第9話 元魔王、クロエの実力
【サリア視点】
「ミスっちゃった……てへぺろ」
私は今とても反省している。……いや、言葉ではそんな感じがしないかもだけど、心の中ではどちゃくそ反省してるからね!?
そんな私に対して、ジト目をしながらクロエは言った。
「やっぱ、ついてくべきだった」
「ま、まぁ、領主がバカなせいで大丈夫だし結果オーライ? って感じ」
私がそう言うと領主が顔を真っ赤にしながら怒った。
「私のどこがバカだというのですか。こんな完璧でモテモテな男私以外にいませんよ」
「いや、怒りだす沸点低すぎだし、モテる男なら自分をそんな自画自賛しないでしょ……それに考えがアホすぎる」
私は呆れてしまった。まさかここまでバカだとは……まぁ、それに助けられたからある意味感謝でもあるんだけど、
私は改めて状況をまとめた。
客観的に見れば、悪徳領主がか弱くて可愛くて可憐なエルフの美少女を捕まえて、それに立ち向かう勇敢な黒髪清楚の美少女って感じだ。……美少女の部分は自画自賛じゃなくて事実だからね、じ・じ・つ。
まぁ、そこは一旦置いといて、実際にやばいのは私よりも悪徳領主なんだけどね。
クロエの正体が分かっている私だけはこの状況を正しく判断してる自信がある。
だって彼女は元魔王なんだから。
「さぁ、行きなさい! あの女を確保しろ!」
セルロがそう言うと、2体の人型ロボットがクロエに向かって突っ込んだ。……あ〜あ、なんでそんなバカなことしちゃうのかな。
私は心の中でそう呟いていた。だってクロエから出るオーラを見たら普通やばいって分かるでしょ。
そんなことを考えている間にクロエは、魔法の詠唱を始めていた。
「灰と化せ! 爆獄球!」
その瞬間、2体の人型ロボットは跡形もなく消え去った。
「へ?」
セルロはあまりの出来事に、目を点にして棒立ちになっていた。そうなってしまうのも無理はない。私だって最初は腰を抜かしたからね。
今のはクロエの十八番である『爆獄球』だ。爆炎球の上位魔法で、大体のものなら燃やして灰にすることができる。
《《対人型》》兵器の魔法障壁など、クロエからしてみればただの歩くおもちゃがシャボン玉を纏っているようなものだ。
「ク、クソッ!! なんでだ!? なんでうまくいかない!? このままでは私のハーレム生活が——」
「黙れ、クズ」
クロエは冷たく言い放つと、セルロの方に少しずつ近づいた。
「ひ、ひぃっ!!」
「早く、サリアを解放しろ」
クロエはどんどん近づいてくる。セルロは震えながらもふと何かを思いついたのか、ポケットに手を入れるとナイフを取り出した。そして、それを私の首に当てながら、
「ち、近づくなぁ! さもなくば、こいつの命はないぞ!」
すると、クロエは足を止めた。セルロはそれを見てニヤリと笑うと調子に乗り始めた。
「おい! さっさと土下座しろ! これからはセルロ様の奴隷となりますと言え! そういえばこいつは助けてやる」
私は「あ〜あ、やっちゃった」と思わず呟いてしまった。それを聞いたセルロは顔を真っ赤にしながら、
「お前は今、人質だ! 黙れ!」
私は素直に黙ると、クロエの方を見た。クロエの足元はヒビがはいっていて、相当怒っているが分かる。セルロ君、ご愁傷様です。
私は心の中で合掌した。
「もういい、お前は消す」
そう言ってクロエがセルロに魔法を放とうとしたその時、パンという音ともに
「はい、ストップ!」
突然現れた謎の女性が2人の間に入っていた。
その女性は炎のように真っ赤に染まる髪を結い、両腰には剣を携えていた。
「ここまでの行動見させてもらったよ。さて、事情を聞かせてもらおうか、サリア」
女性は不敵に笑いながら私の方を見た。それに対して私も笑いながら
「やぁ! 久しぶり、アイリス。相変わらず元気そうだね」
と返した。
「お、お前は誰だ!!」
セルロはいきなりの登場に驚きつつも、ナイフを持つ手に力を込めて、警戒を強めながら聞いた。
アイリスと呼ばれた女性はムッとしながら
「私の名前、結構広まってると思うのだが……まぁ、いっか。一度しか言わないからよく聞きなさい!」
彼女は手を腰に当てながら大きな胸を張ると堂々としながら言った。
「私は犯罪を断つことを目的とする少数精鋭の組織——『断罪』の第二席、アイリス・ジャッジメントよ」




