第3話 薄気味悪い領主(絶対こいつ犯人じゃん!)
私たちは領主様と話し合いをするために領主邸まで来ていた。
「なんか、領主様の家きれいすぎない? それに畑みたいなのもあるし、どう見てもさっきの町の様子とは全然違うんだけど」
「うん。それに何か、嫌な気配、する」
「嫌な気配?」
私が聞くと、クロエは少し考えてから答えた。
「うん。たぶん、魔族が使った魔道具の類」
「魔族の魔道具!?」
魔道具とはモンスターから取れる魔石を動力源として、人々が生活を豊かにする為に作られたものである。
ただし、魔族の作る魔道具は例外であり、モンスターを呼び寄せたり、人を呪ったりなど、災いを起こすものが多く危険なのだ。
「たぶん、そう。早く、なんとかしないと」
「そうだね! あの子達にも約束したしからね。名探偵の本気を見せてあげる」
「美少女エルフ名探偵、じゃなくて?」
「それは、毎回言うの自分でも恥ずかしいと少し思ってるから、言わないで!?」
「サリア、可愛い」
顔を真っ赤にしている私をみてクロエは少しニヤっとしながら言った。まぁ、クロエが笑ってくれるなら、多少の犠牲くらい受け入れようじゃないか。……ちょっと泣きそう
◇
「やぁやぁ、冒険者の皆さん。この度は我がウェスティング領にお越しいただきありがとうございます」
そう言ってニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「私の名前は、セルロ・ウェスティング。この町の領主を務めております。本日はどのようなご用件で」
セルロは脂ぎった両手を擦り合わせて、クロエのことをいやらしい目で見ていた。こいつ、マジでぶっ潰したいけどだめかな?
私は表情は冷静を保ちつつも、心の中ではセルロを何度もぶん殴っていた。しかし、それを表に出すわけにはいかないので、早く終わらせるためにも名前を告げてから、本題に入った。
「本日、私たちがここを訪れたのはこの町の食料問題について聞きたいと思ったからです」
すると、セルロは私たちを値踏みするように目を細めた。まるで、私たちが脅威となるかどうか判断するかのように
「ええ、もちろん。知っていますよ。最近は、なぜか野菜などの育ちが悪くて、苦しむ民が多いですからね。私としても、この問題は由々しき事態だと思っています。民を守るために全力を尽くすのが私の仕事ですからね。ですが、原因がなかなか分からなくて……」
そう言ってセルロは、わざとらしく肩をすくめて見せた。
私はそれを聞いて絶対こいつ犯人じゃん、と思った。さっきリオに聞いた話だと、領主にも助けを求めたが「平民風情が私に口を聞くな」と追い返されたと言っていた。これじゃ、言ってることが全く逆だ。
しかし、そこを追求してもはぐらかされて終わりだろう。私は本音とは全く逆のことを述べた。
「領主様の民を思う気持ちよく分かりました。それと、もう一つ聞きたいことがあるのですが、」
そこで一度区切ると、私はセルロの動揺を見逃さないようにじっと観察しながら、とっておきの爆弾を投下した。
「この辺りに魔族が作った魔道具があるかもしれないと聞いて、この周辺の畑の育ちが悪いのと何か関係があるかもしれないと思ったのですが、何か聞いていませんか?」
すると、セルロは明らかに慌てた様子で
「い、いえ、そ、そのよう物がこの町にあれるとは確認されていまけん。それに、も、もしそのようなものがこの町にあれば、大変なことになります」
しどろもどろに答えた。
こいつ絶対黒だ! 予想が確信に変わった瞬間だった。私はチラリとクロエの方を見る。すると、クロエも頷いていた。こいつが魔族の魔道具を使って畑の成長を悪くしている。
だが、このまま続けても証拠がなければ、私たちの方が逆に捕まってしまうので一度撤退することにした。
「そうですか。お話を聞かせていただきありがとうございました。また、私たちの方でも調査をしてみますので、何かわかったら報告しますね」
「え、ええ、こちらこそよろしくお願いします」
そう言って私たちは領主邸を後にした。
【悪徳領主視点】
「クソッ! 上手く隠し通せてたと思ったのに」
俺の名前はセルロ。この町で領主をやっている。最近、平民たちから食べ物が育たなくて困っているから助けて欲しいという話をよく聞くが、知ったこっちゃない。
「だって、あれを起こしているのは、この俺様なんだから。それなのに!」
そして苛立ちながら、椅子を思いっきり蹴ると
「あのエルフの野郎。あと少しで、平民たちが俺様の前で土下座をしながら靴を舐めて、お気に入りの女がいたら奴隷として可愛がってやる夢が実現できそうだってところなのに!」
そう、先ほどのサリアの発言は、実に的を射ていたのだった。
セルロは3ヶ月前に、ある商人から「この魔道具はとても素晴らしいものです。これを使えばあなたは民を従わせることができます」と言いながら香炉のようなものをおすすめしてきた。それは野菜を枯らせることができるらしく、これで民を苦しませて、領主が町の支配権を握るというものだった。
始めは半信半疑だったが、お試しでお香を数日焚くと近くにあった植物が枯れてしまったのだ。
「おお! これはすごい。しかし、これでは私の庭園の植物も枯れてしまわないか? それは困るのだが」
俺がそう言うと商人は手をポンと叩いて
「そうでしたか! それならば今、ちょうどこのお香が効かない結界を張れるお方がいるのです。そのお方に頼んでこの領主邸に張ってもらいましょうか? 今ならそちらは無料で行いますよ」
「それは良いな! ぜひ頼む」
そう言って、少し高かったけれども魔道具を買い取った。
「最後に注意事項なのですが」
商人は俺を手招きするので近づくと。俺の耳でコソコソと話した。
「あの魔道具の名前は『腐敗香炉』と言って実は魔族の魔道具なのです。しかし、ご安心ください。見つからないように隠蔽魔法が施されているので並のものでは見つけることができません」
「なるほど、それなら心配ないな。これで俺のハーレム生活がついに叶う!」
そして話は今に戻る
「あの商人の言ってたことは嘘なのか? ただの冒険者に一瞬でバレたぞ。とりあえずあいつらは排除する必要があるな……それにしてもあの黒髪の姉ちゃん、胸が大きくてドストライクだったな。」
私はどうすべきか考えていたが、素晴らしい案を思いつき手をポンと打った。
「そうだ! あいつらをうちのお抱えの盗賊団に頼んで捕まえてもらおう」
そう言って笑いながら、トランシーバーのような魔道具を起動させて盗賊団に連絡をした。
「おい、お前ら! 仕事だ。エルフのガキと黒髪の姉ちゃんを捕まえて俺の前まで連れてこい。報酬は弾むぜ」
俺はそう言って通話を切ると、ニマニマと笑いながら
「さぁて、あいつらはどうしようかな。エルフの野郎は奴隷商に売り付けてやろう。たぶん高値で売れるはずだ。……そして黒髪の姉ちゃんは俺様専用の奴隷にして存分に可愛がってやる……グフフッ」
俺様はそう言いながら再びお香を焚き始めた。




