09 合言葉
シアーズ達は、途方に暮れていた。この島に関しては、あまりにも知識がなさすぎた。どうすればいいのか、もはや自分達の運命すら分からない。
「でも、こんな所でぐずぐずしてても仕様が無いし、何か手がかりを見つけないと。・・・ローランドは、魔喰いの木からの道、と言っていたんだな?それに、聖水はクシュ族も使っていた。魔喰いの木は、クシュ族以外の魔力に反応する。だったら、他にも道はあるはずだ。」
全員、少しの光が見えた。だが、どうすればいいのか。シアーズは、来る途中の岩しかない山を思い出した。洞窟らしき穴がたくさんあった。もしかしたら、そこに通じる場所もあるかもしれない。引き返そう、と言った。
岩山には実際、多くの穴があった。別れて行くにも、数が多い。しかし、別れざるを得ない。
シアーズ達は幾手にも分かれて洞窟へ入って行った。士官によれば、途中でつながっているものもあるらしいのだが、それがどれなのかまでは分からない。洞窟はかなり暗く、地面には骨がたくさん転がっていた。大型動物の骨もある。クシュ族滅亡の戦いの残骸か、と納得した。暫く歩くと、水場に出た。青く濁った水と、鍾乳石が一枚の絵を作っている。水の中にも骨があった。足を取られそうになる。シアーズは、他に一人の自分のクルーと、ローランド卿の従卒であるあの士官を連れていた。どちらも、足元の悪さに閉口していた。
水場のさきには、大きな扉があった。しかし封印の鎖は切れ、扉は開いたままだ。祭壇のようなものまである。だが、ここには今まで以上の骨があった。人の骨のようだ。見慣れた服を着ている。近づいて確かめると、それはスペイン海軍の服だった。一人、海軍大将の服だ。しかし、五十人分ほどの量だ。地面は岩だらけなのに、不自然に砂のある場所もあった。士官がぼそぼそと喋り始めた。ここが、あの制海の宝玉を納めていた扉、アゼルの扉なのだという。聞いたことがある。小さい頃、士官学校の休暇で帰っていたウィルが突然いなくなった。暫くしてエドモンド・ローランド卿と帰って来たのだが、左目の呪いが解けていた。ここだったのか。なら、これはフェルディナント・カニバーリェス卿の父か。
シアーズは扉に入って行った。背後から戸惑いが感じられたが、あとの二人も黙ってついて来た。進んでも、暗い。道は大きく曲がりくねっていて、天井は低かった。背の高い祭壇があった。半球のへこみがあった。おそらく、ここに制海の宝玉が祀られていたのだろう。先程の場所で、エドモンド・ローランド卿にマリアネは破壊されたらしいが、破片らしきものは無かった。土に返ったんだろうか。
その時、背後に人の気配を感じた。
「誰だっ!」
「あ、キャプテン。」
一気に気が抜けた。他の道から行った奴らが、同じ場所へ出たらしい。ここに来る前に既に合流したのか、結構な人数がいた。もしかしたら、全員いるんじゃないか?
「何だ、お前らか・・・。」
シアーズは、たいして気にしない様子で、再び祭壇に目を向けた。ふと、へこみに字が彫ってあるのに気付いた。
「ionramhil forraige jewel・・・?」
ぐらっ、と地面が揺れた。バランスを崩して倒れた。
「痛っ・・・何だ?」
顔を上げると、祭壇の横の岩壁に、先程までは無かった扉があった。鉄で出来ていて、封印の鎖こそないが、アゼルの扉と似ていて頑丈そうだ。今のが、合言葉になったのか。これが、魔術。ほとんど空っぽに近い頭で、必死に考えようとした。行くしかないだろう。どこに通じるのかは分からないが、立ち止まる理由もない。
扉は見た目よりは軽かった。簡単に開く。シアーズ達は進んでいった。これも魔術の力なのか、進むごとに、壁にかけられている木の束に炎が宿り、道を照らした。ありがたいが、不気味だった。




