第4話 襲撃(バカの配下はバカ)
セルロから話を聞いたあと、私たちは町の人たちに聞き込みをしていた。
「うちの野菜、今まですごくよく成長してくれてたのに、3ヶ月前から急に育ちが悪くなって」
「うちも同じ。値段が高いせいで、誰も買ってくれないし、店は潰る寸前にまでなっているわ」
「料理を作るのに野菜は必須だからな。野菜が高くなって、料理の値段も3ヶ月前の2倍ぐらいまで跳ね上がったぞ」
「うちのも」
「おいらのとこも」
どうやら、どこの野菜も3ヶ月前から急に育たなくなったらしい。その時期に何かあったか聞いてみると、変わった商人が領主邸へ入ったのを見たと言う情報が手に入った。
「どうみても、その商人が怪しいわね」
すると、クロエが私の袖を引っ張って、顔を耳に近づけてきた……ち、近い。私はどきまきとしながら、「どうしたの?」と聞くと、小さな声でいった。
「後ろ、つけられてる」
「えっ! ……んむ」
私が叫びそうになったので、クロエが慌てて私の口を塞いだ。手、可愛いな。
「静かに。ついて来て、考えがある」
「分かった」
私はクロエについていった。しばらくすると、人通りのない細い路地裏に入った。
ふと後ろを見れば、がたいのいい大男が2人、後ろに立ち塞がるようにいた。
「なぁ嬢ちゃん、俺たちと遊んでいかないか?」
「お生憎様。私はこの子との先約があるものでね。失礼するわ」
そう言って、クロエの腕に私の腕を絡めると前に進もうとした。
すると、そこにも大男が2人いた。私たちは4人の大男に囲まれてしまったのだ。
「残念だが、あんたらに拒否権はねぇ。うちのボスの依頼でな。あんたらを誘拐させてもらうぜ」
「あら、私たちを狙うなんて、おバカさんもいるものね」
私が挑発すると、男はすぐに
「ああん!? 俺たちに喧嘩売ってんのか!」
と凄みながら
「もういい。お前ら! こいつらを捕まえるぞ」
合図とともに1人の大男がこちらに向かって突っ込んできた。
「氷漬けにしろ、氷葬棺!」
クロエがそう叫ぶと、大男は一瞬で氷漬けにされてしまった。
「な、なんだと! 『鉄拳のナック』がやられただと!」
他の大男たちは、あっさりとやられてしまった『鉄拳のナック』を見て固まっていた。……いや、弱いしネーミングセンスなさすぎ。流石の私も引くわ。
そう考えている私の横で、クロエがボソッと「サリアのネーミングセンスとおんなじくらい」と呟いていたが、無視を決め込むことにした。
「さぁ! これに懲りたら観念して、雇い主を言いなさい!」
私が大声で言うと、大男たちはハッとなり視線を私たちに向けると
「い、いや、今のはそう!……たまたまだ!」
そう言って2人同時に突っ込んできた。
「いや、たまたま魔法が当たって氷漬けになることある? あんたらバカ過ぎやろ」
思わずつっこんでしまった。
「クロエ! やっちゃって!」
私がそう言うとクロエは再び呪文を唱えた。
「氷漬けにしろ、氷葬棺!」
すると2人ともまとめて氷漬けにされてしまった。
「そんなばかな! 『音速のフット』に『頭突きのヘッド』がやられるだと」
「あんたらのネーミングセンス、流石におかし過ぎだろ!」
私はあまりのバカさにため息をついてしまった。
「まぁ、いいわ。これでクロエの実力分かったでしょ! 今度こそ大人しく言いなさい」
私がそう言うと
「いや、三度目の正直だ! 今度こそ」
そう言って最後の1人が突っ込んできた。
「おまえらどんだけバカなんだよ!?」
私はあまりの盗賊のバカさに本日何度目かのツッコミをしてしまった。
「二度あることは三度あるって学校で学ばなかったのか? クロエ、頭以外凍らせて」
「ふふっ、あっ、うん」
クロエもあまりのバカさに笑っていた。しかし、何とか笑いをおさめて本日三度目の呪文を唱えた。
「こ、氷漬けにしろ、氷葬棺!」
すると、またしても盗賊は氷漬けにされてしまった。しかし頭だけは凍らせておらず、盗賊はなんとか意識を保っていた。
「さぁ! 死ぬ前に答えなさい。誰に雇われたの?」
すると、男は小さな声で
「お、おれは『デカ尻のバット』だ」
「いや、聞いてないし、お前だけネタに走り過ぎだろ!?」
思わず吹き出してしまうと、隣のクロエも釣られて吹き出してしまった。
しばらくして、笑いがおさまると
「それで? 本当は殺していないんでしょ」
私がクロエに尋ねるとクロエはうんと頷きながら言った。
「だってサリア、殺しはダメって言ったもん」
そう言ってクロエは指をパチンと鳴らすと氷が解除された。私はクロエの頭を撫でて褒めた。
「こいつらは、後でギルドに引き渡すとして……やっぱり雇い主は吐かなかったか」
私が肩を落として呟くとクロエが
「あれは、無理だった」
と言った。
「どういうこと?」
「だって、雇い主を喋れない魔法、使ってた」
「なるほど」
私は手をポンと打った。
「やっぱりあの悪徳領主。態度はバレバレなのになかなか尻尾は出さないか」
私がしばらく考えているとクロエが言った。
「それより、野菜が育たない原因、調べよ」
「あぁ! 確かに。うっかり忘れてたよ。じゃあ畑を見に行こっか」
そう言ってクロエの手をつなぐと私たちは一緒に畑に向かった。
【セルロ視点】
「なんで、あいつらの連絡が途絶えたんだよ!」
俺は思わず叫んでしまった。
盗賊団に依頼した後、まだかまだかと待っていたが一向に連絡が来る気配がなかった。
「もしかしたら、あいつらやられたのかもしれないな」
その時、俺の嵌めている指輪が赤く光った。
「こ、これは、あいつらの『雇い主をしゃべらせなくさせる魔法』が発動した合図だ! ってことはあいつらは返り討ちにあったのか」
俺はしばらく驚いていたが、やがて落ち着きを取り戻すと
「力づくでダメなら周りから追い詰めるか」
そう言って俺は不敵な笑みを浮かべた。
次回、サリアたちピンチ!




