうな女が並んで見えた。
「こいつは、招かれたと言っているが」
ムカサが背後のミツコを指でさしながら尋ねる。女は動かず、ただじっとムカサを見返していた。感情の無い死んだ魚のような瞳に見据えられ、ムカサは強い不快感を覚えた。
「……ええ」
しばらくして、女は返した。ムカサが背後のミツコを振り返ると、ミツコは女を、睨み殺しそうな瞳で見つめていた。実際に睨み殺そうとしていたのか、あるいはごく普通の目つきなのかは、この時だけは判別できなかった。いつもは気味の悪いと思っていたミツコの眼が、この時だけはとても好ましく見えた。
「私に助けを求めたでしょ」
「……そうかもしれない」
またしても、しばらく間を開けて、女は答える。女はさらに戸を広く開けた。
「お邪魔します」
ムカサは小さく会釈した。視線は女から外さない。
女の姿はなかった。
視線は外さなかったはずなのに、女は掻き消えていた。
「ミツコ、あの女はどこに行った?」
「彼女のテリトリー内で、そういう言い方はやめた方がいいわよ。下手に刺激しないほうがいいわ」
困惑するムカサを置いて、ミツコは玄関の戸をくぐる。ムカサはあたりを警戒しながら、ミツコを追うように屋敷に入った。




