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第12話 アイリスの剣

「ふうっー、魔道具解体完了」


 私はなんとか魔道具の解体を終わらせることができた。


「終わったよー!」


 私はアイリスたちに終わったことを伝えた。


 どうやらあっちの方はクロエのサポートもあり、何とか耐えきったようだ。


「よくやった! 後はこっちで任せろ」

「さすが、サリア」


 やっぱクロエから褒められると嬉しいねぇ〜

私がニヤニヤとしていると


「おいっ! お前はいつまでそんな気持ち悪い顔でそこにいるんだ。さっさとこの子を連れて逃げろ」


 アイリスに注意されてしまった。仕方ないじゃん。私の見せ場はここしかないんだから。


 内心で文句を言いつつも、戦闘に巻き込まれても戦える自信がないので素直にクロエと一緒に逃げた。


 アイリスは私たちが逃げたことを確認すると、大きな声で


「みんな避難したな!」


 そう言って周りを確認した後、両腰につけている剣を抜いた。


 彼女の剣は魔力を帯びていて、いわゆる「魔剣」と呼ばれるものである。彼女の剣の場合はその中でも特に変わっていて、剣自身が意思を持つ。


「さぁ! 暴れるぞ『冥府の番犬(ケルベロス)』」

「「ガルルルルッ……バウッ!!」」


 アイリスに反応するように二つの剣が吼え、震え出した。


「おおっ! 今日は調子がいいな。じゃあ、いくぞ!」


 アイリスはそう言って、素早く間合いに入ると、化け物となったセルロの腕を斬った。斬られた部分はまるで、犬に噛みちぎられたかのようにギザギザな形になっていた。


「グワアアアァァァー!」


 化け物はあまりの痛さに雄叫びをあげながら暴れ出した。しかしアイリスは人間離れした動きで全てかわした。


「まだまだ遊び足りないぜ!!」


 そう言って犬歯をぎらりと光らせながら、再び化け物に切り掛かった。


◇


 そんな様子を私とクロエは遠くから眺めていた。


「サリア、あれって人間?」

「ああ、私も最初に見た時は目を疑った。だけど、正真正銘の人間だった」


 私はアイリスの持つ剣を指さすと


「あれがアイリスが『断罪』と呼ばれる組織で二番目に強いとされている理由なんだよ」

「あの剣?」

「そう。『冥府の番犬(ケルベロス)』って言うんだ」

「かっこいい」

「確かに。でも能力はなかなかに恐ろしいよ」


 私はアイリスの戦い方を見ながら言った。


「あの剣には身体能力の極限上昇や斬った部分が犬に噛まれたように痛む『犬噛痕(けんごうこん)』っていうデバフがあるの」

「確かに、見ていて痛そう」

「私は食らったことないから分からないけど、ちょっと掠っただけでも悶えるほど痛いらしいよ」

「それ、強くない?」

「うん。だから長期戦とかになれば相手は動きが鈍くなって逃げることさえできなくなる。まさに、番犬だよ」


 そこまで言い切ると、私は人差し指を立てて「ただし、」と付け加えた。


「あれには、一つだけ弱点があるんだ」

「弱点?」

「うん。剣に意思があるから、相手を切りたくないと思えば使用者に反抗することもある。最悪の場合は使用者自身も斬られて死んでしまう」

「危なくない?」

「そうなの。確かに危険なんだけど、その分得られる能力も大きい」


 クロエはうんうんと頷きながらアイリスと化け物の戦いを見ていた。


「でも、あのアイリスってひとは大丈夫なの?」

「ああ、それはね——」


 私が言葉を続けようとしたその時、


「ひゃっほー! お前ら元気が足りねえぞー!」

「「ワオオオオオオオオォォォン」


 アイリスたちの叫び声が響いた。


「うるさっ!」


 私たちは思わず耳を塞いだ。


「さっきと様子が違わない?」


 クロエがアイリスの様子に驚いている。


「ああ、それだ。アイリスは戦闘狂で、戦いの時は普段の厳格そうな態度を捨ててとにかく派手に暴れるんだ」

「確かに。領主邸破壊してる」

「それなんだよ。どうやら『冥府の番犬(ケルベロス)』がこのノリをすごく気に入ったらしくてね」


