第2話 謎は最高級の料理だとも言う
「あの〜話を聞かせてもらってもいいかな?」
私は今、猛烈に怒っていた。もう何度もお腹は悲鳴をあげており、空腹ランキングトップ10に入るほど、お腹は限界を迎えていた。……1位は無人島生活の時に、三日間も飲まず食わずだった時だ。
あの時は本っ当に死ぬかと思った。三途の川で、亡くなったはずのおばあちゃんと出会ったほどだ。おじいちゃんは、逆におばあちゃんに出会えたのを羨ましそうにしていたけど。
「な、なんで!?」
少年は目を見開いて口を半開きにしながら私を見ていた。ふふっ、ざまぁみろ。
「君! 人の物を盗んじゃだめでしょ!」
「そ、それは、」
少年が何か言おうとしたその時、
「待って! お兄ちゃんを悪く言わないで!」
「そうだ! お兄ちゃんはそんなことしない!」
「嘘つきエルフめ!」
「胸ちっさ」
後ろにいた子供たちが少年を庇うようにして立ち塞がった。……おい! 今「胸ちっさ」って言ったやつ、出てこい!
「いや、それさっき私たちが食べようとしていた食パンだよ。返しなさい!」
「うるせぇ!!」
少年は大声で怒鳴ると、今までの鬱憤を晴らすかのようにいった。
「お前たち大人には分からねぇよ! 親に捨てられて1人で生きていかないといけないこいつらの気持ちが!!」
「はぁ、それと盗みは関係ないでしょ!」
私たちがお互い睨みつけながら言い合っていると
「あ、あの!!」
クロエが私たちの間に割り込み、大声で叫んだ。
「サリア、一旦この子達の話、聞こ? 訳あり、みたいだし」
そして私に、どーどーと言いながら落ち着かせると少年の前でしゃがんで聞いた。
「私の名前はクロエ。何があったか、教えて?」
すると、少年は目に涙を浮かべながら今までのことを話した。
◇
「それで、大人に野菜を分けてくれって頼んだんだけど、誰も相手にしてくれなくて、それで仕方がなく盗みをしてたんだ」
全てを話し終えると少年は子供たちに「今まで騙しててごめんな」と言い謝った。
すると、子供たちは
「リオお兄ちゃんは悪くない!」
「全部大人たちのせいだ!」
「今まで気づけなくてごめん」
「お姉ちゃんたちもお兄ちゃんを許してあげて」
「これからは、俺たちも働くよ」
と少年を庇う子もいれば、大人たちを恨むもの、少年に謝るものなど反応はさまざまだった。私は一旦話を整理しようと子供たちを一度なだめた。
「みんなストーップ! 一旦落ち着いて」
そして、先ほどの少年に話しかけた。
「リオ? だったよね。私もこの町の食べ物の値段の異様な高さには不思議に思っていたんだ」
私は人差し指をビシッとリオに向けると胸を張りながら
「だから、この町の食べ物が育たなくなった謎を私が解決する。……確かに私は、君たちのような生活を経験してこなかった。だから君たちのことを分かった気でいるつもりはない。だけど、今の話を聞いてるだけでも君が苦労したことが伝わってきた。だから、この美少女エルフ名探偵サリアが、君たちのことを助けてあげるわ!」
堂々と宣言すると
「じゃあ早速、謎を解きに行きますか! あっ、そのパンは君たちで分けていいならね。それと」
私は自分のリュックの中から、1つのリンゴを取り出した。
「はいっ、これもみんなで分けてね」
そう言って、リオにリンゴを持たせると私は立ち上がって子供たちに背を向けた。
「じゃあ、楽しみに待っててね! 世の中にはいい大人だっていることを教えてあげる!」
そう言いながら部屋から出ていった。クロエはそれを追いかけるように小走りで部屋を出ていこうとするが、ふと何かを思い出したように立ち止まりリオたちの方を振り返った。
「大丈夫。サリアは、ああ見えて天才」
と言ってから部屋を出た。
【リオ視点】
「あいつらは一体なんだったんだ?」
俺は今、困惑していた。
エルフのガキの声が聞こえてきた時、頭が真っ白になった。子供たちを守らなきゃいけないけど、相手は大人2人だし敵うはずがない。なんとか子供たちだけは守らないと、とエルフのガキと喧嘩しながら必死に考えていると、
「サリア、一旦この子達の話、聞こ? 訳あり、みたいだし」
胸の大きいお姉さんが仲裁に入ってくれて、俺らの事情を聞いてくれた。今までそんなことを聞いてくれる人なんていなかったから、2人につい全部話してしまった。
すると、エルフのガキが急に食べ物の値段が上がってる謎を解くと言ったのだ。「バカだな、こいつ」と思った。今まで誰も原因が分からなかった謎を解くなんて無理だ。
あいつら大人の言うことは信用してはいけないと思う反面、自分もお腹が空いているのに関わらずリンゴを分けてくれて、キラキラと目を輝かせながら謎を解くと言っていた彼女を信じてみたくもなった。
「まぁ、頼むぜ。美少女エルフ名探偵」
俺は小声でボソッとつぶやくと、子供たちに食パンとリンゴを分けた。
これは余談なのだが、子供たちはリオの努力を知って、いつも頑張っているリオに少しでも恩返ししようと食パン1枚を食べるよう言った。リオは始めは渋っていたが、みんなの圧に根負けしてパンを食べたところ、お腹を壊した。
「そういえば、あのパンって片方かびが生えてたような……まぁ大丈夫でしょ」
サリアは走りながら、パンが腐っていることを思い出したが、気にせず走っていった。
◇
サリアたちは町の領主がいるところに向かっていた。
「サリア、お腹大丈夫?」
クロエが、私のさっきまで鳴り続けていたお腹を心配して尋ねてくる。しかし、私は今それどころではなかった。
「全然大丈夫! だって、久しぶりの謎だよ! もう何ヶ月と待ったことか! あぁ! 神よ」
「でも——」
「そんな心配しなさんなって。謎は最高級の料理だとも言うし、もうこの時点でお腹が満たされているよ」
「そんなの聞いたことない。……まぁ、サリアが楽しそうだからいい」
クロエは「はぁ〜」とため息をつきながら、ワクワクしている私の顔を眺めていた。




