第1話 助手は優秀! 探偵はへっぽこ?
「焼き尽くせ! 爆炎球!」
黒髪ロングの少女がそう言うと、巨大な火の玉が少女の目の前に現れ、凄まじい速さで相手を焼き尽くした。
「おぉー! すごいよクロエ!」
そんな様子を見て私、サリアは思わず手を叩いていた。
私はサリア! 靡く銀色の髪に、キラキラと輝く翡翠色の瞳、そして何より長い耳が特徴の美少女エルフ名探偵である。……要素盛り過ぎてて訳がわからんだって?……べ、別にいいじゃん! クロエは「すごい!」って言ってくれたんだから。
私は今、助手のクロエと一緒にゴブリン退治に出かけているの。……全然、探偵関係ないじゃんだって? この世界で、探偵だけで生きていくなんて無理なの!
そんなこんなで自己紹介を終えると、助手のクロエが
「終わったよ。サリア、褒めて」
そう言って私に頭を突き出してくる。
「はいはい、これでいい?」
そう言って2つの角を避けるようにして頭を撫でてあげると、クロエ嬉しそうにして、尻尾をバタバタとさせていた。……尻尾ないけど。
「うんうん♡ クロエ、これ好き。もっとして」
クロエは舌足らずな口調で言った。うんうん、やっぱりかわいい!
「クロエはやっぱり強いな〜」
「当然。だって、元、魔王だから」
クロエはそう言ってボムッと大きな胸を張った。……うらやましい。私はこれから成長するからね、ね!?
助手が元魔王だなんてそんなわけないだろうと、もっとマシな嘘をつけと言いたい気持ちは分かるが、実はマジなのである。
クロエは口数が少なく、あまり表に出たがるタイプではないのだが、2年前に先代の魔王が亡くなり、その娘であったクロエが自動的に跡を継ぐことになった。
だが、他の種族の国を滅ぼしたいという幹部たちの考えと、他の種族と魔族が手を取り合う世界を作りたいというクロエの考えがぶつかり、幹部たちから反感を買うようになった。魔王国全体では人間を恨むものが多く、クロエの意見は少数派であったため、クロエは魔王の立場を狙われることとなった。
そして1年前、ついに魔王幹部全員が協力してクロエを襲撃した。クロエは魔法の才能が高く、魔王としての力は十分に持っていたが、さすがに幹部全員を相手にするのは難しく、慌てて魔王国から離れてエルフの森に逃げ込んだ。
そこで、ちょうど家出をしようとしていた私とばったり出会い、いろいろあって今に至る。いろいろは話せば長くなるので一旦省略。
そんなこんなで今は2人で共に各地を旅してまわっている。クロエは魔族で他の種族からは嫌われているが、今は隠蔽魔法を使って魔族であることを隠していて、私以外には普通の人間として見えている。
「サリア、どうしたの?」
「ううん。なんでもないよ。ちょっとクロエとの出会いを思い出してただけ」
「あれは、運命だった。サリアいないと、クロエ死んでた」
「あはは、大袈裟だよ」
私が笑いながら言うと、サリアは小さな声で
「だって……魔族は他の種族から恐れられてる。でも、サリアは私のこと『可愛い』って言ってくれた。だから私、サリアのこと好き」
と言うので思わず
「はうっ」
胸をときめかせてしまった。だって、こんな美少女から『好き』なんて言われたら、誰だってこうなっちゃうものだよ。
「まぁ、私は探偵だからね! 探偵にとって大事なのは人は見かけで判断しないこと! だから『魔族』なんて種族の先入観もすべて捨てて、1人の人として見ることが大事だっておじいちゃんから教わったから!」
私のおじいちゃんは『てんせいしゃ?』みたいなものだったらしい。私は幼い頃から、おじいちゃんに探偵について聞いていた。私は昔からおじいちゃんっ子で、探偵の話を聞いて憧れていたのだ。だって、「この中に犯人はいる!!」とか「犯人はあなただっ!!」とか言うのかっこよくない?
そんなわけで今はサリア探偵団として活躍している。2人しかいないけどね……。団員募集中!
「サリア、やっぱりすごい。でも、そんなことしたら、変だと思われるよ?」
クロエは心配そうに聞いてきた。こんなにもうるっとした目で見つめられたら、お姉さんなんでも答えちゃうよ!
