第7話 私と彼女の出会い②
翌朝、目を覚ますと彼女は先に起きていて、何か鍋のようなものでスープを作っていた。
彼女は、私が起きたことに気づくと、にっこりと微笑みながら「飲む?」と聞いて温かいスープをくれた。
私はコクリと頷いて、スープを受け取ると一口飲んだ。
「お、おいしい!」
私は思わず、大きな声を出してしまった。そんな私の反応を見て、彼女は
「よっしゃ!」
と喜んでいた。
私は彼女に救われた。しかし、私は魔族。彼女と仲良くすれば、彼女にまで被害が及ぶかもしれない。だから私は冷たく突き放すように言った。
「昨日は、ありがと。でも、もういい」
すると彼女は、私の顔をじーっと見た後に、ため息をつくと言った。
「どうせ、『魔族である私とこのままいたら、あなたまで危険な目に遭うかもしれない』とか思っているでしょ?」
図星だった。彼女には、なにもかも読まれてしまう気がすると私は思った。彼女は私の様子から当たりだと判断したのか続けて言った。
「言っとくけど、私は種族で人を判断するようなバカな奴らとは違うから」
そう言って私の頭を撫でると、
「探偵にとって大事なのは人は見かけで判断しないこと! だから私は、『魔族』なんて種族の先入観もすべて捨てるようにしているの。だから、私から見た君は、怖い子よりも迷える子羊? みたいな感じなの」
私はまた、泣きそうになった。彼女は私に手を差し出すと
「だから、私はあなたを放っておけない。だから私の助手になって! あっ、助手っていうのは何というか……そう! 私が何かあったときに助けてくれる人! 私、戦闘とか全然強くなくて……あと一人で旅はやっぱり寂しいから。だから私を支えてくれない?」
私はその手を取るか迷った。
本当はすぐにでもその手を取りたい。だって、こんなにも私に優しくしてくれる人なんて、もう会えないかもしれないと思ったから。
けど、私は魔族。一緒にいることがバレたらすぐにでも彼女は殺されてしまう。
「で、でも——」
すると彼女は私の考えていることが分かったのか、私の言葉を遮るようにして言った。
「君って隠蔽魔法使える?」
「え、は、はい」
私が頷くと彼女はニコッと笑いながら言った。
「なら、大丈夫でしょ! それに、もしバレたとしても逃げればいいんだよ。私、逃げることに関しては得意なの。だからどう?」
そういって小さな胸を張ると再び私に手を差し出してきた。
「お、お願い、します」
私の中での迷いはすでに消えていた。私は彼女の手をとった。
「そういえば、自己紹介まだだったね。私の名前はサリア、見ての通りエルフ族だよ!」
そう言ってサリアはニコッと笑った。
「わ、わたひは、き、きゅロエ」
私は自分の名前を言おうとして、思わず噛んでしまった。
……私にとって人生で一番の黒歴史だった。
こうして、私たちの旅は始まった。
◇
それからの日常は全てが以前と違った。
朝起きたら、サリアが温かいご飯を作ってくれる。私は朝に弱いので、いつも迷惑をかけていないか気にしているが、本人は「自分が作りたくて作ってるから」と言っている。
魔王国にいたころは誰も私には味方してくれる人がいなかった。だから、自分で料理を作るか、変装してどこかに行って食べるかだった。
あの頃は何か食べられればいいと思っていて、ほぼ作業のような感じだった。
でも、今は違う。
『クロエ、口の周りが汚れてるよ』
『んっ、拭いて?』
『しょうがないなぁ〜』
『そういえばこの前見た夢なんだけど——』
『サリア、その話前聞いた』
『えっ!? そうだっけ?』
『まったく、サリアはおっちょこちょい』
『ごめんごめん、じゃあさ——』
私はサリアとの今までを思い出した。彼女との食事は決して作業ではなかった。一つ一つが大切な思い出で、誰かと食べることの楽しさに初めて気づいた。
他にも今まで知らなかった『誰かといることの楽しさ』をたくさん教えてくれた。
……だからこそ、彼女に害をなすものが現れた時は必ず排除しなければいけない。そして、もし彼女が死んだ時は私も——
「ふふっ」
私は自分の考えに思わず笑ってしまった。今まで誰かを愛することなんてなかったからか、サリアに対して少し思い感情を向けてしまっている自覚はある。
でも、もう私はサリアのいない生活など考えられないのだ。サリアは私の全てであり、彼女のためにならどんな犠牲を払おうが構わない。ただ、私はサリアと一緒にいられて、願わくば私だけを愛してくれれば良いのだ。
しかしこの気持ちはバレてはいけない。サリアがこんな私を見てしまえば必ず幻滅してしまう。
だからこそ、まずはサリアの気持ちを確かめる必要がある。
「サリアは隠し事、してる」
私が一緒に旅をして思ったのは、サリアは探偵として冒険を続ける理由を隠していることだ。聞こうとしてもいつもはぐらかされてしまう。なぜ隠しているかは知らないが、これはサリアについて知るための重要な情報だと私は思っている。
「サリア♡ 待っててね」
私は彼女のことを考えながら、例の魔道具を探した。
クロエのヤンデレは少しずつ加速していきます。乞うご期待!
次もクロエ視点で話が続きます。