 意思を持つ剣は他にもあるが、性格に難があるものが多い。この剣もその一つで、はじめは息の合わない使用者に対して全治2ヶ月の大怪我をさせていた。


 しかし、数年が経ち剣がアイリスに渡ると、彼女の戦闘での暴れっぷりを気に入ったらしく、大人しく言うことを聞くようになったという。

……まぁ、剣の使用者本人が剣よりも暴れ散らかしてるから後処理が大変らしいけど


 かって、大規模な犯罪組織を彼女が1人で壊滅させた時、建物全体が猛獣にでも食い荒らされたかのようになっていたと言われている。これが『正義の番犬《ジャスティス・ハウンド》』といわれる所以だ。


「よしっ! そろそろ弱ってきただろぉ! 最後にド派手にかますぞ!!」

「「ウオオオオオォォォ!」」


 双剣の咆哮と共に地面からいくつもの鎖が現れた。


「拘束の呪鎖(グレイプニル)」


 アイリスが魔法を唱えると鎖が化け物に一気に巻きつき拘束した。


「あれは?」


 クロエは突然現れた鎖にびっくりしながら不思議そうに聞いてきた。


「あれはね、相手を絶対に離さない強力な鎖で拘束するあの剣の使用者のみ使える魔法だ。あの鎖、本当にすごくてね。一度捕まったら出られないよ」


 昔、アイリスと少しだけ一緒に冒険していた時があり、その時におやつをつまみ食いしたのがバレて鎖で拘束されて一日中ほったらかしにされたことがある。……能力の無駄遣いじゃない?


 まぁ、そんなこんなで完全に動けなくなってしまった化け物は、しばらく無駄な抵抗していた。


 しかし、薬の効力が切れてきたのか徐々に小さくなっていき、最終的に全裸の領主に戻った。


「あぁ! ここからなぶりつけるつもりだったのに。つまんねぇやつだな……まぁ、しょうがねえ。終わりだ、終わり!」


 そう言って物騒なことを言い剣をしまうと、元のアイリスに戻った。そして、気絶して手錠で繋がれた全裸の領主を引きずりながら私たちの方まで来た。


「後は、こちらの方で対処しておく。後日、少し話を聞くことになるかもしれんが、その時は頼む」

「いや、切り替え早すぎだろ!」


 私は思わずツッコんでしまった。しかし、アイリスには助けられたので一応感謝しておくことにした。


「まぁ、いいや。サンキュー! アイリス、まさか本当に来てくれると思わなかった」

「いや、いきなり連絡してきて『ごめん。このままじゃ私、領主の奴隷になって可愛がられちゃう』とか言われたら行くだろ!」

「サリア、そんなこと言ったの?」


 アイリスもクロエも怒ったような目で私のこと見た。私は冷や汗をかきながら、必死に言い訳を述べた。


「あ、あれは、アイリスに急いで来てもらおうと思って言った軽い冗談みたいなもので、……」

「はぁ〜、だいたいお前のことをいやらしい目で見るやつなんていないだろうから、冗談だとはすぐ気づいたがな」


 アイリスはため息混じりにつぶやいた。クロエは何故か顔を赤ながら俯いていた。


 クロエの様子が気になったものの、私はそれよりもアイリスの言葉にカチンときて言い返した。


「そもそも! あんた絶対普通に連絡しても来ないでしょ! それに魔族の魔道具が使われた事件なんて大事件なんだから、あなたにいい情報を流してあげたと思って感謝しなさい」


 私はない胸を張って言った後に小声で


「それに、私はナイスバディなんだから」


 と呟いた。


 アイリスは笑いながら私に手を差し出した。


「まぁ、なんやかんやあったが久しぶりだな、サリア」

「確かに。3年ぶりぐらいかな?」


 私は彼女の手をとって握手を交わした。

 これにて『悪徳領主編』は終わりです。まだまだ、ここからが本番なのでこれからも読んでいただけるとありがたいです。


 当初の予定よりもバトル要素が多くなり過ぎた気がしますが許してください。


 次は幕間を挟んだ後に、次の章『迷宮編』に移ります。新しい人物やサリアとクロエのじゃれあいもどんどん出す予定なので楽しみにしてください。


 ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

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