「平気平気。だって昔から変わってるやつだって言われてたもん」
そう、私は昔から他の子たちとは変わっていた。普通なら女の子が好きな花やお洋服に全く見向きもせず、おじいちゃんと『無人島で1ヶ月、夏の自給自足生活!』や『お宝獲れるまで帰れま◯ん!』などいろんな冒険をしてきた。
父さんや母さんにバレた時は大変だったな〜。一晩中説教されて、私が逃げないように専用の監獄を作って閉じ込められたり。まぁ、脱出したんですけどね。
そんなこんなで私はおじいちゃんといろんな景色を見てきた。その過程で、たくさんのサバイバル術も習得した。今なら、たとえ氷山だろうが無人島だろうがどんと来いだ! あ、でもクロエは連れていかないとクロエ不足で死んじゃう。
「ふふっ、サリア、やっぱり変。だけど、私はそんなサリアが好き」
「もうっ! 好き好き言って何回私を殺すつもり!」
そうやってじゃれあっていると、どこからか「ぐぅ〜〜」という音が聞こえてきた。
「クロエ、お腹空いてるの?」
「それはサリアでしょ」
ジト目で返されてしまった。だってお腹の音って恥ずかしいんだもん。でも、ジト目のクロエもまた良き。もっと見られたい……おっといけない、つい本音が漏れてしまった。
「ご飯を食べに行こっか」
「うん」
私はクロエと一緒に近くの町を目指して歩いた。
◇
「高い!」
私は思わず、そう叫んでしまった。
あの後、お腹の虫をおさめるため、近くの町に行ったのだが、どこの店を見ても料理の値段が相場の2倍以上ある。ぜったいおかしいでしょ!?
今は金欠中で無駄な出費を増やしたくなかったので、リュックから食パンを2枚取り出した。
「クロエ、1枚どうぞ」
「うん」
クロエが頷き私の手に持っている食パンを受け取ろうとしたその時、
「もーらい!」
「「あっ」」
なんと横から小さな少年が出てきて食パンを奪い去ってしまったのだ。
「まったく〜どの町にも悪ガキはいるもんだね。この前だって、クロエの胸揉もうといたやつがいたけど、あれはマジでどうしてしまおうかと思ったわ」
あの時は、クロエがうまく避けて未遂で終わったので頭に特大のたんこぶで許してやった。
「まぁ、しょうがないか。クロエ、私の分を半分こしよっか」
「うん」
そうしてもう片方の手にもっていた食パンを渡そうとした時
「「あっ」」
再び私とクロエの声が重なった。
なんと、もう片方の手に持っていたはずの食パンも消えていたのだ。
「クッソ〜! あいつ2枚とも盗んでいきやがったのか! ただでさえお腹が空いていらいらしてるのに」
私は地団駄を踏みながら、少年逃げた方向を睨みつけていた。
「まぁ、盗まれちゃったものはしょうがないし、大人しくぼったくりの料理屋で食べるか……」
私は「これからどう節約しよう〜」とつぶやきながら先ほどの店に戻ろうとした。するとクロエが私の服の袖をクイッと引っ張って
「さっきのやつ、追いかけないの?」
と言ってきた。
「え〜だってもう遠くまだ逃げただろうし、今から行っても間に合わないよ」
「ううん。さっきの子、すぐ近くにいる。私の魔法で追跡中」
「でかした! クロエ、さっそく行くぞ」
私はクロエの後について行った。
【盗人少年視点】
「よしっ! こいつはいいもんを手に入れた」
俺の名前はリオ、この町の貧しい子供たちを束ねるリーダーだ。何か食料になるものがないか探していた時に、ちょうどエルフのガキと胸のでかいお姉さんを見かけ、「あいつらなら何か持ってるかもしれない」と後をつけていたのだ。
すると、案の定エルフのガキがバッグから食パンを取り出した。
「よっしゃ! これはいいもんが手に入るぞ」
俺は思わずガッツポーズをした。最近、ここら辺で野菜が急に育たなくなり、値段が一気に跳ね上がったのだ。この町にはもともと貧しい人々が多く、物価の上昇で生活はさらに苦しいものとなった。多くの子供達が親から見捨てられ、孤児院にも引き取ってもらえない。
俺はそんな子供たちのためにも、頑張らなきゃいけないんだ。俺はエルフのガキの手に持っている食パンに狙いを定めると2人の視線がそれた瞬間を狙って
「もーらい!」
と言いながら食パンを2枚盗んだ。楽勝! エルフのガキは俺の気配に全く気づいていなかった。ちょろすぎるだろ。……でも、もう1人の姉ちゃんの方は、一瞬目が合った気がするのは気のせいだろうか?
俺は子供たちがいる隠し部屋に入った。すると、
「リオお兄ちゃん! お帰りなさい」
「今日は何かもらえた?」
「わぁ! 手に食パン持ってる!」
「もうお腹ぺこぺこだよ〜」
子供たちが口々に話し始めた。実は、子供たちには盗みのことを隠している。盗みなんて純粋な子供たちに教えるのは気が引けるからだ。だから悪事に手を染めるのは俺だけでいい。
そう思いながら、これから食パンを分けようとしたその時、
「あの〜話を聞かせてもらってもいいかな?」
そこには、さっき食パンを持っていたエルフのガキがいた。
初めまして、伊久理 祥太です。「小説家になろう」には今回が初めての連載となります。
まだまだ執筆は始めたばかりなので至らない点もあると思いますが、温かい目で見守っていただけるとありがたいです。
本作はカクヨムでも重複投稿しています。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
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